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界の軌跡リィンルート感想~星の在り処を探して~

 本稿はストーリーRPG《界の軌跡-Farewell, O Zemuria-》ネタバレ全開感想考察の記事の一つになります。
 《界》で語りたいことは相当に多く、単なる感想からキャラクター考察、世界観考察まで幅広くあります。
 今回はその中でも、物語の一部を占める《リィンルート》を中心に、そこに関わる諸々を自由にあることないこと語っていこうかと思います。

《界の軌跡》の記事一覧

  1. 発売前考察(諸々勝手に妄想考察してみた記事)

  2. クリア後感想(重要なネタバレなしの感想)

  3. リィンルート感想(キャラ及びストーリー感想)

  4. ケビンルート感想(キャラ及びストーリー感想)

  5. ヴァンルート考察(キャラ及びストーリー考察)

  6. キャラクター考察(キャラの心情を中心に考察)

  7. 世界観考察(終盤の重要なことなど全開な考察)

 記事ごとに差はあれど、①②を除いては重要なネタバレが全開なので注意してください!


1.リィンルートのおさらい

 そもそも、リィンは閃の軌跡4部作の主人公であり、創の軌跡の3主人公の一人でもありました。

閃の軌跡Ⅳスタート画面《閃の終刃+Ⅶ組、反攻》
正しいイラストタイトルってあるのでしょうか?

 共和国とかつて覇権を争っていたエレボニア帝国出身の青年。帝国編では当時の宰相ギリアス・オズボーンの策略に端を発する平民勢力と貴族勢力の争い、そして帝国全体と世界全体の争いが描かれ、リィンは主人公として仲間と共に、第3勢力とも言えない道を模索しあがき、世界全体を巻き込む騒乱を、表の戦争・裏の古代の至宝に関わる陰謀双方含めて解決に導いた英雄の一人です。
 リィンは元々自戒的な性格で、しかも身に巣くう異能もあり、常に「自分なんか」という性質もあった。ただし閃の軌跡~創の軌跡までの物語によって、自分の中の異能という呪いに決着をつけ、自戒的な性格はそのままに自信もつけ、「俺なんか」は薄くなり、剣士としても軌跡の最強格の代名詞である《剣聖》の異名を名乗れるまでに成長しました。

 ※そんなリィンの半生を心理考察した記事も書いているので、よければご参考までに。

 そんなリィンに残されている課題は一つ──八葉を完成させることです。

2.《灰の剣聖》リィン・シュバルツァーの新たな課題

イケメンになったなぁ

 リィンが共和国で活動する理由と言うのはほとんどありません。何といっても帝国の英雄にして士官学院の教官ですし。え、トワ? トワトワしてきた。
 ただし元々帝国で運用されているアサルトフレームの前世代機のようなものの搭乗者でもあるので、《界》の主題である宇宙計画に噛める理由も確かにあります。
 それ以上に、リィンは剣仙ユン・カーファイから「八葉を真に完成させる人間」として選ばれた。

 リィンは主人公としての後ろめたい課題はもう終わっています。《界》のリィンを見れば、明らかに主人公──迷う人間としての役割は薄く感じる。
 ただし、リィンはあの激動の時代を経て、《貴族派VS革新派》→《帝国VS世界》→《現在の世界そのもの》まで物事を考える段階にきている。
 とあれば、強者として主人公たちである裏解決屋の隣で、かつて偽塩の杭を振り払ったエステル・ロイドたちのように、ヴァンたちではつかみきれない世界の真実を別の角度から掴むのがリィンの課題となるのではないか。

3.ユン・カーファイと八葉・黒神

 では、そもそもリィンに使命とも言える八葉の完成をユン・カーファイは、そして彼が関わる剣の道はなんなのか。

①ユン・カーファイ

 異名は剣仙。白髪に豊かな白髭を貯える老人にして、《剣聖》《風の剣聖》《灰の剣聖》を指南し、《光の剣匠》を始めとする数々の化け物とタイマンを張り、未来を見透かすような言動や行動が目立つ、軌跡シリーズのSCだか3rdくらいに名前が出ながら《界》まで出ることもなかった謎多き人物。
 シズナも所属する大陸東部の猟兵団《斑鳩》の先代頭領でもあり、そこを抜けた後に八葉の開祖となり、その前後に孫であるアネラス・エルフィードに連なる縁も生んでいます。

②八葉一刀流

 ユン老師が興した東方剣術。奥義皆伝、《剣聖》になれば理に至るとも称される流派。

  1. 壱:螺旋

  2. 弐:疾風

  3. 参:業炎撃

  4. 肆:紅葉斬り

  5. 伍:残月

  6. 陸:緋空斬

  7. 漆:無

  8. 捌:無手

八葉に連なる剣士たち
  • 《剣仙》ユン・カーファイ:開祖。

  • 《剣聖》カシウス・ブライト:リベール。弟子や指導した人物にリシャール(R&A)、ユリア(王室親衛隊)、シード(王国軍)、エステル(娘)、ヨシュア(義息子)、シェラザード(後輩)など。

  • 《風の剣聖》アリオス・マクレイン:クロスベル。弟子はいないが、特務支援課に多大な影響を与える。

  • 《灰の剣聖》リィン・シュバルツァー:帝国。仲間としてⅦ組に、教官として分校に、その他仲間への影響は大。

③黒神一刀流

創の軌跡の、まだ性格もわからなかった頃のシズナ姫

 老師の元々の流派、と言ってよいのでしょうか。老師の他に現状はシズナが扱うのみ。八葉が光の剣、黒神が闇の剣とも称されていて、八葉は只人でも習得可能な黒神として八葉を開いた。

4.ユン・カーファイという人間の縁

①八葉の影響

 言うまでもなくまだ老師の全容は明らかではありませんが……
 天元眼とも称される先読みを考えると、どうしたって《枷》を外しているような気がしてなりません。
 今回の《界》の真相を考えると、老師がカシウスからリィンまでのそれぞれの人間を《剣聖》にまで導いたのは意図した理由があるからのように思える。
 軌跡シリーズは英雄《たち》の物語なので、1人がいないからすべてが終わりだというのも嫌な話ではありますが……

  • カシウスが理に至らなかったら百日戦役はどうなっていた?

  • リシャールが育たなかったら、カシウスは軍から離れていた?

  • アリオスがいなかったら、クロスベルの遊撃士の人気はどうなっていた?

  • アリオス・ガイ・セルゲイの《伝説の班》がなかったら、特務支援課は生まれていた?

  • アリオスが壁として特務支援課に立ちはだかることがなかったら?

  • リィンが鬼の力を暴走させていたら?

 影響は無限大、しかも空の旅路、クロスベルの動乱、帝国の呪いのすべてが嫌な方向に変わるとしか思えないのです。しかもその一部は共和国にすら影響を及ぼしていますし。
 そうなると、老師の軌跡は今回のことを見越したものと思えてくる。そもそも《回天》と言っていますし、その言い伝えが斑鳩にも伝わっているらしい。

 あと気になるのは《八》葉であると言うことでしょうか。
 昔から七属性、Ⅶ組という《7》の枠組みが多いなぁとも思っていたのですが。
 7の次の8になにか意味があるのだろうかと考えたりして、「ゲネシスってなんで7つじゃなくて8つなんだ?」とも考えていたことを思い出しました。

 え、ゲネシスの謎に関わるから八葉なの? 七属性に縛られたこのゼムリアから一歩進むために?

②シズナとクウガ:血と縁がもたらすもの

イケメンだなぁ

 朧月流の使い手にしてシズナの下としての活躍が目立っていたクロガネ。
 事前PVでその素顔が見えるというのはわかっていたのですが、まさか老師と親戚関係にあるとは思いませんでした。
 斑鳩の先代頭領ユン・カーファイを中心とすると、その甥(兄弟の子)ジオン・カーファイが現頭領であり、ジオンの一子がクウガである。さらにシズナが特にカーファイ性を関りがない中で副頭領となっていることを考えると、ちょっと複雑な関係性も見えてくる可能性もあります。
 クロガネ──クウガの初出情報はそれだけですが、ちょっと興奮しました。

 同時、シズナについてもいくつか明らかになってきています。
 リィンとシズナの一騎打ちの中で、リィンの「何故貴女はそこまでの境地に」という問に対して、シズナは「老師は私が世界を壊させないように黒神を教えた」と言いました。そして「滅びの剣聖」というワードも。

諸々を考えれば、黒神が老師の素であり、老師が画策した結果が八葉にある。
八葉は人がある境地に至れるための剣。
リィンは人の身に鬼の異能を宿し、八葉を振るって人として力を御した。
なら、黒神を振るうシズナは……?

 世界の終わり。終わりの聖女。滅びの剣聖。クルガの使命。エプスタインの予言。
 うん、同じ方向性のフラグがどんどん積み上がっているような気がする。

 そしてシズナとヴァンのコネクトイベントで見せた、まるでリィンの真なる贄としての暴走状態と同じようなシズナの状態であったり、幼少期のシズナが何かを犯してしまったしまったような一枚絵。
 どのような形でかはわかりませんが、リィンの状態を考えれば「自分を律さなければシズナが世界を壊してしまう」というのは納得できる。シズナもまたマクバーンの言う「混じっている状態」に近いものがあるのかもしれない。
 逆に疑問なのは、似たような状況のシズナとリィンに対して、シズナは只人ではたどり着けない黒神を、リィンは只人が理に至れる八葉を授けられた、ということ。
 そしてシズナが黎Ⅱで言っていた「八葉・黒神だけが大陸東部へとたどり着ける」という言葉は、リィンに主人公ではなく世界の核心に迫る強者としての役割を与えたように感じます。
 リィン自身は主人公属性がモリモリではありますが、本質的にはたくさんの英雄の中の一人なのです。

 黒神一刀流によってシズナという世界を壊しかねない爆弾を抑えても、それでも世界は救うことができない。だからこそ、ユン・カーファイは……理に至りながらもたった一人の力強い英雄ではなく、大勢の中の一人として、時に間違いを犯し、時に誰かを導き、そして重心となる《剣聖》を育てた……のかもしれません。
 そうして重心となったリィンが、ついでに言えばカシウスの連なりによって影の国を乗り越えたケビンが、主人公ではない、けれど英雄となりえる軌跡の一技として共和国編にやってきた。

 ユン・カーファイの《保険》としてのリィンの軌跡。でもリィンが劇中でフィーやアルティナの怒りを諫めたように、例え意図した激動であっても、それはリィンにとって価値ある旅路だった。

 リィンルートのキーワードは《天蓋の外側》そして《回天》

 回天は、時勢を一変させること、衰えた勢いを盛り返すことの意。
 イメージとしては、文字通り天地がひっくり返るほどの衝撃なのでしょう。実際、《界》のラストではそれだけの事が起こりました。
 実際、リィンもクロウも望遠鏡で例の景色を見てしまった。今まで本物だと思えるものが、本物ではないかもしれなくなった。
 それでも、たとえ偽物だとしても、それを見た感動は本物であることに疑いはない
 そんな星の在り処を探すリィンたち。それが界の軌跡のリィンルートだったと思うのです。

 その他の感想考察も、お読みいただければ幸いです!

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記事を最後までお読みいただきありがとうございます。 創作分析や経験談を問わず、何か誰かの糧とできるような「生きた物語」を話せればと思います。これからも、読んでいただけると嬉しいです。