
まとめ: iStar 140mm F6.5 triplet binoを作る
Nさん
で始まるリリカルな文章にやられた、数十年後の話。

“Nさん いよいよお小づかいがたまって望遠鏡を作られるとのこと。よかったですね。一所けん命に小づかいをためて望遠鏡を作り、星をのぞくよろこび。Nさん これは星を愛する者にとって最高のよろこびでしょう”
p. 45
レンズ入手
アメリカのiStar Opticalが、HOYAのFCD100とランタン系硝材を使った140mm、F6.5の3枚玉対物レンズセルを販売していて、これが結構良いらしい(https://www.cloudynights.com/articles/cat/user-reviews/istar-optical’s-phantom-fcl-140-65-review-r3330; https://istarscopeclub.proboards.com/thread/735/new-140mm-apo-triplet-tests)。これを使ってbinoを作るべく、2021年の9月にレンズを入手した。binoにするので同じロットの2枚が欲しい、とAles氏に問い合わせると、ロット違いだけどちょうど残り2枚だよ、”there are no design changes in the lens cell”で”The focal length will be very very close”だから大丈夫、次は半年以上先だよ、と言われ、買ってしまった。とはいえ、次ロットは500$/枚ほど高くなったので、決断してよかったのだろう。


fluoriteの表記や、セル、同じじゃないやん、ということで色々心配になるが、ここはたぶん、大体でやり過ごせばいいのだろう。




準備されているので購入
フォーカサはどうする
Borg10cm binoの対物レンズを110mm F7 EDレンズに換装する時、国内でレンズだけ買う値段に少しプラスすると、3インチフォーカサ付きの鏡筒一式が買えたので、いつか来る日のために、それを買っておいた。フォーカサとアリガタはそこから外して使うことにした。というより、これがあったから、レンズを買った。
フォーカサのネジを利用して、カメラ用のφ15mmのカーボンロッドの操作ハンドルを取り付けることにした。アルミ台座はいつものアルミプラスさん。アルマイトはコーケンさん。黒一色で単調なので、ワンポイントのシャンパンゴールドで。ロッドクランプはsmallrigのもの。片方のフォーカスノブは左右を入れ替えて、右用と左用に。


ロッドクランプの位置がずれてしまった
アダプタを準備する
この辺りで松本さんとカーボンパイプの業者さん(ホーペックさん)に相談。パイプは外径145mm、内径140mmに決定。これが決まれば鏡筒部との接続アダプタの設計が決まる。内径が小さいので、対物側はパイプの外側でねじ止めにする。フォーカサ側は内側にねじ止め。対物の重さ(2.8kg)のカウンターウェイトの役割もさせるために、アダプタの内径を小さくして、重めにしておいた。アダプタはいつものコスモ工房さん。

パイプへはM5ネジ3点止め

ところが、片方のクレイフォードフォーカサのステンレス板が引っかかってフォーカサがアダプタに取り付かない。アダプタを追加工か、と焦ったが、ステンレス板の下にはプラスチックのスペーサーが入っていて、これを外して、ステンレス板のエッジをヤスリで削ってなんとか収まった。

取り付かない。。
パイプを発注
ここまで決まればパイプの長さを決められる。フォーカサの繰り出しが標準的なアイピースで35mmほどになるように、パイプ部は525mmに決定。パイプとアダプタを接続するためのネジ穴の位置は決められるが、キャリーハンドルとアリガタを取り付けるための穴は前後のバランスを見て決めなければいけない。アダプタ用の穴を開けてもらっていったん送ってもらい、対物レンズ、アダプタ、フォーカサ、EMS、アイピースをつけた状態でバランスをみて、穴位置を決めてから送り返して穴を開けてもらった。この辺り、細かい対応をいただいたホーペックさんに感謝。もう1つ相談していたところは、ややこしい素人が来た、ということだろう、途中で断られた。加工する側の立場からは、無理もないか。

EMSと中軸架台が到着
2022年の2月末に、EMS-UXLと中軸架台が到着。フォーカサのバレルがφ90mmよりもわずかに狭く、EMSのバレルを削っていただいた。ここで全体を仮組みして、キャリーハンドルとアリガタ取り付け用の穴位置を確定。穴あけ依頼のためにパイプは再びホーペックさんへ。

フードと対物キャップを作る
パイプが来るまでさらに1ヶ月かかるので、この間にフードと対物キャップを作ることにした。ここが一番自作らしい自作。
フードは植毛紙、塩ビシート(t=0.2mm)、カッティングシートの3層構造。コリメーションリングに会うように塩ビシートを丸めた。突き合わせ面は斜めにしておくと、そこが尖って不細工な形にならないことを知る。

枠とフードのクランプには刺繍枠を使うことにした。内側の枠をつや消し黒で塗装してカットし、C型のリングに。外側の枠はニス塗りで保護。

色々なサイズがある

外側にカッティングシート(中川ケミカル、カーボンマット)を貼り、端は切り込みを入れて内側に折り込んだ。

内側に植毛紙を貼り、上部内側にCリングを入れ、おさえにする。これできれいな円形が保たれる。一個100gの超軽量。


径が少し大きいのでスポンジのスペーサを入れた
対物キャップは5mmのスチレンボードを円形カッターで切り出し、重ねて把手をつけて作成。

パイプ完成
パイプの最終穴あけとクリア塗装が終わって返ってきたのが4月上旬。早速仮組みしてみた。


キャリーハンドルとアリガタは15mm幅のアルミバーで固定。これもアルミプラスさん。



ビクセンファインダ脚規格のアリミゾになっている
迷光防止処理をする
鏡筒パイプの内径140mmは、塩ビパイプ・VU 125管の外径と同じ。カットマンさんで10mm長さに切ってもらい、カットしてC型リングを作り、遮光環押さえにした。遮光環は0.5mm厚の低発砲塩ビ板を切り出し、つや消し塗装。



植毛紙貼りはBorgの植毛紙の貼り方を参考に。植毛紙を塩ビシート(t=0.2mm)に貼り、必要な長さに切り出す。塩ビよりPPシート(クリアファイルの素材)の方が硬さがいい感じか。




ハート型にして


この後切り込みの位置が間違っていることに気づき、切ったり貼ったりして修正



調整
アリガタの取り付けを調整し、デジタル傾斜計で0.1度の単位でY軸の光軸が揃ったところで、まだこれくらいのずれがある。

松本さんに教えていただいた、中軸架台のアリミゾの爪のボルトを少し緩めて軽く叩く、という調整で、以下のレベルまで調整。

完成
キャー!かっこいい。三脚はBaader PlanetariumのT-POD。しっかりしていて安心。フード押さえリングもアクセントになっていてよいのでは。





必要な個数をスタックできる


主に窓際に置いて使うので今のところ充分

貼り付けてキャリーハンドルに搭載


遠征へ。キャー!かっこいい。。
