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展示の話

はじめに

絵を描く、写真を撮る、デザインする、そういったクリエイターが行なっている、展示。それが一体どういうものなのか、展示を行う者としての視点からお金で例にとってお話しします。

クリエイターにお金がないのはなぜか?結構高いモノを売ったり入場料とってるじゃん?という疑問の答えにもなるかと思います。

わかりやすく、時給1000円のパートタイム労働者と比較してみます。

展示に必要な時間

展示を行うには、展示物(作品)と展示場所が必要になります。

作品を10点展示するとして、その作品を作るのに1点あたり10時間かかったとしましょう。そうすると展示作品にはトータルで100時間かかったことになります。これは絵画作品ならもっともっと時間がかかると思います。

会場の選定や打ち合わせにざっくり10時間かけたとします。

在廊する場合も考えてみましょう、7日間5時間ずつ在廊したとします。移動に往復1時間かかったとします。在廊にはトータル42時間かかります。準備と在廊でトータル152時間がかかっています。

この間をパートタイム労働に従事した場合、15万2000円を得ることができます。しかしクリエイターはそれをするのが難しいどころか、ここに展示作品の画材・材料・プリント代、消耗品費、会場のレンタル代などで7〜10万ほどかかる場合があります。

パートタイム労働者とお金の量を比較すると20万以上の差が生じたところで展示が終わります。これを作品の売り上げや、お客さんからの仕事の受注、あるいはクリエイター活動以外の収入で補填するわけです。

誤解を与えるといけないので1点言っておくと、展示を行うのは誰かに強制されたわけではありません。嫌ならやめる選択もできます。しかし作品を生で見てもらえる機会というのが少ないのも事実です。

なぜ作品を作り、さらに展示をするのか?創り出すという行為が好きだからです。作品を実際に生で見て欲しいからです。お客さんと言葉を交わしたいからです。

私はこの気持ちを大切にされたいし、大切にしたいです。


展示の新しい形

展示という行為には大変な苦労が伴うということがわかったかと思います。では、それをどうするか?誰かが悪いのではありません。システムを組み直す必要があるのではないかと思います。まず必要なのは展示のステップ分けです。

従来の展示方法は上級者向けとして残しつつ、初級者にはもっとフランクな作品発表の機会があればいいのにと思うわけです。

そこで考えているのが多機能アートコミュニティスペースです。

シェアアトリエ兼シェアギャラリーを想定しているこの施設。具体的には作品作りから見てもらう&1点できたら同じ施設内の壁に即展示する。そうすることで、準備期間から展示とすることができ、また仕上がりが早かった作品は飛躍的に展示期間が伸びます。在廊という概念がなくなる。しかしお客さんとの会話の機会は得られます。また施設が多機能化することで移動時間の短縮や交通費の節約にもなります。

全ての問題を解決できるわけではありません。制作は1人で静かに行いたい方、どうしても作品は格式のある場所で発表したい方など。しかし、新米クリエイターの展示活動のスタートアップには大きな役割を果たせるものと考えています。


まとめ

展示一つにどのような思いが詰まっているのか……?今回はお金で例にとりましたが、お金では測れない苦労や思いが詰まっているのです。少しでも感じるきっかけになれば幸いです。また、記事内の数字に関してはかなり個人差があるものです。今回はあくまでも架空の展示に関してです。


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