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界の軌跡世界観考察~忘れられない、旅になる②~

 本記事は《界の軌跡世界観考察~忘れられない、旅になる①~》の後半部分になります。


0.全編目次

前半①
1.初登場した七の至宝
2.聖獣の正体を計算する
3.至宝を受け継ぐ一族について
4.至宝が存在する場所について
5.星空と虚空について~リィン・クロウ・エミリア~
6.《永劫回帰計画》の全容
7.《Farewell, O Zemuria》を考える
後半②(本記事)
8.《ループ》現象を定義する
9.リゼットのいた世界
10.《黄昏》と《夜明け》
11.謎はまだ残されている
12.忘れられない、旅になる

8.《ループ》現象を定義する

 どの考察についても、この《ループ》現象について考えを巡らせなければいけない瞬間が訪れました。
 例によってまずは整理します。

・可能世界や《ループ》《リープ》に関連しそうな描写

  • 空SC:回り始めた《運命の歯車》

  • 空3rd:《扉》という《観測》

  • 零 :特務支援課死亡IF

  • 碧 :キーアの因果律操作

  • 零碧:ジオフロントと《紅い湿原》の裏ボス

  • 閃Ⅰ:ガレリア要塞攻略

  • 閃Ⅱ:2周目イベント《黒の史書》

  • 閃Ⅲ:ジュノー海上要塞攻略

  • 閃Ⅳ:ラストのノーマルエンド

  • 閃Ⅳ:BGM《変わる世界~闇の底から~》と《変わる世界~歴史の影で~》

  • 創 :エリュシオンの観測結果

  • 創 :イシュメルガ=リィン

  • 創 :ルーファス死亡IF

  • 黎Ⅰ:ヴァンが纏う悪夢

  • 黎Ⅱ:物語全般

 空・閃ⅣのBG・黎Ⅰ辺りは私個人の趣味で入れた部分がありますが、その他については当てはまることだと思います。

・過去作のループ現象……?

 零碧シリーズでは、キーアという《零の至宝》が因果律に干渉する力を持ち、本来はヨアヒムに殺されていた特務支援課四人が結果的に生存するという結果が得られた。また零の世界ではガイが『俺が生きてて、ロイドたちと一緒にたくさんの事件を解決していた世界もあるかもしれない』なんてことを言っていました。
 閃Ⅰ・Ⅲ発売当初は「キーアの力の影響?」と言われていたプロローグ前のクロウ・ミリアム・オーレリア・アンゼリカの不在演出。ループを2万回もやってるならそれらもあり得るかもしれない。
 閃Ⅳのノーマルエンドと創のイシュメルガ=リィンは言うまでもなく。

 ルーファス死亡IFは、あくまでエリュシオンが演算した『このままではルーファスがそうなっちゃうよ』というものとして受け取っていましたが……考えてみれば、視覚的な未来の映像に《一語一句同じなルーファスの演説》とか、『過去に同じ可能世界がどこかにあってそれをエリュシオンがイシュメルガ=リィンと同じく抽出した』という方がしっくりくるような気がします。もちろん、ファンタジー世界だからとか、ゲーム上の演出だとか、言ってしまえばそれまでですが。

 閃Ⅱのトマス眼鏡イベント《黒の史書》、そして零碧の裏ボスというのは、閃Ⅳと同じく一度エンディングを迎えてから初めてプレイヤーにそれを観測することが許されることになるイベントでした。これももちろんゲーム上の要素に過ぎないと言えばそれまでです。

 黎Ⅰの《悪夢》がループ現象というのは私のこじつけ具合が大きいですが、『夢の中の登場人物にとってはそれが現実であり、そしてヴァンは悪夢を纏っている』という意味で、関連するところがなくもないと思っています。
 その参考記事はもう黎Ⅰ発売前に語っている古いものですが。

・黎Ⅱの物語の本意

 あれ? この左端のデザインさぁ……

 黎Ⅱでは《タイムリープ》そのものが物語の骨子にあり、そしてゲネシス(特に第8)によって引き起こされた現象でした。
考察記事黎Ⅱ

 過去の私が言っていたのは、『これって本当にループなの?』『ヴァンたちに都合がいいリープとは言うけど、実際は逆にヴァンたちに都合の悪い映像を見せられてないか?』『このリープ現象の法則がわからない』というものでした。

さらに、

  • 第8は罪を観測している。

  • 罪は(SIN)である。

  • SIN≒《SiN値》と《レーギャルンの匣》は言っていた。

  • ゲネシスはエプスタイン博士が《永劫のループ現象》に対処するために用意したものの可能性が高い。

 あたりを考えると、

 黎Ⅱのタイムリープ現象は全て《今のヴァンたちの現実》にとっての非現実であり、罪=SiN値が上昇しかねないような出来事を観測していた。

 というようにも解釈できそうですね。

 そしてゲネシスという観測装置に保存された結果であるということは、過去2万回近いループの中で実際に起きていたことかもしれない、ということもあり得る。
 ただしこれを是とすると、『ループに関わりその記憶を覚えている全員がリィン・クロウと同じ状況であると言えるので、関係者全員、星空が虚空に視えないとおかしくね?』という新たな疑問のループが生じてしまうのですが(言ってみたかった)。

 第8に取り込まれていたディンゴが説明していた『ゲネシスに保存された過去数回の、望まぬ観測結果全てを起きたことにしてしまう強制リセット』も、ゲネシスが《レーギャルンの匣》に対するハッキング装置であるなら納得と言える。それにこれも『観測結果が確定するまでは真実がどちらかわからない』という《シュレディンガーの猫》ですね。

・《ゲネシス》とは

 じゃあ、ゲネシスってなんなのでしょう。
 作中の台詞から《古代遺物ではない》と言われています。古代遺物はゼムリア各地で出土される解析不可能、けれど導力で動いているのは確からしいブラックボックスであるとも言われている。そして作中終盤の出来事を考えると、古代遺物は前回ループの産物であるという可能性もありそうです。
 過去、多くの至宝にはそれに付随する古代遺物が存在していました。というか至宝自体古代遺物であると、空の当時ケビンが言っていましたが。

  • 《輝く環》のサブシステム《影の国》にアクセスできる《レクルスの方石》。(作中古代遺物として扱われた。セレストが使用していたが、『セレストが作った』とは言ってなかったはず……)

  • 焔の魔女の一族に受け継がれた《水鏡》

  • 帝国の皇族に原典が受け継がれる《黒の史書》。騎神にまつわる歴史、そして未来も描かれる。

  • 《史書》《水鏡》の大本となる《第03因果律記述機関AZOTH》。(黒の史書が未来を記述できるのって、この世界がリープしているからなのか? と、《界》を終えたことでそんな考察も浮かんでしまいました)

 このあたりでしょうか。さすがに細かい設定までは微妙なので、補足や修正箇所があればお待ちしております。
 《方石》《水鏡》《史書》《AZOTH》、どれも用途は厳密には異なりますが、至宝に関係するとは言えると思います。ゲネシスは古代遺物ではない、けれど明らかに因果律を観測したり、あり得ない現象を引き起こしたり、これらに近い現象を引き起こしている。
 それに《AZOTH》は《第03因果律記述機関》ですが、これを意識してか偶然か、黎Ⅰ・Ⅱのラスダンはそれに似た雰囲気の名前になっています。

  • 黎Ⅰ:《第七原理観測機関 事象変換術式《ゲネシスタワー》

  • 黎Ⅱ:《第八原理観測機関 多次元事象空間《オクトラディウム》

 《第七・第八》については、7番目、8番目のゲネシスが起こしたと考えればその通り。
 《原理観測》はゲネシスが『観測するもの』であるならその通り。
 《事象変換術式》は第7が引き起こした汎魔化やそれに準ずる事象変換に関わるのでしょうか。
 《多次元事象空間》は第8が罪を観測しそれを保存しておくなら、影の国のようなサブシステムが必要かもしれないという意味では符合する。
《機関》というのは装置・仕組み・組織という意味でも使えますが、ここが《AZOTH》の《機関》とも重なるような気はする。

 何より古代遺物の定義によっては『ゲネシスもループをまたげば解析不可能な古代遺物となる』可能性すらあるかもしれないのです。

・ループ現象を定義する。

 肝心のループ現象についてです。ここでの一番の疑問は、結局この今のループ世界(第19999期の現在)は他のループとどういった関係にあるのか、と言うことになります。

※(現 じゃないよ(現在)だ……

 この画像は、例えば元々オリジナルのゼムリアがあって、そこから《匣》の干渉によってコピーデータである《第1期》が生成、さらに1200年後に《第1期》から《第2期》が生成──というように、直前のデータから一部が繰り返し再利用されつつ復元してきたイメージです。オリジナルのゼムリアすら、《世界の外側》から見ればデータ世界のようなもの。

 次もほとんど同じですが、すべてのループ世界はオリジナルゼムリアの内側に存在する。言うなれば私たちが現実(オリジナルゼムリア)でゲームを機動して《界の軌跡》をプレイし、クリアしたら一部のデータを引き継いでクリアデータで2周目を開始する、と言ったようなイメージです。最初の画像と異なるのは、ループ世界はオリジナルゼムリアの下位概念として存在していると言うこと。最初の画像はオリジナルゼムリアとループ世界の位階は等価です。

 最後のイメージは、すべてのループ世界がオリジナルゼムリアからコピーされた世界です。ゲームで例えるなら《界》1周目をクリアした後、クリアデータを引き継ぐことなく難易度だけを変えて2周目をプレイする形でしょうか。ループ間に連続性はありません。

 図表を作る根気も尽きてしまいましたが、実際には上の図表すべてで《オリジナルゼムリア=世界の外側》と表記することができる場合もあると思います。
 さらに重要なのは、《界》のヴァンたちの先にも《第20000期》《第20001期》……と次が存在する可能性です。

・ループ世界を考察する。

 さて、果たして本当に《未来》なのか?

 私個人としては、2枚目の画像イメージ──『オリジナルゼムリアのデータ世界としてループが構築され、ループは一部の情報を引き継ぎながら継ぎ足しでループを繰り返してきた』というのが近いと考えています。言うなれば、

 『《第19999期現在》のヴァンたちにとって、それより数字の少ないループは全て《過去》の出来事である』ということです。

 まずハミルトン博士の説明や古代遺物の《前回ループの失敗の証》というのは、明らかに前回のループ世界から引き継いでいる。しかし古代遺物が同じ導力に由来してはいるが、世界の時期が違う──言うなればパソコンでいうところの《拡張子情報》が異なるためエラーが出てしまって今回ループでは解析できない。ただし同じパソコン上にはあるので、無理やり使うこともできなくはない。
 ループ世界は大筋の情報は同じだが、細かい部分を見れば異なる部分もあるため《レーギャルンの匣》が裁定する《SiN値》も異なり、1209年ではなく《1259年まで存続していた世界》もある。しかし注意したいのは『第X期の1259年は第19999期の1209年から見れば地続きの過去である』ということ。

《OZ》が《Originator zero》だったみたいに、《SiN》も何かしら正式名がありそうですよね。

 ゲネシスを通して観測したすべてのIF世界は、ゲネシスがそれまで『SiN値の上昇を防ぐという意図としては望ましくない結果』を保存しておかれるべきものであった。故に《第X期の1259年》と同じく全て《第19999期の1209年》の過去に生じていたもので、だから観測データに残っていた。
 今まで《未来の観測結果》とされていたすべての事象(黒の史書の未来の記述・エリュシオンの未来演算)は『過去第X期に実際に生じていたものだった』

 《零の至宝》《AZOTH》など、七の至宝に関係するもの──この世界の枠組みの権限を与えられた古代遺物という名のデータ機関は、ネットワークの上位管理者権限にも似たものを持っている。故に過去のデータ(これに関してはループ間が地続きではなくとも、別のネットワーク管理下のデータも)接続して観測することができる。そしてそのデータをコピー&ペーストすることで今回の第19999期ループのデータを入れ替える。

 なんて考察が浮かんだのです。少し突飛な気もしますが。

どうもこの世界、データ的な表現が多すぎるように感じるのです。

・仮説から導く答え合わせ(仮)

 あくまで、上に書いた私の仮説を是とした場合ではありますが。
 《2.聖獣の正体を計算する》で考えた『メアが刻の聖獣だとしても古の盟約に抵触しない』という仮説の根底部分はここにあったりします。今のヴァンたちの世界がオリジナルのゼムリアにとって偽物であるなら、本物の世界の本物の聖獣が既に盟約から解放されているなら、この世界のヴァンたちに力を貸しても問題はない。
 《3.至宝を受け継ぐ一族について》も同じです。オリジナルのゼムリアに住むクローデルの一族が、コピー世界のクローデル家に働きかけた、というイメージでした。
 《4.至宝が存在する場所について》も同様。《第19999期》の世界という大気圏外を飛び出した時、そこに広がっていた虚空と《レーギャルンの匣》。あそこは果たしてオリジナルのゼムリアなのか、それとも外側の世界なのか。あくまで《本物の女神の七至宝》はオリジナルのゼムリアのそれぞれの場所にあって、このループ世界の至宝もまた《刻》が再現しただけで、だから一見して《刻》が他の至宝よりも影響力が強く見えるだけなのかもしれない。

 逆にいくつか矛盾するようなこともあって、エミリアやIFのリィン・クロウなんかは大気圏外に出てはいるので、この世界が、少なくともこの世界の住人にとっては本物であるというのは確からしい。その意味で上に書いた《データ世界》というような文脈は否定されるような気もする。

 そしてこのループ世界という謎は……
 この考察記事の最後に書く、『まだ残されている世界の謎』ということにも直結してきます。

9.リゼットのいた世界

 リゼット──リセット?

 リゼットの情報については《ヴァンルート考察》で書きました。リゼットらしき少女が生活していた《1259年》というのが『恐らく第19999期の1209年』にとって過去じゃないか、というのも書きました。
 この場合、リゼットは時間跳躍なんてものはしてない可能性があって、世界跳躍というものも別にしていない。ただ1259年に生命維持装置に入ったリゼットが、約1200年(もしくは約1200年×ループ回数)装置の中で眠り続けていた。その意味では、リゼットすら《早すぎた女神の贈り物》なのかもしれませんね。皮肉ではないですよ?
 そして、リゼットを保護していた装置が、マルドゥック社の超技術の基盤になった。
 マルドゥック社が関わってきたザイファ技術、宇宙関連技術、そして危機管理AIにメア(メアだけはMKも関わりきれてないらしいですが)。
 これらは過去のループでも生まれていた技術なのかもしれない。
 それにリゼットのいた世界ではエグゼキューター──ナノマシン的な技術すらあった。

 ただ、ここまでの技術が生まれているにもかかわらず、1259年まで世界が存在していたというのも不思議な話です。反応兵器に宇宙進出を果たした第19999期は1210年でグランドリセットが生じたのに。

10.《黄昏》と《夜明け》

《白き夜明け》と《巨イナル黄昏》

 考察項目も残り2つまで来ました。
 けれど今までの考察が妄想もありつつも今までの情報を整理しつつそこから可能性のある仮説を語っていたのですが、残り2つはキャラの真理考察みたいな感じで、さらにあることないことを自由に語ってます。

 《黄昏》と《夜明け》について。
 夜明け単体についてはルネの項目でも軽く触れましたが、共和国編のキーワードはおろかタイトルにもなっている《黎明》との関りがある。というか黎明自体が夜明けという意味ですからね。
 そして、帝国編(及びリベールとクロスベルも含めた西ゼムリア編)では最終的な問題に《巨オナル黄昏》というキーワードがありました。

《巨イナル黄昏》
《白き夜明け》

 意図的に対比させたようにも感じます。実際、エレボニア帝国とカルバード共和国はシリーズを通して対になる存在でもありましたし。
 黄昏は昼から夜(夕暮れ)。夜明けは夜から昼(正確には朝)。
 《黄昏》において、主題は西ゼムリアに存在するたくさんの導火線によって爆発する世界大戦という激動だった。
 戦争というのは悲劇としてはわかりやすいもので、もはや参戦した時点で大体全員が敗北者です。納得できなくても戦いに参加せざるを得ない。強い者についていかなければ戦争の火種に薪としてくべられてしまう。それは他の弱者を薪としてくべる行為でもある。

 『明けない夜はない』というように、昼と夜なら大体夜が悪いこととして扱われる。世界大戦に至る世界の激動を《黄昏》と称したのはいいネーミングだと思いました。
 そしてそんな《黄昏》や闇夜において、主人公たちは《太陽》《熱》《一閃》として《輝き》を投じました。真っすぐ、強く、しっかりとした光です。
 過去の考察でも似たような主旨を書きました。『西ゼムリア編まで、主人公たちは真っすぐ断ち切る英雄だった』と。

3つの軌跡

 そして『東ゼムリア編(今のところは共和国編)では贖罪・赦し・自らを救うといった包括的な英雄像になるのではないか』と書きました。
 それを書いたのは黎Ⅰも発表される前でしたが、黎Ⅰの主人公であるヴァンが発表され、近藤社長の「プレイヤーの年齢層も影響して大人っぽい主人公にした」というのも相まって、私個人としては現状自分の『東ゼムリア編』の主人公像は間違ってないのではないかとも思っています。
 そして何より、その核心を一層強くさせたのが、黎Ⅰでロックスミス元大統領が語っていたある言葉なのです。

『この混迷の時代、様々な光と影が入り交じったカルバードにおいて──』

《混迷の時代》
《黄昏》に対する《夜明け》と同じように、《激動の時代》と対比される言葉だと思うのです。

 《激動の時代》はオズボーン宰相がよく使い、そして様々な人間が認知した言葉。大戦前の様相、上に書いた《黄昏》とも直結する『弱き者が容易くなぶられ、戦火を前に嘆き悲しみ、小さき子供が焔の前で崩れ落ちて泣き叫ぶ』ようなイメージがあります。

 《混迷の時代》はそれとは異なる。

 《界》の宇宙問題はひとまず置いて、社会は間違いなく進歩した。ザイファ規格も広がり、世界は戦争もなく平和になった。
 けれど問題は確かに存在している。人種問題、国家同士が統合しない以上は間違いなく生まれる違いによる摩擦。テロリストやマフィアなど。目を背けるのはたやすく、けどそんな風に逃避をしていけばいつか現実が牙をむいて襲い掛かってきて、確たる自分を持たない存在は容赦なく食い尽くされ、立ち尽くしてしまう。『普通を演じていながら周囲とは圧倒的に異なるものがあり、それをさらけ出すこともできず、自分に気づかず生活する群衆。その群衆の中で一人、誰にも気づかれずに孤独に飢え死ぬ大人』というイメージを、私は持っています。

 激動のようなわかりやすいものではない、けど存在はしている《混迷の時代》です。
 実際、今回《夜明け》としては《A∵D》があり、それは《アルター・ドーン》《Alter Dawn》《もう一つの夜明け》がありました。ジェフリーのような確たる自分をなくしている、混迷に迷った人々がすがるもう一つの夜明け。

 すでに共和国編も佳境で、次が《ヴァンの最後の物語》であることも明言されている。なので今更言うまでもないですが、ヴァンが、そして私が言う所の東の英雄像を持つリィン・ケビン・ルーファスたちが立ち向かう最大の問題が、《黄昏》とは異なる《夜明け》となるのでしょう。
 エステルのような太陽の輝きではなく。ロイドのような壁を乗り越える意志ではなく。かつてのリィンのような《無明の闇に煌めく一閃》とも異なる。
 ケビンのように凄惨な過去を受け入れて。ルーファスのように自分が自分であることを認めて。リィンのように自分の幸せのために他者を幸せにしようと決意する。
 そしてヴァンのように。どこまでも己の流儀をつらぬき、排除することのできない自分の中の異質さを一緒抱えて、それでもその異質さを認めて、仲間たちと共に、自分を許し、そうすることで自分が存在するこの世界を許して救う。

 輝かしき《白き夜明け》を止められるのは、夜明け前の優しい暗がりみたいに寄り添ってくれる貴方だけの色
 昼にもなり、夜にもなる、境界線の色。何色をも含む黎明という、何もない《白》とは決定的に異なる《彩》なのだと思います。

11.謎はまだ残されている

 最後の項目です。
 《匣》によるループを中心とした謎の考察についてはあらかた書き終えたので、ここでは別のことを語ります。
 どこのインタビューかは覚えていないのですが、たしか共和国編だか《界》だかが終わった時点で軌跡シリーズの9割が完了するのでしたか。
 それについて、自分は別にその言葉に裏切られたとしても全く問題のない人間なのですが。だって楽しいじゃないですか、ゲームするの。

 ぶっちゃけ、今回の《界》の謎が解明しても明らかになっていないものは多い。

 というのは多くの軌跡プレイヤーが感じていることだと思います。

 まずループについては語られたものの、マクバーンが存在していた外の世界や《塩の杭》などの外の理、悪魔の存在する上位次元などについては未だ詳細不明です。
 ヴァンが抱える魔王が『世界が一度書き換えられた時に、それまで存在していた72の悪魔に追加された5柱の魔王』というようなことを語っていましたが、その書き換えというのが果たして《グランドリセットに関わるループ》の中で生まれたのか、それともまた別のところで生じたのかについてはわかりません。
 そして、今回のメルキオルの台詞です。

 メルキオルが言うには、《刻》は《空》よりも《幻》よりも《鋼》よりも安全なセーフティとして存在している。
 つまり、《刻》のセーフティであるグランドリセットがなければ、ゼムリア大陸は今回のグランドリセットとは異なる別の危機が生じることになる、とも考えられる。
 《永劫回帰計画》の名前が初めて明かされたとき(1206年)、盟主は『すべての無へと至るまであと3年』と言っていました。この《すべての無》は今回の事件を見ればグランドリセットのことにも感じますが、グランドリセットであればすべての《無》と言うのでしょうか。
 無だと、ループのやり直しではなく文字通り消滅のように感じるのです。

 また、七耀脈の枯渇による東の大地の不毛化についても詳細は不明です。ハミルトン博士はあくまで未来から資源を前借しているだけで、ハミルトン博士が生まれる前のことには関与していないはず。東にはかつて《イスカ神聖皇国》がありました。その滅亡と東の大地の不毛化に因果関係があるのかはわかりません。
 ただ、

・250年前:帝国獅子戦役で七耀脈の乱れが加速。
・130年前:イスカ神聖皇国滅亡。
・100年前:カルバード共和国革命。
・現代  :物語の通り。

 と、東の大地の不毛化とイスカ神聖皇国の滅亡は全く無関係であるともいえないと思うのです。

未だ謎に満ちた大陸東部

 であれば、グランドリセットがなくても、早晩、大陸は東から順に荒廃していくことになる。
 グランドリセットを抜け出した先の問題は、まだまだ続いているように思うのです。

 他にも例えば、《永劫回帰計画》はあくまで《オルフェウス最終計画》の第3段階であって、《永劫回帰計画》が達成した後にも結社の行動が続く可能性もあります。
 幼少期のニナが発していた『明らかにゼムリアの言語とは異なる言葉』も気になる。
 それに、女神の七至宝に上下関係はない(はずな)のですから、まだ未登場の《水》《風》もまた恐ろしい何かを秘めているのかもしれない。もう消滅した可能性だってありますが。

 いずれにしても、この世界は、まだまだ私たちプレイヤーを楽しませてくれる下地を残してくれている。それだけは確かだと思うのです。

12.忘れられない、旅になる

 この記事では至宝について、聖獣について、ループについて、世界の謎について等々、とにかくいろんなものを好きなだけ語っていきました。
 そして《界》に関わるのは全8記事、キャラ、世界観、単なる感想など、今までとは比較にならないくらいたくさんのことを語りました。
 外れている考察がほとんどかもしれませんし、もしかしたら当たっている考察もあるかもしれない。いずれにしても、そんな一プレイヤーがたくさんの情報を拠り所にして好き勝手に語れるくらい、このゼムリアという世界は日本ファルコムとプレイヤーたちが愛して、世界と物語を構築して、細かいところ、見えないところ、小さいところ、などありとあらゆる場所まで息遣いを感じられる場所なのだと思います。

 物語が終わろうが終わるまいが、その世界の瞬間を感じられることが魅力的で楽しい。
 とはいえ、《界》の物語は佳境。このままではアニエスがいないので悲しいですし、ヴァンのようにやるせなさがありますし、その意味では一刻も早く続きを見届けたい。

 今回、記事のタイトルの多くは空の軌跡シリーズのキャッチコピーや主題歌などから借りました。

  • クリア後感想:FCキャッチコピー「想いの軌跡が時代を拓く」

  • リィンルート:FCのEDテーマ「星の在り処」

  • ケビンルート:3rdのEDテーマ「空を見上げて」

  • ヴァンルート:3rdのOPテーマ「Cry for me, cry for you」

  • キャラ考察集:SCのEDテーマ「I swear...」

 そして今回は空SCのキャッチコピー「忘れなれない、旅になる」です。

忘れられない、旅になる。

 《界》の物語を経て、世界は今までとは違う形であったとしてもリセットされたかもしれない。
 アニエスも、もしかしたら女神のような存在になったのかもしれないし、その記憶すら人々から失われてしまったかもしれない。
 でも、「軌跡の旅は忘れられない」んですよ。

忘れることのできない、物語がある。

 出会った主人公からヒロインから、果ては街角のどこかにいるモブキャラにすら物語がある、忘れることのない密度の高い旅。それが軌跡シリーズ。
 個人的に、空の軌跡シリーズとの繋がりを感じた界の軌跡。
 空の軌跡FCでヨシュアがエステルの元から消え、そしてSCではヨシュアを取り戻すためにエステルは奮起する。そのための旅路が空の軌跡SCであり、それが忘れられない旅の原点です。
 界の軌跡の次となる、界の軌跡SC(仮称)もまた、個人的願望込みではありますが。

 どうか、忘れられない旅になりますように。

 長文にお付き合いいただきありがとうございました。

 界の軌跡の他の考察、軌跡シリーズの考察集についても、よければお付き合いください。


記事を最後までお読みいただきありがとうございます。 創作分析や経験談を問わず、何か誰かの糧とできるような「生きた物語」を話せればと思います。これからも、読んでいただけると嬉しいです。