羽根田・カンポス彗星発見の地
昨年の9月のことになるが、南相馬市博物館から少し離れた、あの場所に行くことができた。事前に博物館に寄り、羽根田利夫さんと40年前の新彗星発見に関する展示を見学していた。ここに惹かれている方は他にもいらして、きっかけも同じこの本だった。
何十年かの間の、何度かの蔵書整理を乗り越えて、この本はまだ手元にある。その大きな理由のひとつはおそらく冒頭の羽根田さんの手記で、茫然とした確かな灯りのような印象を忘れられず、大事なものを失くしてしまうような気がして、手放せずにいた。
博物館の学芸員の方によると、目印の抱月荘という旅館は震災後一時休業していたが、再開されたばかりだとのこと。それにしても、抱月荘。この地にこそふさわしい。
暗い脇道をしばらく行くと急に開けて、あぜ道の向こうに、あの石垣は本当にあった。
この狭い石垣の上に、あの小屋は確かに、あったのだ。
暗い脇道の先のこの小さな観測小屋から、
ひとりの人間が、
来る日も来る日も、来る日も来る日も空を見上げ、
優秀な助手のみちびきで、
ついにたった数度だけ、この木立の上にその暗い星を、はじめて認めたのだ。
羽根田・カンポス彗星はその後何度か回帰しているはずだが、1978年のこの発見以来、見つかっていないという。