見出し画像

#眞壁の野望 #野望アンサンブル 試演会レポート

 2024年12/20(金) 13:00〜、都内某所にて、とある「試演会」が開催されていました。
 昨年9月に刊行された「Ehrgeiz」という楽譜集の演奏を楽しむ会だったのですが、これの成立経緯が、なかなか特殊なので、まずはそこからご説明させてください。

 この「Ehrgeiz」ですが…
①ドイツ式バリトンとテノールホルンのデュオ曲のみを13曲収録した曲集
②監修者はこの2つの楽器の愛好家(アマチュア奏者)の眞壁さん。
③曲集に収録する作品はすべてこの曲集のために作られたもの。
 ここまで見ただけでも、そこらへんの商業出版とはまったく生い立ちが違うのがおわかりいただけるでしょう。。

 さらに、
④ヘ音記号版とト音記号版があり、ドイツ式バリトンとテノールホルン以外の楽器でも演奏が可能
⑤難易度調整のために音域指定あり。奏者の自由な表現のために表現記号は使用していない
など、こだわりが随所に散りばめられた曲集です。


曲集表紙はこんな感じ。こちらはト音記号版
曲集表紙画像、こちらはヘ音記号版

イラスト:夏生悠希さん

このユニークな楽譜集の刊行記念として、ドイツ式バリトン、テノールホルン以外の楽器も自由に持ち寄って、作品を実際に音出ししてみよう!ということで開かれたのが、この試演会「野望アンサンブル」というわけでした。


会場は山手線恵比寿駅から徒歩ですぐのスタジオでした。住宅街の中にある、一軒家を改装した素敵な現場。雰囲気が良くて、メインホール以外の練習室もあり、プチ合宿とかも出来そう。
KIRA HALL  JR山手線・メトロ日比谷線 恵比寿駅より徒歩5分、恵比寿ガーデンプレイスより徒歩1分

会場外観

今回あつまったのは、老若男女、様々な楽器の愛好家やプロ奏者たち10人ほど。ドイツ式バリトンはなんと主催の眞壁さんのみ…!(注:この楽器自体の広報活動も兼ねているとのことでした)あとはユーフォニアム、トランペット、トロンボーン、クラリネット、ホルン(!?)鍵盤ハーモニカにリコーダー(?!)…果たして上手く二重奏になるのでしょうか。。

受付時にくじ引きをして、誰とペアになるかを決めました…!

トランプを引いてペア決め!

筆者はクラリネットなどを持参しました。最初のペアは、ユーフォニアムの町田さん。よろしくお願いします!


さっそく何を演奏するのか、相談タイム……

今回の曲集には、初級者向けからがっつり現代音楽まで、幅広い難易度の作品が収録されています。今回は町田さんが「推し」ている中原みづきさんの作品《林檎の木》を選びました。

筆者がクラでテノールホルンパート、町田さんがユーフォでドイツ式バリトン パートを担当することに…

音出し後、何度か合わせて、これなら大丈夫そう! そしてふと思い出したのです。実は私、もう1つ楽器を持ってきておりました。こちらです。

鍵盤ハーモニカ?ではなく、鍵盤リコーダー、名を「アンデス」と申します。

試しにこちらの楽器でデュオにチャレンジしたところ、、、これはこれでなかなか良い!クラリネットはユーフォには音量ではかないませんが、アンデスの音色はよく通るので、バランスが格段に改善。一回目の発表会は急遽、アンデスとユーフォニアムに変更となりました。

合わせたり、さらったり、練習風景

練習タイムを終え、1度目の発表タイムは、ご覧のような曲が演奏されました。
⑴song for DUO/近藤碧 (ドイツ式バリトン&トロンボーン)
⑵林檎の木/中原みづき(アンデス&ユーフォニアム)
⑶訴ふ(うったふ)/福村帆乃香(クラリネット&トロンボーン)
⑷森生える/ながはな(鍵盤ハーモニカ&ユーフォニアム)
⑸お茶会/中原みづき(フリューゲルホルン&フレンチホルン)
《訴ふ》にチャレンジしたペアが!福村帆乃香さんによるこの作品、「現代音楽への入門」のために書かれたというだけあって、本曲集の中でも屈指の難易度となっています。この短時間で仕上げてくるとは……たいへん素晴らしい発表でした。実演で聴いてようやく、作品の持つ魅力が少しづつ分かってきたように思います。

ながはなさんの「森生える」も注目の選曲。演奏者はピアニストとして活動中のいとうなみさんと、 作品も提供したユーフォニアム奏者の今村耀さん。短いながら濃縮された楽しい譜面。「我々の大好きなながはな先生に敬意を評して」とのコメントをいただきました。

《お茶会》は、作曲者である中原みづきさん本人による演奏。ペアのすめしさんはなんとフレンチホルンでの参戦…!?え、譜面は?と思ったそこの貴方。安心してください、その場で作曲者本人が移調譜を作成していたのでした!

—---------------

休憩と自己紹介タイムのあと、次のペアを決めるべく再度くじびき。

筆者の次なるペアは、さきほどフレンチホルンを吹いていたすめしさんになりました。……さあ、譜面はどうしたらよいのでしょうか…!
と、ここですめしさんから「あの…もし良かったら、アンデスお借りしてもよろしいでしょうか??」
それだ!というわけでアンデスをすめしさんにお預け。アンデスとクラリネットでのアンサンブルが爆誕しました。なかなかお目にかからない組み合わせですね。
アンデスはinCなので、曲集のヘ音記号版のほうをうまく読み替えて、これならいける! アンデスが上、クラが下で合わせてみると、音域もなかなかいい感じ。

さて、2回目の発表タイムはご覧のようになりました。
⑴メルクマール/今村耀(ドイツ式バリトン&ユーフォニアム)
⑵メルクマール/今村耀(フリューゲルホルン&トロンボーン)
⑶ein Gedicht./みなみじゅん(ユーフォニアム&クラリネット)
⑷灯り/佐藤龍弥(アンデス&クラリネット)
⑸Lieber James/みなみじゅん(鍵盤ハーモニカ&リコーダー)

まさかの曲被り《メルクマール》が2回連続となりました。中原みづきさんとジャンニさんによる演奏は、ご本人たち曰く「曲集の”ねらい”どおり、自由な表現をしました」とのことで、ドイツ式バリトンとユーフォによる「トラディショナル」な一回目の演奏とはまた違った志向の演奏となり、興味深く拝聴しました。《メルクマール》はシンプルながら奥深い作品で、様々な演奏の方向性が可能な、時間をかけて取り組むに値する作品だと思いました。作曲者である今村さんも、まさか2度演奏されるとは思っていなかった様子で、感慨深そうに聴いていらっしゃいました。

また、最後の⑸Lieber Jamesも作曲者ご本人、みなみじゅんさんは1回目の発表ではトロンボーンで参加していましたが、なんとこちらも別の楽器をおもちで、リコーダーと鍵盤ハーモニカというなんとも「音楽室系」なデュオを聴けました。学校で使う教育楽器とはいえ、みなみさんの愛機はグラナディラ製のプロ仕様、いとなみさんの鍵ハモもオールブラック仕上げで大変カッコよく、演奏も素晴らしかったです。

練習風景(ジャンニさん、中原さん)

------------------

最後に、ジャンニさんが独自の基準で選出された、本日のMVPが発表されました…!

MVPは、、、会場を最も楽しませてくれた、そして賞品を貰ったあとの反応が面白そうだ、という理由で、すめしさんに決定!

「眞壁の野望」Tシャツが贈呈されました!

すでにTシャツを着用していた眞壁さん(右)、
贈呈者のジャンニさん(中央奥)、すめしさん(左)

誰もが納得のMVPが決定したところでお開きとなりました。

このあと全員でホールの片づけをしました!

---------------

様々な楽器が集まるということで、果たしてきちんとアンサンブルできるのか不安な部分がありましたが、どの作品もかなりフレキシブルに対応できるもので、なかなかぶっ飛んだ組み合わせの時も、しっくりくる演奏に仕上がっていました。作曲者が3人も参加してくださり、主催の作品に対する思いも伺うことができるなど、唯一無二の試演会となりました。
練習曲集のように使用もでき、ちょっとした本番でも使える作品集として、ぜひ色々な方に広まったらといいなと思う、素敵な会でした。

「眞壁の野望」曲集はこちらから購入が可能です!

作品一覧はこちら

(収録順)

中原みづき:《林檎の木》

佐藤龍弥:《灯り》

みなみじゅん:《Lieber James》

近藤碧:《Song for Duo》

丸山朝光:《I Remember You》

みなみじゅん:《ein Gedicht.》

中原みづき:《お茶会》

中原みづき:《五月尽》

福村帆乃香:《訴ふ》

佐藤龍弥:《古城》

ながはな:《森生える》

今村耀:《メルクマール》

中迫酒菜:《DUO》


(後日談)

フレンチホルンで参加しMVPをゲットしたすめしさん、賞品の真壁Tシャツを帰宅後クリスマスツリーにしてしまったそうで、ご本人から写真をお預かりしました。これはすばらしい。

写真提供:すめしさん

第2弾の曲集も予定しているとのことで、ドイツ式バリトンとテノールホルンの日本での未来はだんだんひらけてきた、と言ってよいかもしれません…!乞うご期待。

いいなと思ったら応援しよう!