
予感
2023/12/5
さぁ
イズミルに向けてバスに乗ったわけだが、目的は特に無い。
思えばトルコにおいては、訪れる全ての街にいつも何かしらの期待があった。
誰もがその名を知っているであろうイスタンブールは、それだけで行く気にさせられる。
首都アンカラにはダイキ君と会うために。
その彼と行ったエスキシェヒルは
『一緒であれば何処でも楽しいだろう』と。
コンヤでは政府に禁じられたイスラム神秘主義、メヴラーナ教の“セマー”を楽しみに。
ギョレメを取り囲む観光地、カッパドキアの”無数に浮かぶ熱気球”は外せない。
まぁ、見れず終いだったが…。
カイセリではスレイマン君との再会。
結果的に多くの出会いも。
マルディンはタイ・バンコクを共にしたセイマ君のおすすめ。
その街並みをインターネットで見て、今までのトルコとまるで違う風景に心が弾んだ。
居心地の良さを知っているアンカラ、そしてタカシさんとの再会となるアンタルヤ。
多少のハプニングはあれど“出来過ぎ”だった今回のトルコ訪問。
それだけに
次の街
イズミルでは何も予定が無い
何も起こる気がしない…
では何故、そこに行くのか。
それはイズミルがイスタンブール、アンカラに次ぐ3番目の大都市だから。
いや、大都市に興味はさほど無いのだが
まぁ何となく…行っといた方が良いのかな…
その程度の気持ちで向かった。

イズミルに到着


しかし、何というか…。
今まで訪れた国に比べ、トルコは格段に交通網が発達しているので移動がスムーズだ。
まるで自分の極度な方向音痴が治ったのではと錯覚さえする。
また当然”それは錯覚だ”と自覚している。
時刻9:00。
何はともあれ順調に宿に辿り着き、まだチェックインまで時間があるので、近所の広場で時間を潰す。
もう数え切れないほど食べた最安のパンを買い、それを食べながら辺りを見渡す。
なんか…
感じが悪いな…
実は今回の宿はチャーダスさんからオススメされた場所。
「そこはやや物騒な雰囲気だが、近くに交番があるので大丈夫だ」と。
まさにその通りだった。
所謂“貧困層エリア”に位置するそこでは、朝からビールを飲み歩く中年の輩がひしめいていた。
そして
「おぅ、お前。どこから来たんだ?」
日本からだと答えると
「おぉ日本か、良いな。まぁそこでチャイでも飲んでいけよ」
と目の前の喫茶店を勧められる。
「いや、金が無いんだ」
私がそう言うと、ボロボロの背広にジーンズ姿、そして無精髭の中年男性は
「んだよお前、金持ってねぇのかよ」
と言い放ち、ビール瓶をぐいっと一飲みした後、私の視界から消え、やがてまた目の前に現れた。
「ほら、これ飲めよ」
その手には暖かいスープが。

レンズ豆のスープ
具は溶け切っていてほとんど無いが
程よく塩味が効いて美味い
こういう“ちょっと口が悪い輩”。
実は少し得意というか、慣れている。
私は田舎の漁師町出身なので、子供の頃からずっと接してきた。
なので、意外と気前が良い事も知っている。
私が御礼を言うと、その中年男性は右手を胸に当て、ニッコリ笑って会釈してくれた。
『その辺は流石、トルコだなぁ』と…。
無事チェックインを済ませ、早々と街歩き。
予報ではこの日が唯一の晴れ。
明日からしばらく雨続きらしいので、夜行バス上がりで疲れてはいるが、少し無理をして外に出る。












いつもの如く、碌な予備知識も無しに訪れたこの街だが、どうやらこれで市内の見所は粗方終わりのようだ。
正直
何にも響かない…
いや、この環境に無感動というのも贅沢な話だとは思うが、旅を続けていると、そこが有名無名を問わず”自分の心に響くか否か”がすぐに分かる。
これは恐らく、大なり小なり旅人共通な筈。
此処は何も無さそうだな…
それが私にとってトルコ第3都市イズミルの第一印象だ。
もっとも、それを見越して此処ではゆっくりと、溜まった作業を消化するつもりでいたので問題無いのだが、あまりに無感動なので少し勿体無い気もする。
宿代もバカにならないのだから…。
しかし
何が起こるかわからないのが旅
現に、今まで予想通り進んだ事の方が稀だ
まぁ…のんびりいこう
何も起こらない予感はするが…
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