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界の軌跡世界観考察~忘れられない、旅になる①~
本稿はストーリーRPG《界の軌跡-Farewell, O Zemuria-》ネタバレ全開感想考察の記事の一つになります。
《界》で語りたいことは相当に多く、単なる感想からキャラクター考察、世界観考察まで幅広くあります。
今回は物語の軸である世界観の謎や、ストーリーの行く末そのものについて考察していこうかと思います。とにかく情報と考察(妄想)が膨大です。是非お付き合いください!
《界の軌跡》の記事一覧
発売前考察(諸々勝手に妄想考察してみた記事)
クリア後感想(重要なネタバレなしの感想)
リィンルート感想(キャラ及びストーリー考察)
ケビンルート感想(キャラ及びストーリー考察)
ヴァンルート考察(キャラ及びストーリー考察)
キャラクター考察(キャラの心情を中心に考察)
世界観考察(終盤の重要なことなど全開な考察)×2
記事ごとに差はあれど、①②を除いては重要なネタバレが全開なので注意してください!
なお、この世界観考察の記事は文章量が多すぎたため前半①と後半②に分けました。
0.全編目次
前半①(本記事)
1.初登場した七の至宝
2.聖獣の正体を計算する
3.至宝を受け継ぐ一族について
4.至宝が存在する場所について
5.星空と虚空について~リィン・クロウ・エミリア~
6.《永劫回帰計画》の全容
7.《Farewell, O Zemuria》を考える
後半②
8.《ループ》現象を定義する
9.リゼットのいた世界
10.《黄昏》と《夜明け》
11.謎はまだ残されている
12.忘れられない、旅になる
1.初登場した七の至宝
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さあ、共和国編においてはじめて、そして閃Ⅳ以降4作ぶりに登場した《刻の至宝》です。その他の至宝も合わせて整理します。
さらに、そうやって整理することで不明な部分も出てきています。
・情報整理と補足
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補足:
水・風:未だ一切情報不明。
《輝く環》:一族はアウスレーゼ家……と書こうとしたのですが、考えてみればアウスレーゼ家は輝く環を封印しようとした封印機構のリーダーであって、受け継いだ一派かどうかは謎でした(情報求む)。
《大イナル一》:《鋼》。地と火の融合の果て。現実では《騎神》として存在していた。
《零の至宝》:クロイス家が妄執の果てに生み出した人工の至宝とでも言うべき存在。
・至宝の情報についての雑感
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至宝及び至宝に連なる存在の情報としては、このあたりが出そろった感じでしょうか。
こういう細かいところを気にしてしまう人間としては、やはりいくつか気になるところがあるのです。
まず、今まで出てきた4つの至宝は《和名(カタカナ英語)》だったのですが、今回は《レーギャルンの匣》。カタカナ英語《レーギャルン》と和名《匣》がミックスされています。
存在している(いた)場所は共和国-宇宙にある。かつて大崩壊の前、地火は帝国の地で激突し、空はリベールのヴァレリア湖上空の浮遊都市で、幻はクロスベルの地でその威光を発揮させていた。刻(時)は宇宙。今までとは一線を画している。
2.聖獣の正体を計算する
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『刻の至宝の聖獣はメアなんじゃないか?』というものを、黎Ⅰの頃からよく聞いていました。物語の途中なのでわからなくても仕方ありませんが、刻は聖獣が明らかとなっていない。
地・火・幻は物語の開始までに『至宝をめぐる人間の選択に関与しない(意訳)』という古の盟約がとかれて解かれていたので、ツァイトもローゼリアも積極的に力を貸していました(アルグレスは黒の聖獣と化した)。
そして時は《空の軌跡》物語の途中と同じく現在も至宝(空・刻)が駆動しているので盟約を破らない限りは力を貸すことはできません。故に積極的に姿を見せることもない。
こうなるとメアが聖獣であるというのは、盟約を真面目に受け取るなら否定されるような気もしますし、はたまたメアという概念が聖獣の眷属のような純粋な存在でないのなら可能であるかもしれない、と言えるような気がします。
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いや、違うな……。
考察を書くにあたり、書く前にぼんやり書く方針を決めているものもあれば、前回のグラムハート大統領の記事みたいに『書いているうちに本当に今この言葉や考えが降って湧いてきた』ということがたまにあるのですが。
今思いつきました。
仮に『メアが本当に刻の聖獣であり、ヴァンに力を貸している』というのが正しい場合。
すでに古の盟約は解かれているということになる。
だとしたら、もはやヴァンたちが過ごしている《今》そのものの方が、偽物なんでしょうね。
聖獣にとっての《今》、つまり《悪夢というヴァン達の現実》に対しての《聖獣にとっての現実》が、ループでない本当の世界線。
よし、ループの言葉が出てきたので次に進みます!
※聖獣といえば、碧のマスターアーツである《各種ルーン》発動時に見れるカードの絵柄が気になるのですが、参考資料がないので飛ばします。
3.至宝を受け継ぐ一族について
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聖獣と同じくわからなくても仕方のないことですが、至宝を受け継ぐ一派もまだ不明です。
ただし、今回は今まで出てきた5至宝の中でも例外が多い。
さっきの情報整理に反して空の一派をアウスレーゼ家とした場合(封印機構もリベル=アークの住人だったのであながち間違いじゃない?)ですが、空は一派が至宝を封印するという選択をした。地・火・幻の作中での動向は、どれも消滅・融合した後の話です。
刻だけが、唯一至宝が大崩壊以前と変わらずに駆動しているのです。こうなると、
刻の一族は今も至宝の行く末を見守っている。
刻の一族は衰退し、至宝だけが意思もなく駆動し続けている。
これらの可能性があるように感じます。
一方で「エプスタイン博士やクローデルの一族が至宝の一派なのでは?」という考察も見受けられ、それは可能性として「確かに」と思う一方で「ちょっとおかしくないか?」という疑問も浮かびます。
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本来、至宝は人々の望みをそれぞれの力をもって叶えるための古代遺物であるはずです。幻は人格があったために消滅し、空・地・火は人の想定を超えた悲劇的な結果になったとはいえ、その根本は変わっていません。
ならば《レーギャルンの匣》も同じように刻の一族の願いに応じて(それが人々の想定と違ったとしても)それを叶えるために動き続けているはずなのです。そうした結果が、この2万回に届こうとしているループなのかもしれない。
《レーギャルンの匣》が刻の一族とは違う意思を受けて暴走しているなら話は別ですが、クローデル家が刻の一族なのだとしたら、素直に至宝に対して願えばいい。
それができないクローデル家は、やはり単なる至宝の一族とも違うように感じます。
ただし、この考えもやはり《ループ》という概念が邪魔をします。
なぜなら《ループ》があるということは、《界》で描かれた世界線のクローデル家は《至宝の一族のループ結果》であって《至宝の一族そのもの》ではないということになるから。
なので可能性としては。
《本物のクローデル家》が刻の至宝を受け継いだ一族である。
至宝を受け継いだ一族は他にいて、《本物のクローデル家》は現状を回避するためにループ世界に《タイプ:クローデル》という細工を施した。
これらならば、自分の中では少し納得ができたような気がしました。
4.至宝が存在する場所について
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情報整理の雑感で書いた「宇宙に至宝がある」ということについての違和感です。
新作で例外や新設定が明らかにならない限り、至宝は『女神が古代人に遣わしたもの』であることには変わりない。
それを基に古代ゼムリア人は七派に分かれたということですが、なぜ《レーギャルンの匣》だけが宇宙空間(宇宙と言えるのかわかりませんが)にあるのか。
いや、正確に言えば《レーギャルンの匣》はちゃんとゼムリア大陸上にあるのかもしれない。だって、そもそも宇宙空間にあったあの匣が本物かどうかもわかんないし……
5.星空と虚空について~リィン・クロウ・エミリア~
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《レーギャルンの匣》から少し離れて、より世界観と言えるべきゼムリア大陸の外側についてです。
今回、エミリアの宇宙進出やリィンたちの天体観測によって、『星も月も太陽もない。空にはただ虚空が広がっているだけ』という真実が明らかになりました。
疑問は3つです。
①どうしてリィンとクロウはそれが視えるようになった?
②エミリアが視たことで他者がそれを認識できるようになったのはどういう理屈?
③もしハミルトン博士が細工をしなかったら、人々の眼に空はどのように映っていた?
①もしもの世界を知るリィンとクロウ
まず前提として、この世界のリィンとクロウはスターダストシュバルツァーなんてことはしていません。
え、スターダストシュバルツァー? 自己犠牲が目立つシュバルツァーの星屑特攻ですよ。
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また、『もし大地の聖獣の檻がなければそうなっていた』と発覚したのは、クロスベル再事変にて明らかになった《可能性》でした。リィンの場合、エリュシオンが観測したイシュメルガ=リィンと共鳴したので、現在のリィンの中にその残滓が残っていた、だからまるで枷が外れたようにその景色が視えた──とは言えるのですが、クロウにその理屈は通じない。
二人の共通点は『古代遺物≒女神の至宝≒《鋼》≒騎神』の搭乗者となったという点です。この場合、現在の世界ではセドリックとルーファスも当てはまりますね。
逆にクロウにあってリィンにないのは、クロウが一度本当に死亡したという事実。この世の輪廻から解き放たれたという意味では、むしろリィンよりも異質かもしれない。そしてミリアムもそれに当てはまる。
いずれにしても謎なのは……『望遠鏡ではなく肉眼で普通に見る分には、星空は星空のままである』という所です。
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こんな事実関係なわけなのですが、なんかちょっと疑問に思ってしまう。
望遠鏡については、ハミルトン博士の細工『アルターコアによって世界中の望遠鏡で星空がみえるように詐欺を起こした』という事実が明らかになっているので、フィーたちが望遠鏡で見る景色が星空なのは納得します。そしてリィンたちを仮に『過去の経験によって枷のようなものが外れた』と仮定するなら、望遠鏡で虚空なのもまだわかる。
なのに、どうして『実際に虚空が広がっている空を、望遠鏡の細工も関係ない肉眼で見ているはずなのに星空が視える』のか?
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こうなると、望遠鏡に施した細工やリィンたちの眼というものを、深く考えなければならなくなるのです。
この謎は次の②と③に続きます。
②エミリアの宇宙進出、《匣の中の猫》
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ハミルトン博士が界序盤の回想シーンで語っていた《匣の中の猫》。《レーヴァテイン》《レーギャルン》といった神話に疎い私ですが、《箱の中の猫》ならば多少は語ることができるかもしれません。
私たちプレイヤーの現実では《シュレディンガーの猫》と言うべきでしょう。哲学や量子物理学の話で、『箱の中にいる猫について、私たちが実際に箱を開けてそれを観測するまで、そこには《猫がいる可能性》と《猫がいない・死亡している可能性》が同時に存在している』とか、たしかそんな感じの話だったはずです。
事実を観測するまでは、複数の可能性が同時に存在している。
ルネも《界》最終幕で似た思考に基づいたことをしていましたね。ゲネシスがそこに《ある可能性》と《ない可能性》を重ね掛けした、と。つまり、あの時ゲネシスがそこにあるかないかはまだ《観測されていなかった事象だった≒今までどのループでも得られなかった観測だった》というわけですか……? なるほどなるほど……。
まあルネの話は置いておいて。ここではエミリアの話をしたいと思います。
エミリアは宇宙進出の時、『ゼムリアが本当に存在するのかどうか』にすら不安を覚えていました。
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何をもって存在しているのかを実感したのかはわかりませんが、それを見て安心した。
そしてエミリアが虚空を観測したことで、その事実が映像を見ていた人々(正確には一部の核心に迫っている人物たち)には真実の虚空がみえるようになった。
これは《匣の中の猫》、《シュレディンガーの猫》を意識した描写のように感じます。まあ、ゼムリアの場合は自分たち自身が猫のような立場かもしれないという皮肉はありますが。
『エミリアが宇宙にたどり着いたことで虚空を認識できた』という理屈はリィンたちの可能性を考えれば、理解できるのですが……
じゃあ、どうしてそれによって実際に虚空を視ていないヴァンたちが虚空を認識できるようになったのか?
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リィンとクロウが虚空を視ても、近くにいたフィーたちは同じ景色は視えなかった。距離や、仲間意識や、人種といったもので見えるようになるわけじゃない。
ヴァンたちが視ていた映像はエミリアが視た映像、あるいはエクスキャリバーを通してみた映像なわけですが……
以前の考察で『データ化された国土というシステム』というでも書いたのですが、やはりこのゼムリア世界はどこかシステマチックなデータ的な概念が働いていて、それがエミリアの眼で視たものを他の者も視れるようになったということの理由付けになっているような気がするのです。
③ハミルトン博士の考察と世界の真実
では、ハミルトン博士がアルターコアで行っていた世界に働いたペテンとは何なのでしょうか。
もちろん描写からして『虚空を視えなくして星空が視えるようにしていた』というのがそうだとは思うのですが。
アルターコアを起点にしたペテンは、《界》で暴かれたのは2つ。一つはサルバットの利水工事で、およそ20年前から。そしてもう一つが星空と虚空で、これも20年前くらいでしたか。
アルターコアはゲネシスの模造品。そしてゲネシスの機能は予想はできても確定ではなく、《レーギャルンの匣》へのハッキングが8つの主目的、それに付随する形での様々な現象を引き起こしている。アルターコアは跳躍(シフト)と呼ばれる現象、現実変容などを引き起こしている。
こう考えると、アルターコアが望遠鏡に干渉して起こしたのは偽造映像を見せたというより、『変容した光景を見せている』という方がいいのかもしれません。
そして……リィンとクロウの疑問に戻りますが、そうなるとリィンとクロウはアルターコアの現実変容が通用しなかった、とも言えるのかもしれない。
でも、それでもやっぱり、肉眼で星空がみえる理由には納得がいかない……。
うーん、だめだ……もう何が偽物で何が本物なのか、仮定と例外が入り混じって何が何だか……。
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うん、わからないものはわからない!!
6.《永劫回帰計画》の全容
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第1段階《福音計画》は空の至宝《輝く環》に対するもの。
第2段階《幻焔計画》は幻の至宝に連なる計画を持って、焔と大地の二至宝が融合した《鋼》に対するもの。
これを法則として考えるならば、第3段階《永劫回帰計画》は時の至宝に関するものとして間違いない。
基本的に結社は、その計画を持って至宝に対し何かしらの働きかけをすることが多く、『至宝を使って野望を叶える』みたいな安直な計画だったことはありませんでした。
とはいえ、まだ時の至宝は生きている。《空》のように管理下に置くわけでも《鋼》のように消滅やそれに近い現象を狙うのであれば、むしろ大統領のように《匣》を壊す方の計画に賛同することも手としてあり得たかもしれない。そんな矛盾があるので、《永劫回帰計画》の本懐がなんなのか、と言うことはまだわかりません。
なので『結局今回の計画の主旨はなんなんだよ』と思った時、現時点で参考にできるのがノバルティス博士黒の庭城第九領域での言動なのかな、と考えました。この考察はノバルティス博士の考察記事を書いているときに思いついたものです。
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これは恐らく水か風の至宝を受け継いだ一族《ヴァリス五名家》が使う古代遺物!
そしてサルバッドにいたショタとロリの金持ちカップルはきっとその名家に連なる家柄!
(適当です)
ノバルティス博士は結社の使徒であるにも関わらず計画を理解出来なかった(それはワイスマンも同様でしたが)。そして自身の記憶の確定によって自分の前回ループの存在を確定させ、それによって「永劫回帰計画の全容を理解した」と言っていました。
「至宝の消滅≒至宝の影響の消滅」を狙うなら、『永劫回帰≒永劫に回帰し続ける』ともとれる計画名となるのか?
それとも大統領の計画に賛同してループを打ち破ることで『永劫の回帰から脱出する』計画なのか?
ノバルティス博士の言動、今までの結社の至宝に対するスタンス。そしてここからは私の言葉遊びですが、それらを考えると、こんな計画の主旨もあるように感じます。
『遥か永劫の彼方に存在する原点に回帰する』計画。
第1から第19999期、及び20000期。それらすべてを飛び越えた、オリジナルへの帰還。
描写を見る限り、ループというのは『リィンが黄昏で生き延びたか否か』みたいな結果や選択過程の相違の設定の集まりであって、例えば『リィンの生まれる場所・生まれる家庭が違っていた』みたいな全くのランダム性の高いものではないと思います。
ノバルティス博士が今回黒の庭城を好き勝手したことで得られたのは全体の数万分の一の情報量に過ぎません(確か0.002%だったでしょうか)。それでも、一つの情報が確かに存在するのなら、その他の情報も存在することに疑いはない。
『エプスタイン博士の弟子』の件はノバルティス博士にとって重要でも、きっと計画においては些細なこと。ノバルティス博士が感じたこの情報と永劫回帰計画との関係は、ループ現象そのものにある。そしてループ現象において第1~19999期(最初から今回のループ)の情報は全く関係ない。必要なのはループ元の情報。
もちろん単なる妄想考察ではありますが、一つの案として、軌跡シリーズの次回作を待ちたいと思います。
7.《Farewell, O Zemuria》を考える
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《界》の全容が明らかになった今、改めてサブタイトルについて考えます。
Farewellは「さよなら」、Zemuriaは「ゼムリア」、そして《O》が謎です。
今回の物語を見ると、この「さよなら」はアニエスが言っているとか、あるいはメタ的なプレイヤーやファルコムたち開発陣の「今までのゼムリアにさようなら」というのもわかる。
《O》はなんなのでしょうか。
《界》のCMなんかでは「ふぇあうぇる・おー・ぜむりあ」というように読んでいるので、《O》がローマ字の《O》であることはまず間違いない。
デザイン的には永劫回帰計画やループという言葉にもみられるような輪となっています。
例によって考察はあくまで考察ですし、妄想もあるので、一つ仕込んでみようかと思います。
それは《Farewell, Original Zemuria》と言うことで、『さよなら、オリジナル(根源)のゼムリア』ということです。あれ、これOZじゃね?
オリジナルのゼムリア。根源のゼムリア。これは後述するループ現象で語ろうかと思います。
つまり。オリジナル、原初のゼムリアと別れを告げて、今のループにいる仮初の自分たちが独立する、と言うこと。
上に書いた永劫回帰計画の可能性の一つ、『永劫の回帰から脱出する』という点にも、被るかもしれません。
↓後半②に続きます!
↓の軌跡シリーズ考察集・界の軌跡考察集も是非!
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