植物はシンデレラ
植物を育てるのが苦手。
というか、あまり好きではない。
実家にいた頃、プランターを用意して、花の苗を買って、花を育てたり、愛でたりしていた。だから元から、植物に苦手感があるわけではない。
自分のせいにしろ、自然の成り行きにしろ、花や植物というのは、どんなに心をかけても、散る時、枯れる時というのは必ずきて、なんだか虚しく感じるようになってしまった。
花が咲けば嬉しいし、ちゃんと世話ができて、綺麗に咲けばもっと嬉しいし、ナメクジに襲われるとなると腹が立ち、ナメクジに天誅を下す。そういう日常が、ある日嫌になってしまった。
時期を過ぎると消えていく、手を尽くしても枯れていく、そういう寂しさ、虚しさ、悲しさ、やりきれなさに耐えられないんだと思う。
花を育てる楽しさよりも、美しさを愛でる愉楽よりも、いつかなくなることの寂しさの方が勝って、花を育てたり、部屋に緑を飾ったりするということをしなくなった。
永遠に続くものなんてないのだから、花のその時その時の美しさを大切すればいいと思わなくもない。たぶん、花を育てることを楽しむ人や、家に飾る人は、そう考えるのだろう。
花や緑を部屋に持ち込むことで、気分が変わり、癒しの存在になるという人もいることは知っている。
今、実際に植物を、私も部屋に飾ったら、気分や花の捉え方が変わるかもしれない。
とは、思うものの、生き物って難しい。その命を預かるとは言い過ぎかもしれないが、一時でもまかされたらそれを楽しみ、大事にし尽くさなくてはならない、と思ってしまう。枯れないように、死なないように。
そういう気遣いが、できる時とできない時、という差ができてはいけないと思うと、息苦しい。
時間制限がある中で、それらを楽しむなんて、シンデレラみたいとも思う。シンデレラは、魔法がとけたあと王子様が迎えに来るというおまけがある。植物ももしかしたら、枯れてしまったあと、「綺麗だったよね」と思う育てぬしの気持ちがおまけとして残るのかもしれない。