界の軌跡ケビンルート感想考察~空を見上げて罪を暴く~
本稿はストーリーRPG《界の軌跡-Farewell, O Zemuria-》ネタバレ全開感想考察の記事の一つになります。
《界》で語りたいことは相当に多く、単なる感想からキャラクター考察、世界観考察まで幅広くあります。
今回はその中でも、物語の一部を占める《ケビンルート》を中心に、そこに関わる諸々を自由にあることないこと語っていこうかと思います。
《界の軌跡》の記事一覧
発売前考察(諸々勝手に妄想考察してみた記事)
クリア後感想(重要なネタバレなしの感想)
リィンルート感想(キャラ及びストーリー感想)
ケビンルート感想(キャラ及びストーリー感想)
ヴァンルート考察(キャラ及びストーリー考察)
キャラクター考察(キャラの心情を中心に考察)
世界観考察(終盤の重要なことなど全開な考察)
記事ごとに差はあれど、①②を除いては重要なネタバレが全開なので注意してください!
1.ケビンルートのおさらい
ケビン・グラハム。七耀教会の巡回神父──その実は教会の暗部である星杯騎士団のトップ、特別な異能を持つ守護騎士の一人です。
初登場は軌跡シリーズ2作目の空SC。当初は気さくでしっかり者の不良神父を演じていましたが、最後の最後で「ラスボスの抹殺が任務だった」と急に暗く、いや昏く容赦のない一面を見せてきました。
その後の空3rdにて主人公となり、教会の暗部を担うこととなった凄惨な過去が判明し、空3rdの舞台となる影の国を仲間たちと冒険することで、その過去を受け入れ、乗り越え、ヒロインであるリースと共に目標に向けて歩いていくことを決意した。
その時、空3rdのラストでケビンが星杯騎士団の総長セルナートに言っていたのが、こんな感じの台詞です。
「《外法狩り》の渾名から新しい渾名に変えられませんか?」
「いや、今まで通り《外法狩り》としての仕事もきっちりさせてもらいますけど──」
そうして、碧の軌跡で再登場。星杯騎士として、序盤と終盤で協力者として主人公ロイドの脇を支えたり陽動などをしていました。
その時の渾名は《千の護手》。《千の腕》──卓越した手腕で数々の難題を良い落としどころに持って行った義姉ルフィナ・アルジェントからとったものです。
ケビンの信念は、世界の負の面を知っていながら、それでもより良い世界を創ることを諦めなかったルフィナのように、不可能に近いとわかっていながらその世界を目指すこと。《いつか、たどり着く場所》をヒロイン──ルフィナの妹であるリースと共に目指すことでした。
そうして、碧の軌跡以降、閃Ⅰ~黎Ⅱの7作、登場人物の会話から存在は聞き取れてもずっと姿を見せることもなく──
120X年、すべてが終わる。そんな不穏極まりない中で久々に、主人公とは別ルートの中心人物として、軌跡に関わるのです。
※ケビン主人公作品《空の軌跡the 3rd》の考察記事はこちら。
2.愉快なピクニック隊の軌跡
とまあ、かなり重苦しいストーリーとなるケビンルートではありますが、まずはケビンが参加するピクニック隊の愉快な感想を述べたいと思います。
らぶらぶすーなーを見てて楽しんでんのもアンタいい趣味してるな兄上。
ミリアムとユーシスのことも楽しんでみてるんだろうな、兄上。
スウィンはいい男になったなぁ……エース兄ちゃんは嬉しいぞ。
というか、ナーディアまだ3作品しか出てないのに出るごとに状況が変わるから常に新しい一面がみれて好きなんですが。おや、なんだこの十字のマーキングは……
あと、コネクトイベントのページとかで時々出てくるピクニック隊四人の所属が《ピクニック隊》でついにちゃんとした組織として呼ばれて笑ってしまった。
さて、そろそろ真面目な感想考察もしていきたいなと思います。
3.庭園の落とし子の苦悩
スウィン&ナーディア。今回、ケビンもピクニック隊に巻き込まれていはいますが、あくまでルートの主軸はケビンです。そこから考えるとすーなーはゲーム的にはPTメンバー、役割的にはピクニック隊。あくまでケビンの物語の脇役です。
ただ、「もう人は殺さない」と決めた元暗殺者が再び殺すか殺さないかの選択を突きつけられる──これは軌跡シリーズでも例の少なかった展開だと思います。とても興味深い葛藤を見せてもらいました。
闇または血生臭い世界にいた人間の葛藤としては、空(ヨシュア・レン)、零碧(ランディ・リーシャ)、閃(シャロン・リィン自身)辺りでしょうか。ただ、このほとんどの人物は闇から光へ最初に帰る瞬間の葛藤です。
もしくは、ランディは闇から逃げて光に浸かっていたら闇が追いかけてきて──といった感じでした。
はたまた、シャロンは光(RF家)から闇(結社)に戻りましたが、明らかに光に未練があった。
《闇→光→闇》の中の《光→闇》の部分の葛藤は、およそ初めてのような気がします。そしてその葛藤は、明らかにリース周りの詳細が明かされなかったケビンの葛藤の鏡写しでもあるでしょう。
《界》のラスト、そもそも黒幕の真相も明らかにはなっていない状況ですが、すーなーたちは問答無用で事を為そうとするケビンに対し、動揺というか、覚悟を決め切れていないように見えます。
そもそも、何が正しいことかもわからない現状。正しさは自分の外側ではなく──自身の内側になくてはならない。
黒幕は少なくとも覚悟を決めているようには見えます。
ケビンはすーなーよりは覚悟を決めていますが、けれど優しさは捨てきれていない。
黒幕は黒幕である以上、恐らく容赦はない。ケビンは黒幕に引っ張られ、優しさを持っていても苦しんで容赦なくいかざるを得ない。
登場を望まれているリースは、きっと間違いなくケビンをぶん殴ると思います。それが「私も闇を背負うから」なのか「ケビンを間違った闇にいさせないから」なのかはわかりませんが。
ならば、すーなーは。「真相を見極めて、そこからあなたの外法狩りに付き合うかを見極める」とした二人の元暗殺者は、ケビンにスウィンとナーディアだけの答えを提示できるのでしょうか。
4.ラピスの成長~人が《人》たるために~
すーなーと同じく、ラピスも──というよりルーファスも含めて、ケビンと同じ業を背負う動きやすいメンバーとしての側面は大きいと思います。
が、やはりそれだけじゃ物語は面白くない。
ケビンルートの初期、ケビン・ルーファス・そしてラピス自身も「ラピスは合理的に動ける」という旨の発言をしています。それは性格というより、ラピスが機械存在であるからという理由です。
「人間の価値基準なんて、私には関係ないもの」
「人間がどういうものなのか、私にはよくわからない」
これは創の軌跡の頃のラピスの言葉です。またエリュシオンの暴走を止めることがラピスの使命であって、たしかにピクニック隊が大事であるという部分以外は、人間に対する仲間意識は比較的希薄だったかもしれません。
ただ……ゼムリア世界は、いわゆる私たちの現実では図ることのできない知性がたくさんいます。聖獣、齢800歳の魔女、パテル=マテルをはじめとして。彼らは時々によって立場等は変わっても、主人公陣営の仲間ないし協力者であることは間違いない。
人間でないからと言って、人間社会に溶け込む以上は人間の価値観と無関係ではいられない。
やや唐突ではあっても、クレイユ跡地の記憶で悲しみの感情を知り、ラピスは社会の中の人間になったのかもしれません。
ここから、ラピスは人としての責任を背負うことになる。
黒幕を狩ろうとするケビンに対し、ラピスはどんな意志を突きつけるのでしょうか。
5.どの道を歩いて、その場所へたどり着く?
さあ、問題のケビンです。
ケビンの軌跡は最初に語った通りですが……歴代の軌跡をたどってきた人なら、まあ文句は出てくるでしょう。
てめえどうしてリースを置いていったんだよ!? と。
空3rdの最後、ラスボスは影の国を乗っ取ったケビンの聖痕そのものであり、そして聖痕はルフィナの姿形を語っていました。いや、最後にケビンとリースは死んでしまったルフィナその人と話すことができた。
その時、ケビンはルフィナにとどめを刺すという業を、リースと一緒に背負うことになった。
そもそも星杯騎士団は世界の裏側で活動する組織で、後ろめたい外法の活動と縁を切ることはできない。特にケビンは聖痕を持つ守護騎士なわけで、ベルガルドのような例外が生じない限りは守護騎士の業を手放すことは一生できないのではないか。リースもまた、幼馴染がその場所にいるなら離れる気はないでしょう。
ケビンがいくらリースを闇から遠ざけたくても、そんなものは世界が許してくれないのです。それがわからないケビンでもないと思います。
だったら、今回ケビンはどうしてリースを遠ざけたのか。後ろめたい外法狩りだから遠ざけたのか、それとも善良な黒幕を狩るという重荷を乗せたくないのか。
ナーディアとのコネクトだったと思います。「結局俺は、影の国での出来事から成長してないのかもしれない」という感じの台詞。
いや、影の国の冒険を見てきた人間としては「そんなわけねぇよ」と言いたい。ただ、あの時はケビン自身の問題だったけど、今は世界全体の問題だから、一度成長したケビンでも辛いものがあるのかもしれない。
界の軌跡Ⅱ(仮)でもケビンは続投されるでしょう。まだ使命を果たせていないのだから、きっとまた断罪する時は訪れる。その時、ケビンはどんな答えと流儀を、自分の心の内に灯すのでしょうか。
6.ラトーヤ・ハミルトン~我が母の教え給いし歌~
さて、ラトーヤ・ハミルトン博士です。
正直、まだ《界》の2周目も終わってないうえに、今回は登場人物の動きとか関係性とかがめちゃくちゃ複雑なので整理できていないのですけど……
今回《残滓》に関わる事件やケビンルート・リィンルートで描かれたいくつかの謎は全てハミルトン博士によるものだった。そして、ハミルトン博士には協力者がいます。
クロード・エプスタイン
ラトーヤ・ハミルトン(本人)
シーナ・ディルク
リリヤ・クローデル
ソフィー・クローデル
アニエス・クローデル
ドミニク・ランスター
ユン・カーファイ
ルネ・キンケイド(?)
結社(単に見届けるだけ)、セリス&リオン(教会のスタンスに揺れている)、シェリド&ナージェ(博士がいい人なので殺させたくない)辺りを除くと、協力者はこのあたりでしょうか。
元々博士たちは宇宙計画を大統領が推し進めるとなった、ある種の《諸悪の根源》について知っていて、世界の理にもある程度精通しているようです。
そしてそれを『どうにか』するために、教会が彼女を外法と認定するにふさわしい、女神の秘蹟すら乱す所業をやってのけた。
サルバッドの未来資源の濫用
偽の星空を見せるという世界への詐欺
アルマータの罪の遠因作り(結果的に)
メルキオルら外道の利用
etc…
ただ……今回、ハミルトン博士に関する考察はできません。
というのも、《界》では宇宙計画やその《保険》について、またその《保険》に関わる協力者の相関図についてはある程度明らかになりましたが、ハミルトン博士が『どうして』それに気づいて『何故』罪を犯そうと決心して……といった、心情的な部分については何一つと言っていいくらい語られていないのです。
物語を通していろんな人から「あれだけの人格者がこれだけのことをしたのだから、絶対に何か理由がある」とは言われていますけど、それも所詮は予想の域を出ない。
クレイユ村など、アルマータの暴走を防ぐことはできなかったのか?
未来の繁栄を捨ててまで、サルバッドを20年間豊かにした理由は何なのか?
そもそも、《保険》を駆けたことによる博士自身の目的はなにか?
博士自身は、どう思っているのか?
他者が予想して言える表面的な動機ではなく、ハミルトン博士自身の言葉でしか語れない心の内を知りたい。
それが聞けて初めて、ハミルトン博士に対する考察感想を語ることができるような気がします。
ケビンの項目で書きましたが、もう一度ケビンとハミルトン博士は対峙するのではないかと考えています。
その時、ケビンはどう動き、何を問うのか。そしてハミルトン博士は何をどう答えるのか。
死んでもいいと思っているのか。いや、外法云々は別にして、ここまでのことをした人間に、いやどんな人間であっても、犯した罪の軌跡を放棄して楽にさせる道理はない。
いつか真実を語ってくれることを望んで、界の軌跡Ⅱ(仮)を待ち望みたいと思います。
その他の感想考察も、お読みいただければ幸いです!