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朝のショートストーリー『散歩』

宮島千穂子(57)・宮城在住・パート@近所のレストラン
ゴロ(6)・黒のラブラドールレトリバー・常にごろごろしている

ゴロはこの頃、今までにもまして散歩を嫌う。

ごろごろのゴロなだけあるわ、と思っていたけれど、少し度が過ぎている。

長生きのためにも運動させないと、と考えているのに、ゴロは寝転がってばかり。

今朝も、まだ眠そうなゴロを無理やり散歩に引きずり出した。

海沿いの道を抜けて、芝生のある公園を横切り、街の通りを歩いて帰るのがいつもの散歩ルート。

でも、今日は海沿いの道の時点で、ゴロの足取りが重い。

すれ違うわんちゃんたちは皆嬉しそうに飛び跳ねているのに。

ゴロに合わせてゆっくりゆっくり、時には引きずるようにして歩いていると、犬たちに引っ張られている飼い主さんが少し羨ましくなる。

何とか芝生の公園までたどり着くと、ゴロはどんな長旅をしてきたのかとこちらが聞きたくなるほど疲れた目をして、その場に勢いよくごろりと寝転がってしまった。

こうなってしまうと、もうしばらくは動かない。ゴロの大きな体を持ち上げる力も私にはないから、こうなったが最後、待つしかないのだ。

ひとつ溜息をついて、ゴロの隣に座り、かれを眺める。

心地よい風がゴロのひげを揺らす。

平和だなあ。

こうしていると、なんだか寝転がりたくなってゴロの横に寝そべってみた。

秋晴れの空はどこまでも青く、そして、遠い。

深呼吸をすると、隣にいるゴロの気持ちが少しわかったような気がした。

ゴロのおなかをそっと撫でる。

朝が、始まった。

<おわり>

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