格闘における脱力

“脱力”

 直ぐ身体が力むクセがある者にとっては永遠の課題であると思う(気がする)。
 筆者自身、力みグセのせいで散々苦労して来たし、喧嘩で散々負けてきた。勝てるようになったのは練度や技が増えた云々とかでなく、脱力の仕方を少しは学んだからである。
 

★それで強く蹴ってるつもりですか?★

 クラヴマガを始めて初日ぐらいに言われたことである。始めての環境で緊張していたとはいえ、力みグセのせいで蹴りがお粗末極まりないモノになっていた。
 格闘初心者や怒りに身を任せた状態で強く打とう、強く蹴ろうと気持ちだけが先行して、力いっぱいに当身技を繰り出したものの、全く相手に通用しなかったという苦い思い出ぐらい、喧嘩してきた者なら理解してくれる事もあるのではないかと思うのだが、気の所為だろうか。
 
 クラヴマガのジムで練習中、インストラクターにミットを持ってもらい、ひたすら前蹴りを繰り出すも、インストラクターの表情は動かない。力みに加え、インストラクターの反応が面白くないこちらも変な熱が入り、下手な蹴りを繰り出した。
 15発目ぐらいでインストラクターがはにかみながら言う。
「ウルシさん、それで強く蹴ってるつもりですか?」
 インストラクターは元同業者。そして筆者が「そういう仕事」なのもとっくにバレている。ちょくちょく棘がある指導を頂いた。
「完全にブランブランにしてから力抜いて蹴ってください」
 言われた通りにした。
「さっきよりこっちの方がマシなんですよ。多分ウルシさん今までずっと言われてきてますよね?」
 全くもって仰る通りです。
 格闘に限らず、スポーツ全般で力みは碌な結果を生まない事は経験者なら誰しもわかっていることであると思う。


★そもそも力みの原因って何★

「緊張」
「力入れて突いた方が強いんじゃね」
 のどちらかでないのかと考える。力んだ低練度者がよく指導される事として
「手打ちになるな!!」
が挙げられる。手打ちは手の力だけで繰り出す突きや打ちの事である。受け手側としてミットに受けてみるか、腹筋に力入れて腹に打って貰えば良い。
 手の力だけで繰り出す突きには肩の回転、交換作用や体重が全く乗らない。これでは本来発揮できたハズの撃力は発揮できない。最も、手打ちが完全にダメかと言うとそうでもない。予備動作(タメ、起こり)が無い分、相手に察知されにくい。その為、手打ちをメインに戦うプロも少なからずいる。

↓ぜひ読んでください。

ボクシングの競技力向上に悩む人は「手打ち打法」で突き抜けられる|岩永翔太@ボクサー×Webライター #note https://note.com/shota030321/n/n02ea80fe76f5

 筆者もナイフ格闘のトレーニングをするにあたり、手打ち技法のトレーニングは必ず行う。使い方や練習次第ではとことん実戦的にもなる技術であることはプロが証明している。
 しかし、徒格(日拳)の試合において、1本を取れないことが多い。プロレベルの選手が繰り出すならまだしも、筆者のような下手くそが試合でやるのはやめたほうが良いだろう。


★手をブランブランしてから打て★

 鬼の様に恐ろしい先輩から脱力の大切さを思い知らされた時の練習要領であるが、先ずは上半身を完全脱力させてブランブランにする。そして任意のタイミングでミットを打つ。ただこれだけである。
 自分自身では分かりにくいが、受け手からすれば違いは歴然である。
 脱力により、筋肉のロックが外れて腕を前に伸ばせるようになり、なおかつ速力は激的に向上する。
 撃力は速力×重さの二乗に匹敵する。ーというのはよく知られた話だが、力んでて速力が出せないよりも、脱力により速力が発揮できるなら、どちらが強力かは言うまでもないだろう。更に脱力により、体重、肩の回転運動が加わりやすくなれば最早説明不要である……と、頭では解っていても、散々苦労するのが力みガチな人間である。

 これはあくまでも筆者の例であるが、筆者は日頃から棒を使用したトレーニングを行っている。フィリピンの武術であるエスクリマを通じて得た練習要領である。これのお陰で力みはだいぶ解消した(…と思いたい)。最初は速く振ることを意識していた。力めば、風を切る音はならない。最初は大ぶりで練習し、徐々に肩幅の範囲に収まる(ナイフテクニックにおいてはこのエリアが適正と言われている)ように演練をしていた。「ナイフは拳の延長線上の道具」ともよく言うが、棒、刃物を意識した練習は自然と突きや打ちの技術も向上させる上、当身技の練習においても同じ事が言えると思う。





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