2023年(7~9月)に読んで面白かった本

四半期ごとに書いている読んで面白かった本シリーズ。

面白い本は読む手が止まらなくなる。
年数重ねるにつれて審美眼が養われている筈なので後半に読んだ本の方が面白い……と思う。


・「世界を変えた10のトマト」

イタリアにトマトが上陸して300年は食卓に並ぶことはなかった。ずっと観賞用として栽培されてきた。
ナポリのピザにトマトソースが添えられるようになったのは19世紀後半と遅い。我々のイメージするイタリア料理はせいぜい100年ちょっとの歴史しかないのだ。

トマトがここまで世界に広まったのはトマト缶の発明が大きい。トマト缶の発明によって全米全土だけでなく、世界の辺境にまでトマトを届けることができるようになった。

今でこそ、トマトを一切使わない地域の料理を探す方が難しいが、19世紀まではマイナー野菜に分類されていた。わずか100年で世界に普及したトマトは野菜界のシンデレラ。

・「新しい世界の資源地図」

石油、中東、ウクライナ、台湾有事と最近の世界情勢を広く浅く知るのにちょうどいい本。

米国内でシェール開発ができるようになったことで、米国は中東の石油に頼らなくてもよくなった。米国が中東から手を引いているのはこれが理由である。わざわざ血税を使ってまでホルムズ海峡を通過する石油タンカーを護衛しなくてもいい。

エネルギー情勢、中東近代史を知らないと最近の地政学はわかりにくい。
中東の近代史100年分くらいを勉強すると世界のニュースがわかりやすい。


・「川と人類の文明史」

川と人類が歩んだ歴史についてのダイジェスト。広く浅く知ることができるグローバルヒストリーものは読みやすい。

国際河川の権利はややこしくて、基本的には上流地域の国が有利。なにかあったら「川をせき止めるぞ」と脅せるから。
エジプトとスーダンがエチオピアの大エチオピア・ルネサンスダムの建設反対したのはこれが理由。

一方で下流地域の方が有利な場合もある。船を航行できる河川だと下流地域の国が許可しないと、上流地域の国は船を海まで出せない。
ハンガリーは下流のクロアチア、ブルガリア、セルビア、ルーマニアの許可がないと黒海に船を出せない。


・「科学でかなえる世界征服」

科学的に真面目な検証をして世界征服ができるかを書いている本。世界征服をするには、まず長者番付で上位10名に入るくらいのお金持ちになる必要がある。それくらい世界征服には金がかかるのだ。

科学目的以外での南極大陸における採掘活動は禁止されているが、2048年に「環境保護に関する南極条約議定書」の見直しが入る。
このため2048年になると南極大陸での採掘活動が解禁される可能性がある。
石油や鉱山利権は世の中の独裁者が死んでも手放さない利権。今のうちに領有権を主張しておこう。

南極大陸には金、ダイヤモンド、ウランがあるのは確認されている。南極大陸の一部を貰えたら鉱山利権で一生遊んで暮らせる。


・「インドカレー伝」

カレー、タンドリーチキン、紅茶とインド料理全般に関する歴史本。インド料理の源流をたどると、ペルシャや中央アジアの料理にたどり着く。それもその筈、ムガル帝国は中央アジアの遊牧民に由来しているのだから。

ジャガイモ、トウガラシ、トマトの新大陸由来の野菜がインド料理を変えた。トウガラシはポルトガルがゴアを占領した時には普及していたが、トマトは19世紀になってようやく取り入れられたのが面白かった。同じナス科でもトウガラシの受け入れは早かったが、トマトは遅かった。

インドの紅茶文化もイギリスがアッサムで茶のプランテーション事業が軌道に乗ってから普及したのに驚き。有名な食文化の歴史は意外と浅いことが多い。


・「クリミア戦争 上 下」

上下巻と分かれているほど長いが、面白過ぎて一気に読んだ。
ヨーロッパの東方問題は衰退しつつあったオスマン帝国の分割に由来していた。世界を巻き込んだ大戦はここから始まった。

ロシアは東方正教の聖地であるコンスタンティノープルを確保したいが、イギリスは意地でも取らせない。ロシアがコンスタンティノープルを取ると、ロシア艦隊が黒海から地中海へ渡れるようになるからだ。

ロシアの脅威を潰すためなら大義のない戦争も平気でやるし、宿敵フランスとも同盟を組む。なんなら異教徒のオスマン帝国だって支援する。

帝国内に色々な民族がいると、帝国が衰退した時に手に負えなくなるのがわかった。ロシアはオスマン帝国内のキリスト教徒を保護する名目で武器を与えて蜂起を支援していた。

少数民族の独立が話に出る時はだいたい大国が裏にいる。

まとめ

最近は琴線に触れる本が減っている。
読んでいる時に脳汁、つまりはアドレナリンが出にくくなった。
リクエストした本を受け取る瞬間が一番アドレナリンが出る。血税が五臓六腑に染み渡る。

大学時代も含めると読んだ本の数は1,000冊を超えた。1,000冊を超えたが人生観を変えるような本には一冊も出会っていない。価値観は劇的に変わるものではなく、少しずつ変わっていくものだと思った。

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