それでもやっぱり面白い 『幽麗塔』
心躍る本を見つけた。江戸川乱歩の作品に宮崎駿のイラストとなれば、もう手に取ることしか私には選択肢がないのである。
しかし、なぜこのコラボ?と思い調べてみると、2015年~2016年にかけて、三鷹の森ジブリ美術館で「幽霊塔へようこそ展」なんてやっていたのですね。知らなかった!知っていたら行きたかったなあ。
江戸川乱歩といえば、小学校の図書室にずらーっとシリーズが並んでいて、そりゃもう夢中で読んだ記憶がある。全作品制覇を夢見つつ、マガーク少年探偵団シリーズやドリトル先生、クレヨン王国なども読むのに忙しかった私にはそれは実現できなかった。
それに、夢中で読んだと言っておきながら、「面白かった」記憶があるだけで読んだものも内容をほとんど覚えていない。『幽麗塔』は当時も読んでいなかった記憶だ。
さてさて、この『幽麗塔』はというと、
1898年に英国の作家 A・M・ウィリアムスンが発表した『灰色の女』を
1899年にに黒岩涙香が翻案し『幽麗塔』として発表。その後、1937年に江戸川乱歩がリライトしたものである。
宮崎監督が子どもの頃、この作品に出会ったことが、のちのカリオストロの城につながったのだそう。
貸本屋でかりた本をドキドキしながら読んでいた駿少年。どんな少年だったのでしょうねえ。
もちろん、大人になって初めて読んでも楽しめた。ドキドキもした。
ただ、唯一、気に入らなかったことがある。
この作品の主人公、北川光雄。イラストの通りハンサムな「高等遊民」設定である。正義感が強く、冒険心もあるナイスガイかと思いきや…….
「美人は悪いことするはずない、なぜなら美人だから」という思考回路で、気に入らない女性に関しては、平気で外見をディスるのである。(口には出さないものの)
たとえばこんな調子で、なかなかひどい。
気になる美女には、このように盲目になる。
そして、なりゆきで婚約者となり、あまり好感をもっていない栄子にたいしては、毎回「栄子のやつ」と表現される。
女の側からすると、イラっともするし、悲しくもあるんですけどね。
この時代は、選ぶ側にある男性が、女性の外見や知性を見極めて品定めする、という感覚なのでしょうね。男性に「所属する品」として。
時代性もあるでしょう(今でもこの感覚をもった男性は存在するでしょうけれど)。
女の立場としては、ここにひっかかるのを忘れないでおきたな、という思いはありながらも、やはり素晴らしい作品だと思う。宮崎監督のように、70代になったらまた読み返してみようかしらん。