滝のような雨 「なーんだ」の話
先の週末、スーパーに買い出しに行った時のこと。
会計も終わり、さあ、店を出ようとしたら、バケツをひっくり返したような、ひどい雨が降ってきた。
今まで何ともなかった空が真っ黒で、いかにも強い雨が降るような雲行きだった。
予報では、昼過ぎか夕方にならないと雨は降らないと言ってたのに、午前中から降るなんて、聞いてない。
店の中から土砂降りを見上げて、この雨の中、自転車に乗って帰るしかないのかと思うと、とても憂鬱になった。
地域密着型のこじんまりしたスーパー。会計が終わって袋詰めが済んだら、早々に店を出ていかないと、お客さんの流れが滞ってしまい、かなり顰蹙ものだ。
自転車を屋根のあるところに止めてあったのは、不幸中の幸いだった。自転車置き場で「あーあ」と空を見上げる買い物客がたくさんいた。
「すごい降りですね」と私が1人のおばさんに言うと、
こればかりは、しょうがないという意味なのか、私に肩をすくめて見せ、それから視線を外されてしまった。
その後返事もないので、話しかけるなという意味で、肩をすくめたのかもしれないとやっと気づいて、「なーんだ」と思った。
そのおばさんは、誰とでもよく喋りそうな風に見えた。雨を見上げてため息をついているから、何となく話しかけたのだけど、失敗だった模様。
前は、まったく知らない人に話しかけるなんてことを、私はしなかった。軽々しく話しかけて、余計な話題にとんでも面倒くさそうだし、それでもやもやすることを何度となく繰り返してきたから。
「まあ、仕方ないわな」と思って、もう一度空を見上げると、雨が少し小降りになっていた。
この隙に帰ろうと、自転車を出して跨ったところで、そのおばさんが、
「雨やんだの?」と聞いてきた。
話しかけて欲しくなかったのではと思ったけど、「小降りになったみたいですよ」と返事をした。
おばさんの返事を持っていたら、また雨が降ってきそうだったので、それきりにして、出発した。
おばさんは結局どうしたかったのだろうと、考えた。話しかけては欲しくないけど、話しかけたくはあったのかもしれない。
なんだかよく分からないけど、そういう気持ちの時もあるのかもしれない。
「なーんだ」思うけど、「なーんだ」というできごとだった
帰宅途中、またバケツをひっくり返したような雨が降ってきて、急いで自転車を漕いだ。
服はべしょべしょだ。
まったくなんて日だ。
そして、雨予報の午後は一滴も雨は降りませんでしたとさ。
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