#40 強み探し迷子に贈りたい、「比較優位」という発明
経済学における人類の偉大な発明の1つに、
「比較優位」という概念があります。
社会人のみなさんは説明できますでしょうか?
(簡単に説明をしているので、これを機に学んでもらえると嬉しいです。)
元々は国同士の貿易の話ですが、
個人の強みや長所を見出したり、活かす必要性を裏づける、僕がとても好きな考え方なので、ご紹介できればと思います。
スーパーマンと比べても、自分の強みは見えてこない。
自分の強みや長所を探すときに、
「強みを見つけたところで、上には上がいるから、到底戦える気がしない…」とモヤモヤしてしまう難しさがあります。
SNSの普及などで簡単に人と比較できる環境でもあるため、何につけても「自分はあの人ほどではないな…」と思ってしまいがち。
たしかに、何もやらせても高いレベルでこなせるスーパーマンのような人もいますし、
どんな分野を選んでも、その道の猛者は大勢いて、上を見たらキリが無いものです。
そんな人と自分とを比べてしまうと、
「ただの凡人である自分には、強みを活かすなんて話は無縁だな」と思ってしまうのも無理もありません。
そうして強み探しに迷子になってしまう、我々凡人こそ、比較優位という考え方が必要なのです。
世界の国々はなぜ貿易をするのか?
現代ではほとんどの国が貿易をしています。
アメリカ等の資源の豊富な国は、自国の生産で消費を賄える気もしますが、なぜわざわざ貿易をするのでしょうか。
答えは「それぞれの国の強みに集中した方が効率がいいから」です。
イギリス経済学者、リカードが発明した「比較優位の原則」によるものなのですが、
よくある一例を示して説明をします。
それぞれに20人の労働者がいる2つの国、
A国(強者)とB国(凡人)があり、
自動車と小麦を生産していると想定します。
〈パターン①〉自給自足(人口の半分ずつで自動車と小麦を生産)
A国→ 10人で自動車100台(1人あたり10)
10人で小麦100t(1人あたり10)
B国→ 10人で自動車30台(1人あたり3)
10人で小麦80t(1人あたり8)
2国の合計→自動車:130台、小麦:180t
A国は小麦も自動車も生産効率がよく、B国より優れているといえます。
一方、B国はどちらもA国に劣っているのですが、自動車と小麦との1人あたり生産性を見ると、
「どっちかというと小麦の生産の方が得意」といえます。
(B国は小麦について自動車よりも「比較優位」を持つという言い方をします。)
お互いの強みを活かすため、A国とB国がそれぞれ得意分野に集中し、貿易をすると考えます。
〈パターン②〉得意分野に集中(A国は16人で自動車を生産し、B国は小麦に全振り)
A国→ 16人で自動車160台(1人あたり10)
4人で小麦40t(1人あたり10)
B国→20人で小麦160t(1人あたり8)
2国の合計→自動車:160台、小麦:200t
パターン①比較→自動車:+30台、小麦:+20t
なんとびっくり、
1人あたりの生産性が上がったわけでもないのに、2国合計の生産量が自動車小麦共に増えることになります。
これが、19世紀(意外と最近!)に発表された、自由貿易論の元となる大きな発明なのです。
他の誰かが自分より優れているかどうかは関係ない。
B国は、A国との比較だけで考えてしまうと、
「小麦の生産が強み」とは言えない気がしますが、比較優位の考え方はこれを否定します。
この話は個人レベルの話でも通用する話で、要するに、
他の誰かが自分より優れているかは関係なく、自分の中での得意に集中することで、社会全体に利益をもたらす。ということなのです。
組織づくりや人材育成にも欠かせない概念です。
「苦手を克服しよう!」という掛け声の非効率さを浮き彫りにします。
周りの人と比べて自信を失ってしまうときこそ、
「自分にとっての小麦(強み)はどこなのかな?」を考え、それを活かせる環境を整えていくことで、社会に貢献できる武器に磨いていけるのだと思います。