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読書記録「エレファントヘッド」白井 智之

本格ミステリ大賞受賞の鬼才が仕掛ける、空前絶後の推理迷宮。

精神科医の象山は家族を愛している。だが彼は知っていた。どんなに幸せな家族も、たった一つの小さな亀裂から崩壊してしまうことを――。やがて謎の薬を手に入れたことで、彼は人知を超えた殺人事件に巻き込まれていく。

謎もトリックも展開もすべてネタバレ禁止!
前代未聞のストーリー、尋常ならざる伏線の数々。
多重解決ミステリの極限!

https://www.kadokawa.co.jp/product/322306000038

読んだ経緯

あんまり覚えていないけど、いつの間にか図書館の予約リストに入っていて、いつの間にか自分の番になったため借りて読んだ。自分が予約リストに入れているからにはSF作品かと思っていたけど、SFではあるけど主軸はむしろミステリーでした。

そういうわけで、借りたときはこの本がどんな内容でどんなジャンルかも知らなかったから、読み始めるまで多少時間が掛かった。書き出しも精神世界的な感じで読みづらそうだったしね。

全体的な感想

読み始めたら、もう、止まらんですよ。これまでに読んだ本の中で一番とどまることなく読み進んだ本かもしれない。ミステリーというジャンルの本は普段あんまり読まないけど、ミステリーの面白さ、引き込まれる魅力を全身を持って味わったような気がする。

といっても、この本は一般的なミステリーよりダークで、エログロみたいな要素があるので、その点は注意が必要かもしれないね。といっても、ミステリー小説をあまり読んでいないのだから、一般的なミステリーがどんなもんなのかはあまり知らないけどね。


以下ネタバレあり













まず自分が興奮したのは、プロローグ的な最初の部分。文哉という人物の視点で描かれるところ。fumiya----というアカウント名で遊んでいるゲームの話題で盛り上がる。アカウント名がフミヤだったから勝手に男子高校生だと思っていたよね。男子高校生として描かれているから当然ですけれども。
その後で、彩夏は自分の父親と仲良く話していただけだったというシーン。彩夏が「彼女」といった瞬間に、ミステリーって面白!!って思った。思わず最初の方を読み返しましたよね。

主人公が最悪すぎる。

どんでん返しが何回も来ましたよね。まずは、文哉の勘違いで性脅迫者ではなく親バカであったというところ。
次に最悪な行為を幾度となく行ってきた象山の前にスーツを着た春が現れるところ。
そして、何度も繰り返される回答と答え合わせ。
最後の無限ループ。

不死館の地下、15メートルってめちゃでかいな。

逃亡者が追われている理由が強制性交だったことから、象山が彩夏を襲ったことは導けたな~と思う。春は喜んでお金を受け取るような人なので強制性交にはならなそうだし、強制性交描写はその時点でなかったから。すべてを失い自暴自棄になった象山が強制性交するとしたら、ペペ子の顔にしていた彩夏だと結論付けるのは出来たと思うな~うわ~
ま、その時点では、他の知らない誰かである可能性もあるわけだから決定打ではないけど

結局、修復者だけは並行世界を超えた殺人を行っていないよね。最初のシーンが修復者の世界の視点なのも意味があるのかな。いや、読み返してみたら、裏島が初めて象山と出会った時間軸っぽいな。郵便局員いるし。
裏島が発見するよりも前から象山同士の殺し合いは始まっていたみたい。時間を移動できるので始まりとか前とかを考えても意味なさそうだけど。だとしたら結局、修復者の世界ではあるのかな。

最終的に、特に何が解決したわけでもなくただ象山と象山の家族や付近の人物が大量に死んで終わり。なんとも救いようのない結末だ。これは、象山が根っからの最悪人でなければ後味はかなり悪いものになるだろうが、象山が最悪すぎて、感情は揺れない。

疑問

ドラッグの効果や仕組みについての疑問は置いておいて、それを前提とした疑問が少し残った気がする。

  • 裏島はエデンに18回シスマを打たれたことによって無限の時間を生きたと言うことだが、せいぜい4000万年くらいなのでは?

    • 他人に連続で投与されるとどのように処理されるのかな

  • 同じ人に連続で18回シスマを打ったとしても、分裂した意識の数は2の18乗ではなく、1+18の19なのではないか?時間遡行に成功した意識はエデンを追うのをやめるか、もっと良い方法でエデンを追求することになるだろう。

    • 連続で打たれるのは不安な片方の意識のみであるから2の18乗になるのは、ある人がシスマのアンプルを18個持った状態で使う場合なのでは。

    • シスマの大量投与によって過剰な効果が出たのかもしれないが

  • 最後、もぐらが爆薬の詰め込まれたスーツケースと共に船に乗り、爆破した。もぐらは救命ボートにいち早く乗り込み助かったが、こちらの時間の象山は連鎖現象による沈没の過程で重傷を負う。

    • この、裏島に助言を受けず、知らない間に連鎖現象によって重傷を負った象山は誰?誰からいつ分岐した?

      • シスマによる分岐以外にも、あらゆる時間軸世界に裏島は移動できる?

      • であるならば、そもそも、象山の意識の数は無限なのでは?

      • 象山が無限に存在できるなら、連鎖現象は限りなく全ての場合において発生し、全生物はもはや存在できないのでは?

    • 未来の動画を見せてもらった時点で救命ボートに乗れば無事に助かるのでは?

    • もぐらは同じ方法で助かったのならば

      • たとえ、動画を見せられてから爆破までの時間が短すぎて逃げられないとしても、シスマを使って5時間前に戻れば救命ボートに乗り込むか、運転手をどうにかして船で戻ることも出来なくはないのでは?

などなど


裏島はもはや神のような存在だとして、象山の分裂した意識それぞれの世界だけでなく、ありうるすべての分岐世界に行くことが出来るのだろう。つまり、幸せ者や修復者、逃亡者、死にぞこない、もぐら、のそれぞれの世界について、更に、あらゆる分岐から分かれた無限の世界が存在しているのだろう。だからこそ、裏島が介入していない世界の象山を観察することが出来る。



最後に、裏島よ、コーギーにチョークスリーパーをするな。

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