パキスタンとの国境へ
2023/10/16
時刻12:00。
昨日は思いの外、順調に目的地を周れたので少しゆっくりしたスタート。
今日はパキスタンとの国境に向かう。
今まで陸路で何度も2国間の境を渡ってきたが、どこも殺伐としていた。
当然だろう、他国と接する謂わば“一番警戒するべき場所”なのだから。
しかしこのインド↔パキスタンの通称【ワガボーダー】は何やら2国間が競って自国を盛り上げる、さながらお祭りの様になっているというのだ。
「それは見てみたい」
行く方法は幾つかあるが、私は黄金寺院に集まる客引きの誘いに、あえて乗る事にした。
マレーシアで出会ったアキ君のアドバイスだ。また数日アムリトサルに滞在して、この街はそこまで悪質な客引きがいないと判断した。
黄金寺院に着くと早速、声を掛けられる。
最安の方法はないかと伝えると、乗り合いのオートリキシャーを提案された。
往復60kmで300ルピー(約540円)。
それでも外人価格だとは思うが、まぁ納得。
まずは預け金として100ルピー支払い、出発を待つ。
出発時間。
指定された場所に着いたが、誘ってきた客引きの姿は無い。
メッセージアプリで連絡しても返事は来ず。
『やられたかな…』
15分ほど立ちすくんでいると、警察官が私に近づいてくる。
事情を話すと、その男性は私の持つ予約券に書かれた番号に電話を掛けてくれた。
すると即連絡がつき、無事に乗車。
ガタガタ道で何度も頭を打ちながら乗車すること約1時間。
パキスタンとの国境、ワガボーダーに到着。
着くや否や、絵の具を持った男が近寄り、私の顔や手の甲にインド国旗の色を塗ってくる。
なるほど、サッカーのサポーターみたいなものか。お祭りと聞いていたが、その通りの様だ。
200ルピー
え?
ペイント代、200ルピーだ
いやいやいや、いきなり来て勝手に塗っておいて、それはないだろう。
しかも200ルピー(約360円)なんて高過ぎる。
逆らっていると、その男は「じゃあ50ルピーで良い」と、これまた勝手に、しかも大幅に値下げし始めた。
納得いかない私が尚ゴネていると、若いインド人グループが間に入り「払う必要無いよ」と遮ってくれた。
そして、いよいよ始まるセレモニー。
本来、外国人の私はパスポートを提示し、VIP席に通されると聞いていた。
それは国境の扉の目前にあり
「どうだ、我が国はこんなに他国から支持されているんだぞ」
と見せつける意味もあるらしい。
だが私は助けられたインド人達と一緒だったせいか、そのまま自国民の席に座る事に。
むしろ好都合だ。
VIP席の方がパフォーマンスを間近に見れるが、此処の方が現地の熱気を感じられる。
軍人「ヒンドゥスターーン!」
観衆「ヒンドゥスターーン!!!」
軍人
ヒンドゥスターーン!!
観衆
ヒンドゥスタァァァーーーンッ!!!
凄まじい盛り上がりだ…!
イスラム国家のパキスタンが粛々とパフォーマンスを見せるのに対し、インド側は自由奔放に歌えや踊れやの大騒ぎ…!
両国の違いがハッキリとわかる。
だが共に、愛国心に満ち溢れている。
ちなみにヒンドゥスタンはインドの別名だ。
両国共に対立した様子は全く感じず、本当にお祭りそのものだ。
いや、応援合戦といったところだろうか。
ジュースやポップコーンの売り子もいる。
「これを見てると、インドとパキスタンの関係は良さそうに見えるね」
そう私が話し掛けると、隣のインド人は少し冷静な顔になり
「政府は建前でやっているだけだよ」
と、妙に説得力ある口調で答えた。
いよいよ出国が近づいてきた