独り言が言いたくて
出かけようと家の前の階段を降りたとき、目の前を通りすぎた男性が
「世の中にこんなに合わない取引先がいるのか、って思うくらい合わないんだよね...」とスマホに向かって語っているのが聞こえた。
スーツにトレンチコートを羽織った男性。白髪混じりの頭。年齢は、私より上だろう。ひょっとしたらひとまわりくらい上かもしれない。
「私よりも社会人経験が豊富であろうあなたがそう思うなら、きっとその取引先とお仕事してもロクなことにはならないでしょうよ」
と私は心の中で言う。
それにしても、その男性が、「嫌な取引先」とか「ダメな取引先」などと言わずに「合わない取引先」と言ったことが印象的だった。
考えてみれば、相手からすると男性の方が「合わない取引先」の人かもしれない、という見方もあるわけだしね。
それに、いい気分にはなれない話をするときに、穏やかな口調で、フェアな言葉選びを出来る人は、素敵な人なんじゃないだろうか、と私は思うのだった。
用事を済ませた帰り道。
緑道を歩いていたら、前に並んで歩く男女がいた。男性の方がふいに女性から離れて、イチョウの葉っぱの上を歩いた。
ざく、かさ、ざく、かさ、と音がする。
「ね、わかったでしょ?」と女性。
男性は黙って微笑む。
「何なに?!このポエティックなシーンは!!ドラマのワンシーンでもよさそうじゃない?」
と心の中で私は言った。
彼らには、ぜひとも、普段どんな小説読むのか、好きな映画やドラマは何なのか、聞いてみたいものですね。
とまあ、私の日常はほぼ、頭の中の独り言で成り立っている。
私って寂しい人なんだろうか。または変わってるの?などと思いながら、家に戻って、昨日の『孤独のグルメ』と『絶メシロード』を観る。
どちらも、大半を主人公の頭の中の独り言で進行していくドラマだ。
いた!ここに独り言族がいた!!
あ、『晩酌の流儀』もそうですね。
でもね、彼らは独り言を聞いてくれる視聴者がいるからいいけど、私はどうしたらいいんだい?
そうだ!noteがあるじゃないか!!
と思って今日は書きました、とさ。
決して、noteさんから「連続投稿記録が途切れちゃうよ?」という通知が来たからじゃあないのです(笑)