2024年4~6月に読んで面白かった本

今回は少し古い本(2000年代以前)が多め。
古い本だと出版社が倒産していて、探すのに苦労する。
国会図書館の検索エンジンを使うと探しやすい。

南極条約体制と国際法

コウテイペンギン至上主義の勉強会に参加して、ふと思った。
「南極大陸の領有権を主張すれば、コウテイペンギンのコロニーを保護できるのでは?」
そんなわけで、現行の南極大陸の領有権がどうなっているかについて調べた。

南極大陸の領有権は"凍結"であって"取り下げ"ではない。つまり、凍結を解除された時は再度領有権の問題が浮上する。
2048年になると南極条約の見直しが入る。この時に備えて色々と準備しようと思った。
チリとアルゼンチンには南極大陸に関する国内法が存在しているため、コウテイペンギンのコロニーを保護する名目で両国にシンパを送り込むのが良さそう。

鉱物の採掘権と組み合わせた結果、「チリかアルゼンチンの石油会社や鉱山会社を乗っ取って南極大陸の採掘権を確保する」のが良さそうと判断。
これについては話がものすごい長くなるので別途記事を書く予定。

コウテイペンギン至上についてはこちらをどうぞ。


戦争と飢餓

第二次世界大戦時の各国の食糧供給について研究した本。

イギリスが栄誉ある孤立を維持できたのは、大英帝国植民地から船舶で輸送できたからであって、船舶を沈められたらイギリスは飢える。
船の積載量を効率よく使うためにバターではなく、チーズを載せた話は面白かった。
バターはほぼカロリーしかないが、チーズなら各種栄養素も摂取できる。

配給制度のおかげでイギリスは戦時中の方が下手したら栄養状態が良かったとのこと。

栄養状態の悪さを考えると、日本とロシアは粗食にものすごい耐えたと書かれている。


帰還移民の人類学

ザンジバルのオマーン移民について書かれた本。
ザンジバルとオマーンの近代史、オマーンの文化について書かれている本は珍しい。

オマーンはかつてザンジバルも領土であったが、帝国主義全盛期の時にザンジバルとは分離された。戦後はタンザニアがザンジバルを併合したため、今ではタンザニア領になった。

インド洋での象牙貿易について調べたいが、参考文献がほとんどない。
本一冊まとめるには難しい分野である。刷ったところで需要も無さそう。


ゴールデン・トライアングル秘史

中国国民党の残党が雲南やビルマへ逃げてアヘン王国を築き上げた歴史の話。残党が山に逃げるのは歴史あるある。

国民党の残党に取材している話はリアリティがあって面白かった。
土地も瘦せていて、道路も敷かれていない辺境の民が生きていくにはアヘンを栽培するしかない。

アヘンなら高値で買い取ってくれるし、アヘン樹脂に加工すれば数ヶ月は持つ。タリバンもそうだが、物流網が整っていない地域の農民が生きるために栽培する換金作物はアヘンしかない。

麻薬王クンサーの台詞である「我々は西洋が100年前に押しつけたケシの花をそっくりそのまま返しているだけだ」が印象に残った。


失われた宗教を生きる人々

中東に存在するマイナーな宗教を信仰する人への取材。
中東は山岳地帯や沼地が多いため、マイナーな宗教でも意外と存続できる。
ゾロアスター教、バハーイー教、マンダ教、ヤズィード派など昔からあるけど信者がほとんどいない宗教について詳しく書いてある。

人間の運命は既に決まっているという運命説の元ネタがバビロンの占星術だったり、魂が天国か地獄へ行くの善悪二元論はゾロアスター教が元ネタだったりなど、既存のメジャー宗教の教えは他の宗教からパクったのが面白かった。

第一次世界大戦 平和に終止符を打った戦争

ナポレオン戦争以降、まがりなりにも平和を維持してきたヨーロッパがなぜ大陸全土を巻き込む戦争へ突入したかを詳細に書いてある本。

複雑な同盟関係と密約のせいで、どこかの国が戦争を始めると、それに参戦せざるを得ない構造ができあがってしまった。
当時の偉い経済学者は「ここまで貿易が世界規模になって債権・債務の関係が複雑になると大規模な戦争は起きない」と指摘していたが、戦争は起こった。

戦争を避けられないとわかると「どうせ開戦するなら自国が有利な内に戦争を始めよう」という考え方にたどり着く。



キリスト教一千年史 上下

ユダヤ教の分派であったカルトはいかにして、三大宗教の一つに成りあがったかを書いた本。

イエスが存命の頃は本人たちもキリスト教の自覚はなく、せいぜいユダヤ教の分派であると思っていた。周囲から異端扱いされて、ローマ帝国が無視できないレベルの教団を持つようになってようやく「ああ、うちらはユダヤ教の分派ではないんだな」と思うようになった。

カトリックと正教会だと、正教会の方が古いのに驚いた。言われてみればそうなんだけど。

教祖の解釈違いで衝突、内ゲバによって分裂するのは宗教史あるある。
普段は平和だの、隣人愛だの言っている連中が権力闘争で血みどろの争いを繰り広げるのが面白かった。


ザ・グレート・ゲーム

中央アジアでのイギリスとロシア間でのスパイ合戦を描いたノンフィクション。舞台がペルシャ、中央アジア、チベットと移っていくのが面白かった。
帝国主義全盛期で最後まで踏査されなかった土地、それが中央アジアだった。

ペルシャの近代史を勉強したい時は、イギリスとロシアのグレート・ゲームについての本を読めばいいとわかった。

ペルシャはロシアの脅威を防ぐためにイギリスと手を組んだが、イギリスはペルシャに派兵なんてしたくなかったので適当な言い訳をして、のらりくらりとかわして実際に派兵はほとんどしなかった。

イギリスとロシアのスパイ合戦はやはり面白い。


東方に火をつけろ

「ザ・グレート・ゲーム」の続編。
アジアで共産革命を起こそうとしたボリシェヴィキの話。
タイトルコールの部分はかっこよかった。読ませる文章を書く作家の言い回しはひと味違う。

ヨーロッパでの共産革命に失敗したボリシェヴィキは、アジアでの共産革命をたくらんだ。問題なのはアジアをこの目で見たことのある幹部が一人もいなかったことである。

共産主義者がレーニンのカリスマ性でずっとやってきたのがわかる話だった。レーニンの死後、ボリシェヴィキは内ゲバと粛清の嵐で瓦解していった。

クジラとアメリカ

おおよそ400年にわたる米国の捕鯨史についてまとめてある。
捕鯨船の船長と航海士はかなりの高給取りであったが、末端の船員の給料は無いに等しかった。

カリフォルニアでゴールド・ラッシュが始まると、西海岸まで行った捕鯨船から船員が脱走する始末。捕鯨で一発当てたい人間は金が稼げればなんでもいいのだ。

19世紀になるとクジラを捕り尽くしてしまい、アリューシャン列島まで行かないと捕鯨ができなくなっていた。ちょうどその時にペンシルバニアで石油が見つかり安価なエネルギーとして鯨油は太刀打ちできなくなった。


モルガン家 上下

モルガンスタンレーの前進である、モルガン家の歴史を描いた作品。
金融に関する知識がないと読み進めるのが難しいと思った。

マーチャントバンクはやがて貸金業で稼げなくなり、投資銀行へと姿を変えた。

19~20世紀の金融史についてもわかる本で面白かった。
ラテンアメリカの国債をまとめ買いして、ばら売りにして個人投資家に売りつける方法は今でも通じそう。

まとめ

ネット全盛期になる前の本だとマイナーな分野でも一冊の本があって面白い。歴史や紀行文なら多少中身が古くても「まあそういうもんだ」で済ませて読める。

出版社が倒産している書籍だと、プレミア価格がついて高額なので図書館で読もう。
一方で面白い本は値崩れしにくいので、いざとなったら売り飛ばせる資産でもある。
値上がりする前に買うのはあり。20年経つと古本でも2倍の価格はよくある。

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