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贋世捨人

贋世捨人…単行本平成十四年十月、とあります。
作者は、車谷長吉氏。
私が車谷さんの小説を初めて読んだのは、平成十一年十一月頃なので、その数年後に書かれた作品のようです。
車谷さんは私小説を書かれていた方で、この小説に書かれている内容もあらかた実話が元になっているように思われます。

西行法師の短歌に感銘を受けた作家はたくさんいると思われますが、
世捨て人として生きたいと歌っていた西行法師が、実は多くの荘園を持っていて、苦も無く生活していた、というところにまで言及した作家はあまり見たことがありません。
確かに、文学というと、悠々自適に生活している高等遊民のような人がせっせと悩んで作品を生み出している、というイメージが払拭しきれないのもたしか。
そんな中で、自分の立場を認識しつつ、それでも自分は書きたい、書かざるを得ないと、ここまで真剣に自分の生き方を追求できる人はそうはいないでしょう。
車谷さんが故人となられた今、遺作の数々は、なおさらその重みを増しているように思われます。

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