「方形の円」 ―読書感想文1
はじめに
読書感想文と銘打ちましたが、訳あって、実際はタイトルの小説に関する感想は扱わないことになるとのっけから予想してます。
っというのも、第一感で面白そうと思いタイトル買いした本著の「解説」がわたしの好きな小説家「酉島伝法」さんだったので、この方の話をしようと考えました。
読者として勤勉な態度ではないのかもですが、本著のタイトル(「方形の円 偽説・都市生成論」)からしてわたしの琴線に触れっぱなしで、直感的に”解説でネタバレされても楽しめる本”と予想して、本文の前に「解説」から読みすすめたわけです。
そうしましたら、意外にも「酉島伝法」さんの名前があったので更に嬉しくなってしまったわけです。
わたしの好きな「SF」
「SF」と一括りに言っても、みなさまもそれぞれ好みのジャンルというものがあるのではないかと思います。
わたしも”ジャンル”という程ではないですが、好きなSFの”空気”があります。
キーワードでいれば、「無機質」「宇宙」「AI」「未来」「ディストピア」「孤独」「コンピュータ」みたいな感じです。
作者で言えばグレッグ・イーガンやフィリップ・K・ディック、J・G・バラード、ジョージ・オーウェル、漫画だと弐瓶勉さんの「BLAME!」なんかが好きです。
(ちょっと逸れますが、好きな小説のタイトルをベタベタ書くと、そのなかのキーワードを分析してワードクラウド的に出してくれるサービスがあるといいなーと思います。何を読むか迷ったときに好きな傾向で本を紹介してくれるサービスがないものでしょうか?)
一方、酉島伝法さんの作品は「皆勤の徒(2013年8月初版)」や「金星の蟲(2023年10月初版)」などに触れた方ならわかっていただけると思うのですが、「生生しい」「有機的」「生物的」「グチョグチョ」「蠢蠢」・・・のような”空気”を感じます。
(”空気”のはなしなので、感じ方は千差万別かと思います)
なので、本当はわたしの好きなSF(「無機質」「宇宙」「AI」・・・)とは、だいぶ方向性が異なるはずなのですが、その異質さが一周回って気持ち良いんですよね。
この「異質さ」を煮詰めた極点がまさに酉島伝法さんの作品だと思います。
この方の小説は「絶対にこの方しか書けない」と確信しています。一度頭のなかを覗かせてほしい作家さんですね。
気になった方はぜひ。すごく好みが分かれると思いますが、一度世界観にハマってしまうと、この世界でしか接種できない麻薬性があります。
「方形の円」と酉島伝法
はなしをタイトルの「方形の円」に戻すと、これは「無機質」な都市をあらゆる角度・時代・空想で創造した小説になります。
斜め見した感じでは「主人公」もなく当然ヒロインなんてものも登場しなそうです。
各都市の勃興と衰退を鳥瞰的に描いた、都市計画書のようなブループリントのような歴史書のような作品です。(まだ、冒頭部分しかちゃんと読んでないのですが・・・)
この小説の解説が「有機物」SF小説の特異点みたいな小説家 酉島伝法さんだったので大変ビックリした次第です。
そして、なんとなく通ずるものがあるのかもしれないと勝手に感慨にふけていました。
解説の内容も本著作者のササルマンの出身であるルーマニアとイタリア文学についても触れながら、この小説の機微が読者に与えるであろう影響に言及した大変造詣に富んだ内容で、なんだか本文を読む前からもう満足感を味わうことができました。
(本当に不真面目な読者ですね・・・)
さいごに
読書感想文といいつつ、解説の感想になってしまいましたが、個人的には小説一冊読んだくらいの満足感を得ています!
本著「方形の円」についても、いろいろなインスピレーションを与えてくれる作品だと思いますが、おそらく感想を文字化することができないのではないかと思っています。
文字化できる感想があったら証跡として記述させてもらいたいです。
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