インクに惹かれて
ナチュラルワインを扱っていたことを思い出して訪れた雑貨屋さんで、ボールペンとインクを買った。結局、ワインは買わなかった。
HERBINのボールペンとインク。インクが欲しくてボールペンも買ったようなものだ。
フランスの老舗ブランド、ということで、有名なんですね。”1670年(ルイ14世在位時代)にパリで生まれた”とリーフレットにある。
雑貨屋さんや文房具店で見かけたことがあったような気がしていたけれど、しっかりと意識したのは今回が初めて。
カートリッジ式のインクがこの小さな丸っこい缶に6本入っていて、振るとカチャカチャと、中でインクが躍る音がする。
なんだか、おみくじをひくときと似ている。何が出てくるのか「お楽しみ」な感じが、ね。もちろん、中身はすべて同じ色のインクなのはわかっているけれど。
それで、この色「ヴィオレパンセ」は、フランス全土の小学校で指定色として愛用されていた、のだとか。それを店員さんから聞いた瞬間、買おう!と思ったのだった。
え?黒じゃなくて?
小学生がペン?
鉛筆じゃなくて?
疑問が色々とわいてくる。
ちなみに、こんな色でした。
私が小学生の頃は、とにかく鉛筆でなければ!という空気であり、それが決まりだった。(今もそうですか?)
子供がシャープペンやボールペンから使い始めると字が汚くなる、とすら言う大人がいた。
それには、
脳の活性化やら、「はね、とめ、はらい」はシャープペンに比べて鉛筆の方が表現しやすい、とか、そういった説はあるようだ。
https://kosakahitomi.net/enpitsu/
https://www.onamaeseal.jp/blog/aboutpencil/
一方、フランスの子供が、学校で鉛筆と消しゴムを使わないように指導される理由としては
消せない筆記用具を使うことで
・やり直しがきかないことで、できるだけ美しく書こうとする。美意識の形成に役立つ
・消せないことで教師たちが消す前の情報・過程を把握できる
ということがあるそうだ。
https://www.gqjapan.jp/culture/column/20170707/why-do-french-kids-not-use-pencils
どの方向からも、よかれという理由があるんですね。
そういえば、母から聞いたのだが、知り合いのピアノの先生(たぶん、知り合いの知り合いの知り合い、くらいの遠い関係性)はお子さんに、消しゴムを与えない教育をしていた、とか。ピアノの演奏では間違いが許されないから、日ごろから修正できない感覚を身につけるため、だそうだ。
それを母から聞かされた時、「ずいぶんと厳しい世界があるもんだな」と、ちょっとした恐怖を覚えたのとともに、自分とは無縁の世界なんだということに安堵した記憶がある。
それに、小学生の頃は、消しゴムもバリエーションが豊富で、コレクションのしがいあるものだった。色やにおいや形で色々と集めていた。結局は、monoの消しゴムが一番よく消えるのは、小学生なりにわかってもいたけれど。
当時、消しゴムのカスを集めて、下書きの上で、のりと混ぜて、練り消しをつくることにも精を出していた。これを授業中にやることに意義ある、くらいの勢いで、授業中、先生の目を盗みながら(しかし、バレているけれど)みな熱心に練り消し作りをしていたように思う。
今でも練り消しって健在なのかしら。
話があちこちにそれたけれども、鉛筆と消しゴムで育った私としては、インクの世界というと、少し背伸びした大人の世界という感覚がいまだにある。
同じシリーズの万年筆と迷ったけれど、日常的にはLAMYの万年筆も使っていたから、今回ボールペンにしてみた。本体がスケルトンだから、インクの残量がわかるところもいいな、と思う。
文具を新調すると、文字を書くということが改めて丁寧な行動になったり、気持ちが引き締まったりするのもいい。
さて、このペンで何を書きましょうかね。