チラシは「折り込む」? それとも「挟み込む」??
現代の日本においてはまだまだ、コンサートにチラシは不可欠のもの。これは誰でも知っている。そして、ちょっとしたアマオケやら吹奏楽団やら合唱団やらで活動をしたことのある人だったら、自分たちのだいじなだいじなチラシをもらってもらうためには、他団体の定期演奏会という絶好の機会を逃してはいけないことも、知っているはず。そう、挟み込みというお仕事の登場である。
昨日・今日と、とある演奏家の方と挟み込みについての連絡をやりとりしていたのだが、ふいに「バーター方式で」「関西方式」などという単語が私をちょっと混乱させたのである。
なんか、バーターはわかるんだけど、うしろに方式ってつくと、なんか変わるのか??わかるような、わかんないような。。。ちょっとまて関西方式ってなんなんだ。あわあわ。
お返事かくまえに、急いで検索検索。
「バーター 方式」おや・・・あんまりいい結果が出ない。
「バーター チラシ 挟み込み」・・・・・
こういうときはインターネットより近くの知り合い。ということで同僚との立ち話ついでにさっくり聞いてみちゃう。業界歴の長いおねえさんはすぐに回答を教えてくれた。
いわゆる「バーター方式」とは、Aという団体がBという団体のコンサートにチラシを(自前の要員を使って)挟み込む。そのかわりに、Bのコンサートのチラシを同じようにA団体のコンサートの開催時に送って、同じように自前要員で挟み込む、ということを指す。barterはもともと英語で「物々交換」だが、芸能の業界だと、抱き合わせ出演を指す用語になって、それで定着している。いまどきっぽく言うと、Win-Winの関係ということになるだろうか。
おそらくAとBの団体の活動拠点が離れていたりするときに、バーター方式が採用される場合が多いのだろうと思われる。ただし、アマチュアで年に何回も演奏会をしない場合は、そもそも交換条件として持ち出せる演奏会が無いので、この取引が成立しにくいかもしれない。
さて、この物知りのおねえさんをもってしても「関西方式、、、って、なんだ??」 ということになり、ふたたびネットの海に釣り糸を垂らす。
…お、ヒットしたぞ。なになに、これは演劇系のかたのブログか。http://fringe.jp/knowledge/k014.html
先に言っておくと、「折り込み」「挟み込み」似たような語でまぎらわしいが、両者はほぼほぼ同じことを指して用いられる語のようだ。関東では折り込み、関西では挟み込みという語が使われるとの見解もあったが、同じ意味ならまあいいや。
さて、いくつかのブログなどを読み漁った結果、関西方式・関東方式というのは、チラシの束を作るときのやり方を指していることがわかった。
関東方式;
ひとつのカンパニー(=劇団)が、まずプログラムにチラシをいれる。その次の団体は、その上(もしくは下)に自分たちにチラシをいれる。そのまた次も同じようにして、1団体づつ同じ作業を繰り返し、最終的に全団体分のチラシが挟み込まれてフィニッシュとなる。東京方式と言っているかたもいた。
主催側からの指示としては、「12時から15時の間に作業しに来てください」みたいなことになる。
関東方式と言われる所以は諸説あるが、現実問題として、小さなハコでの挟み込みは使えるスペースにどうしても限りがあり、そのため1団体づつ作業をするようになったのであろうという説はなかなか説得力があるなと感じた。
関西方式;
「13時から挟み込みを始めますので、時間厳守でチラシを持参するように」と言われたら、それが関西方式である。挟み込みをした団体がいっぺんに集まり、たとえばその日に10種類のチラシを挟み込むなら、10種類を長机かなにかにずらっと並べ、机の前を移動しながら1枚づつ手元にとって重ねていき、チラシの束をこしらえる。これを参加者全員で繰り返す。拘束時間は長いが、同業者(?)との痴話話をしながらの作業は意外と楽しいし、情報共有などにもなってよろしい。
…と、いちいち言葉で説明するのははじめてだが、要はこの方式、吹奏楽などのアマチュア音楽家にはおなじみの光景である。大きな公演だと、30人から40人の団体が各1〜2名づつ派遣してきた挟み込み要員たちが、長机のあいだを延々回りまくりバターになる恒例イベントと化している。
ただ、どんな長机でも良いかというとそうでもない。最近の公共施設に多いワンタッチで折りたたみのできるタイプの机は、たくさんチラシを置くと重量に耐えきれない場合があるというのである。
上記のような、四つ足のタイプなら安心だ。
しかし、関東に住んでいながら「関西方式」で挟み込むとはこれいかに。そういえばコンサートのチラシを「折り込む」とはいわないよな、挟み込むって言うよな、なんて思ったりして。
関西方式にもおおまかに言って2通りあり、1つ目は、20種なら20種を並べた「工程ライン」を1ラインのみ作り、そのまわりを何十人もの作業者がぐるぐる回ってバターになりつつ完成を目指すもの。もうひとつは、自分の手元に全種類のチラシを置いて小さいラインを作り、めいめいが自分の持ち場で作業をするというもの。参加人数、使える時間、作業量などによってどちらかを選択するが、ここで誰か仕切ってくれる存在がいると、おおいに作業効率がアップするのは確かだ。
よく、制作を勉強している音大生などにこれをやらせると、その子がどのくらい現場で即戦力になるかがわかると言われたものだ。単純作業に見えて、ボトルネックになっている箇所をいかに解決するか、しかもその時集まった一回きりのメンバーで、どうやっていい結果を出すか、奥の深いのがチラシのはさみこみ。最近は挟み込みや配布を代行してくれる業者さんや、全自動ではさみこみをしてくれる機械が登場するなど、技術革新も進んできている。ただ、俗称・通称で「関西方式」といわれてもなかなか理解できないくらいにはまだローカルで口伝の部分が大きいのも事実だ。
だが、関西方式に慣れている(というか、それしか知らなかった)身としては、関東方式はいかに場所がないとはいえ、ちょっと非効率すぎるのではないかと思ってしまう。まだ私自身は関東方式での挟み込みに出くわしたことはないが、ほんとうにこんなやり方で今も行われているのだろうか。私はひょっとして何かの都市伝説のページばかりを読んだのではなかろうか。と、そこまで勘ぐってしまうくらいである。
もし関東方式の体験者の方がおいでになったら、ぜひコメント等でお知らせいただきたいものだ。いくらデジタル化が進んだとはいえまだあと20年くらいは消えないであろうチラシにまつわる面倒な業務、せめてハウツーを共有して、誰かの役に立つことがあればこれさいわいである。