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♡今日のひと言♡尾辻克彦(赤瀬川源平)


『父が消えた』尾辻克彦 著(文芸春秋1981年3月号 354頁)
After all,the outline of“life”itself seems vague,
just like the outline of the whole universe
which keeps on
just expanding.

「これは精神医学者の報告なんだけどね、病気などでどうしても死ぬんだということがわかった場合、その患者はまず衝撃を受けて、つぎにその診断を否認したり、運命に向けて怒ったり、神と取引をはじめたり、つぎには激しく落胆したりといういろいろな段階があって、結局最後には全部の感情を果たしてから自分の死というのをゆっくりと受け入れる状態に落着くという」
(中略)
「その報告で面白いのはね、一生を苦労し尽した人とか、自分の一生の仕事に満足している人というのは、容易にその最後の受け入れの状態に達するらしいのだけど、たとえば物質的な財産に囲まれた人とか、政治的な人脈などをたくさん持っている人とかいうのは、やはり最後の状態にまで行くのに相当の抵抗があって、大変な苦労をするらしいね。その途中の不幸な心理のまま息を引取るのが多いという」
「ああ、それはわかりますね。この世に執着が強すぎるというか、そのおもりがしっかりとぶら下がっていて、それにいつまでも引張られているんでしょうね」
「うん、ひっつきすぎているんだよ、この世の中に」

『父が消えた』尾辻克彦 著(文芸春秋1981年3月号 353~354頁)


イエスとノーのあいだに
真実が息づいている

The “Truth”lies alive,
between the Yes and No.

『優柔不断術』‎ 毎日新聞出版(1999)


尾辻克彦(赤瀬川源平) 1937‐2014~神奈川・美術家、作家、随筆家
50年代末より「赤瀬川源平」の名で前衛芸術家として活動を始める。
70年代にはマンガ・文学などのジャンルに活動を広げ、81年、短編小説「父が消えた」で芥川賞を受賞。「超芸術トマソン」(1985)、「老人力」(1998)などの話題作を世に出した。



2024.10.5
Planet Earth

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