時代の魚(詩集『季節の手のひら』より

時代の魚


ぼくが横たえる魚は 船の上で
静かに 静かに うかんでいる

魚は映すためにある
僕らの表象(シンボル)として

僕があのまだ若い 慈しみの海に
幼く稚い 地球のための
あのまだ若い 慈しみの海に
憧れつつダイヴするとき

太陽は湧き けぶる
血潮よりもマグマに近く
あの空に帰り・還りたがるから

だから船は血の海に浮かび
僕らは歩く 水の上を


そういう時代だって魚が詩っている


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