流離い
2025/1/28
アルゼンチン居候生活5日目。
ギシェルモさんは早朝、300km離れたブエノスアイレスまで出掛けた。
私はプール周りを軽く工事した後、マルセラさん、娘のフアンナちゃんと共にコロン市街へ。
道中、私が野宿したガソリンスタンドを通り
『あなたがヒッチハイクしてた場所ね』
と会話しながら。
もう5日前の話か、あっという間だ。それにしても本当に、まさかあの時点ではこんな展開になるなんて予想もしていなかった。
その後、向かいにあるスーパーで買い出し。
私が石鹸と歯磨き粉を手に取り、レジに並んでいると
『お金はあるの?』
とマルセラさん。
そうだよな。
「お金が無いから野宿とヒッチハイクしてるんです」
と言って、今に繋がっているんだから…。
こんな怪しい奴をわざわざ車に乗せる義務も無ければ、家で寝泊まりさせる義理も無いのに、ホントよく迎えてくれたと思う。
そのくらいのお金はあるので大丈夫と私は言ったが結局、代金はマルセラさんが出してくれた。
いつもはこれから休憩して後半の仕事なのだが、今日はギシェルモさんが出張で居ないので家でゆっくり。正直、連日の力仕事が相当キツかったので助かった。体のアチコチが筋肉痛でまともに動かせない。
今のうちに調べ物をしようとグーグルマップを見つめる。
うーん、これは…。たぶんウルグアイは国境の街パイサンドゥまで行って終わりかな。
そこではATMから米ドルを引き出せそうなので、目的はそれだ。首都モンテビデオや他の街も考えたが、あまり良い話を聞かないし、何より物価が高過ぎる。
国土の8割以上が農地といわれるその大地で星でも眺めてビールを飲みたいと思っていたが、テントも寝袋も無い野宿では優雅な気分に浸れないだろう。強盗よりも虫が厄介そうだ。
さて、明日もプール工事。
ここまできたら完成まで見届けたい。だが、そろそろ出発も考えなければ。
何事も引き際が肝要だ、そしてそれを見極めるのが一番難しい。
もう少し、あと少しと思っているうちに関係や状況が悪化して苦い終わり方になることは珍しくない。
なので、そうなる前に…。