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絵を描いて生きるという選択肢ー雑事記⑬ー

学びながら。働きながら。
幼少期から30代後半の現在に至るまで、ずっと絵を描き続けてきた私の失敗や煩悩を脈絡なく書く『雑事記』久々の第13回。
今回は、絵を描くことが好きな子どもたちに贈る言葉。

ありがたいことに今年もお声がかかり、小6生に漫画やイラストのことを教える講座を先日行った。今年で早3年目。
基本的なタイムスケジュールは固定していて、10時~15時、昼休憩を除き毎日4時間を3日間。参加するのは自分で講座を選んだ(他にも英会話やドローン、川遊びなどの講座がある)子たち、つまり絵を描くのが大好きな子たちなので、ものすごい集中力にいつも驚かされる。
初日は使う画材、コピックやミリペンなどの練習をし4コマ漫画のネームを作ってみる。2日目は前日のネームを基に原稿用紙に下書きとペン入れ、ベタ・ホワイトなど。3日目のお昼休みまでを締め切りとして作品を提出してもらい、他のスタッフさんがコピー機で作品集を人数分作ってくれている間に私は子どもたちから集めた質問に答えたり、将来の話を少しだけする。

私が「将来まんが家になる」と決めたのは小4の時だった。「まんが家になるためにたいへんだったことはなんですか?」という質問をくれた子に、私は時間だと答えた。小4で志した漫画家への道だが、その足掛かりも兼ねて進んだ美術への道でだんだん漫画から逆に遠ざかり、小4の頃描いた人生設計では大学卒業と同時に専業漫画家デビューするはずが、そのまま会社員となり、美術館に転職し、ひょんなことから漫画家デビューへの扉を
「え、そこ?!」
という場所に見つけて運よく手を触れた。そこに至るまでにかかった時間は、小4から約20年経っていた。
恐ろしい…。
しかも、専業への道はまだまだ険しい。

小6という年齢を考えると、将来よりもまずは今、絵を描くことをのびのび楽しんで欲しい、うまくなりたい気持ちを止めないで欲しいと思う。けれど、彼らが高校受験、その先の大学受験の年齢になった頃、絵を描く将来に繋がる選択肢をおそらくまわりのおとなたちは積極的には教えてくれない。なぜなら、その道はひどく不安定で、収入も期待できない上に必要とされる絶対数が少ない。そもそも絵を描かない人からしたら、絵を描いて生きる人の生態自体がおそらく謎であろう。
だから、この先もずっと絵を描きたいと思う子は自分で調べ、自分で選択していかなければならない。

美術系の学校や専門学校に進んでもいい。けれど経済的にそれが難しかったり、独学でも描ける人は学校に通わなくても全然問題ない。漫画家ならばネタに困らないよう閉じこもって絵ばかり描くより、いっぱい遊んで、色んな人との思い出を作った方が将来役に立つと思う。

などと、どちらかというと野心溢れる気質の私はつい目先のことを考えてしまうが実際は流れに身を任せて今に至るわけだし、先日、同年代の画家さんとお話していた時、彼女は高校から美術科コースに進んだにも関わらず「画家になりたいとか、何も将来のこと考えていなかった」と当時のことを語っていた。それでも絵を描き続けたのはなぜかと問うと、「それしかなかったから」。
勉強も運動も特に好きではない。でも、絵なら描ける。

もちろん現在はきっと、彼女自身が抱いている目標や野望があるだろう。大事なのは、学生時代に難関の美大を突破してもそのまま絵を描き続けている成人は限りなく少数という事実だ。彼女と話していて気づいたが、そういえば私のまわりに沢山いた絵を描くことが好きな友だちも、学生時代のクラスメイトも、ほとんどが卒業後全く別の仕事に就いている。それはそれで、自分たちが選択した大切な人生である。

その中で、例外がふたり。

ひとりは中学時代の美術部で一緒だったYちゃん。放課後毎日ひたすらエヴァンゲリヲンのイラストを描いていた彼女とはその後直接の関わりはないが、東京で有名なアニメーターになっていると聞く。そしてもうひとりが、去年北欧のシナモンロール旅へ一緒にでかけた友人Rだ。

美大卒業後は広告業界に入ったRは絵ではなく言葉で現在創作を続けている。コピーライターとして着実にキャリアアップしているが、中学時代から彼女のつくるものを知っている私にはまだまだR本来の実力が爆発していないと時々、もどかしく思う。阿呆なことに大昔、当時私が付き合っていた彼氏にRを紹介した後日、「君が言う程才能に溢れる感じとは思わなかった」と感想を言われ彼氏に激怒した。と同時に、あれだけ輝く才能も見る人によっては見えないのだという事実を知り愕然とした。
だから、続けて、誰の目にも映るように自分自身で輝くしかないのだ。

とはいえRは現在充分会社の役に立つ活躍をしているのだから、ふだんはなるべく言うまいと思っていた言葉が、先日つい、口から滑り出た。
「Rちゃんはもっと書けると思う」。
怒られるかと思ったが、怒られなかった。逆に、「そんなふうに言ってくれてありがとう」と言われた。

先週noteに北欧旅の記事を載せたことをRに報告メールすると、毎日楽しく読ませてもらっていると返事が来た。土曜だったが、
「今日もコピー書いてます」。


「私も、もっと描けるのでまだまだがんばります」。


こんなメールを送り合う38歳になっちゃうかもしれないけれど、絵を描き続けたい子たちが、ずっと創作を続けられる未来を生きられますように。





今週もお読みいただきありがとうございました。未だに自分が何者かよくわからないけれど、書いているし、描いている。それが大事かなと思う今日この頃です。

◆次回予告◆
『思い出ごはん』③

それではまた、次の月曜に。


*小6生たちの講座の話はこちら↓

*北欧旅はこちら↓


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