『あのこは貴族』レビュー
アマプラで視聴。久々にすごく面白かった。
東京生まれのお嬢様と、名門大学入学をきっかけに地方から上京したOLとの対比を描いた作品。
現代でも存在する見えない階級が描かれていて良いです。
お金持ちというと、ITベンチャーや投資で成り上がった人たちや、そこに群がる港区女子なんかがメディアでよく取り上げられるけど、本物の上流階級というのは、普段はあまり見かけません。
旧華族に属する家系とか、幕末や明治から続く豪商の家系なんかがその代表格ですが(いわゆる旧財閥系ですね)、その種の金持ちは、お金があることをアピールしたりしないから(←デメリットしかない)、我々庶民には存在が見えにくいけど、日本の中枢を牛耳ってるのはそういう家柄の人たちの割合が多いです(その種の人たちで可視化されやすいのは世襲議員ですね)。
以下ネタバレ的な内容あるかも
本作の第1章では、そういう良家の子女である華子(門脇麦)の家族関係や見合いのエピソードなどが描かれる。
渋谷の松濤に家を構える上流家庭の生活(例えば正月に帝国ホテルのレストランのひと間を貸し切って開催される新年会など)が面白く見れます。
第2章は、地方の一般家庭で育った美紀(水原希子)の大学生活。
死ぬほど勉強して東京の有名私立大学に入ったものの、本物の上流階級と育ちの違いを感じる。
面白いのは、大学受験で慶應に入った美紀(水原希子)が、幼稚舎から在学している"内部生"との格差に唖然とするシーン。
ちょっとお茶でもしようと誘われて行ってみたら、高級ホテルのアフタヌーンティだったりして場違いな気分を味わう。会話も合わない。
実家から経済的な援助が受けられなくなり、キャバクラで学費を稼ごうとするも、結局、中退してしまう。
第3章は、華子(門脇麦)が義兄の紹介で知り合った相手、幸一郎(高良健吾)と交際し、結婚に発展する様子が描かれる。
幸一郎の実家の家格は華子の家よりもさらに上で(親戚には議員もいる)、結婚の承諾を得るため相手の実家に出向く。
その際、自分の経歴を調べるため事前に興信所の調査が入っていたことに華子は驚く。
こういうの、皇族や一部の上層家系では本当にやるんでしょうね。
小室圭さんの場合、どうだったか知りませんが🙄
華子(門脇麦)と美紀(水原希子)が出会うシーン、レストランで美紀がカトラリを落とした際、華子はサッと手を上げて給仕を呼ぶ。
拾わせるのは当たり前で、そこには嫌味もマウントもまったくなく、品の良い令嬢として当然の振る舞いがある。
門脇麦さんは女優ですね。
育ちの良さなんて、出そうと思って出せるものではないと思うのだけど、所作は令嬢そのもの。
というか、本当にお嬢様なんじゃないかなぁ。
じゃないと、あそこまでリアルな雰囲気は出せない気がします。
美紀(水原希子)は、慶應時代にキャンパスでノートを貸した縁で、華子の婚約者(幸一郎)と繋がっていた。
いわばセフレで、交際はしていなかった。
幸一郎は、華子とは半年で婚約したけど、地方の一般家庭出身の美紀とは(友情を育みながらも)ずっと一線を引いていたんですね。
そこに悪意はない。
これは「家を継ぐ」という運命を背負った男の宿命であって、そこには哀愁すら漂っており、だから幸一郎は決して悪く描かれてないんです。
この映画には悪者は1人も出てこなくて、階級差のある人間関係を相対的に描いている。
善悪で色付けしない人間関係を面白く描く作品が好きです。
もう本当に面白くて、久々に良い作品を観ました。
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