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「故郷に戻ったと聞いています。元々彼は映像作家志望で、故郷でちょうどそういった仕事の募集…
春輔の脳裏に、いつも窓口に座っていた青年の姿が浮かんだ。 「あの爽やかなお兄さんか。冬二…
「あの人、あれ以来店に来てなかったよな?」 冬二郎の淹れてくれたコーヒーを飲みながら、春…
「おい春輔、いい加減にしろ。お客さん困ってるじゃないか」 厨房から背の高い青年が姿を現す…
「これ、お客さんのだろ?」 春輔が差し出してきたノートの切れ端を目にした女性の顔が、みる…
「冬二郎、小包だってよ」 店の奥でパソコンのキーボードを叩いている眼鏡の男に、薄い色の目…
「春輔、風邪を引きますよ」 窓を思いっきり開けて雑踏を眺めている青年に、カウンターの奥から眼鏡の男が声をかける。 「換気だよ、換気。それに俺、風邪なんて引かないし」 春輔と呼ばれた青年は気にする素振りも見せず雑踏へ身を乗り出していたが、どうやら飽きてしまったらしく、パタリと窓を閉めた。 「なあ、この店こんなに暇で大丈夫なのか?」 春輔はつまらなさそうにメニューをいじる。薄い色の瞳は、暇をもて余している、と眼鏡の男に訴えかけていた。 「いいんですよ、これで。この店は必要と