自治制度の再考
国土のカタチのひとつに自治制度の問題があります。
・総選挙からの示唆
先日の総選挙で維新の会が躍進しましたが大阪では最強の勢いです。しかし、大坂維新の会はこれまで、会の最も重要な政策である「大阪都構想」を提唱し、2度(2015年、2020年)の住民投票にて否決されていますが、人気は衰えず維持されています。
このような自治体の制度自体が市民の話題になったのは珍しいことですが、この議論は大阪だけではなく全国的な重要な課題です。
現時点では日本全体は47都道府県、1,718市長村で構成されていますが明治時代以来、様々な制度の議論があり、再編されてきました。
・大阪都構想は筋が悪いので適用する必要は無いと思いますが現状の都道府県は差最適とは言えないかもしれません。少し前までは道州制の是非が議論されましたし、首都機能移転も話題になっていました。
・これらの詳細な内容や経緯は他の資料に譲りますが概略と今後の新たな制度提案について簡単に記載してみました。
大阪都構想
・大阪都構想(特別区制度)は2013年以来検討が続き二度の住民投票で否定された後に二重行政解消の視点で「大阪市の広域行政を大阪府に一元化する条例案」が成立・施行(2021年4月)されました。これは趣旨は良いのですが政令指定都市の権限を府に戻す形になるため政治的妥協策だと思われます。
他の類似制度案として「特別自治市」「特別市」「大都市圏州構想」「大阪市分割構想」「道州制(大阪広域戦略協議会)」等が提唱され、既存の広域連携制度として「広域連合」等もあります。
現行の県の役割が政令指定都市や中核都市等との関係も含めて中途半端との見解もありますので、これから人口減少時代を迎える中で「日本のカタチ」の再編が問われますので改めて、下記の首都機能とともにこれまで数十年の議論と今後の産業、人口配置、大都市と地方、国土の土地利用等を含めて検討することが必要だと思います。
道州制等
・道州制は県を廃止して、道と州を置く地方行政制度であり、北海道以外を複数の州に区分し、それらの道州に現在の都道府県より強い行政権を与えるものです。
明治時代に北海道がそれまでの3県をまとめて北海道庁にしましたがその後、何度か道州制の議論がされました。戦後は占領下で1946年に行政運営と行政機関の根本的改革ための行政調査部が内閣に設置され、さらに、地方や経済界でも議論が盛んになりました。
行政改革・地方分権が問われる中で1994年に地方自治法改正により県の広域連合が制度化され、国会においても道州制の論議が高まり、さらに2004年の地方自治法の改正により、都道府県の合併が申請によって可能となりました。2006年には道州制特区推進法が交付されて区割り案も提案されました。
東京一極集中が低減されない中で首都機能移転議論とともに道州制議論もトーンダウンし、自民党『道州制推進本部』が当時同党政務調査会長の岸田文雄氏により廃止されました。
2020年にはコロナ禍で関西経済連合会が「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への自治体の対応を通じ、地方分権の重要性が改めて認識された」として、道州制の議論を始めるべきであるとの提言を行い、その主体として関西広域連合ました。近畿や四国などの12府県市で構成する関西広域連合を挙げました。この提言書を日本政府や構成自治体に送付しましたが新聞紙面等ではほとんど話題にされなかったのではと思います。
政府は総務大臣が道州制について「一つの改革案として広域の自治体を10前後のブロックに再編する道州制は一つの有力なもの」としました。
近年までこのような経過をたどってきましたが岸田首相は国のカタチとして新たな構想を持っているのでしょうか。
首都機能移転と県の意義
・首都機能移転は数十年前から議論されてきました。諸外国の首都移転等の事例や状況を詳細に把握したり、どのような機能が移転可能か等が長い間議論され、移転候補地も選定されました。しかし、すっかり国民の関心も低下して、一部の政府機関が地方に転出したのみとなっています。
現在は総合政策局の総合計画課において、「国会等の移転に係る総合的な政策の企画及び立案」として検討はされていますが、実質的には移転議論はほぼ収束したように思います。ただ、南関東大地震の可能性は高まる一方ですのでそれに対する手立ては必要となります。
・政令指定都市が増えたためもありますが県の役割への疑義も多く聞かれますし、言動に問題のある県知事も多くいます。基礎自治体は直接的に住民サービスに関わっていますが県は間接的ですし、大所は政令指定都市等が権限を持っていますので知事の必要性が薄く、そのため知事が勝手な言動をしても県政には大きな問題が生じないという事態です。一方で全国民を対象とする国の政策が県知事により阻害される事態が生じています。リニア新幹線や普天間基地移転等がそうです。基礎自治体に対して権限は有していますが住民の生活を阻害するようなことは出来ません。一方で国の施策については検眼を主張することにより国民の生活を阻害することが出来ますし、それは自治体が国に対して物言うというスタンスを取れるため県知事はそれに快感を得ているようです。困ったものです。
さて、現行の県は江戸時代の約300の藩制から明治に廃藩置県に転換し、その後何度か再編の後現在に至っています。市長村はさらに多くの再編を重ねて現行の1,718に集約されてきました。
さて、以上のように自治制度は長い間多様な議論が繰り返され、合併等が実施されてきましたが今後の国のカタチを考える際には避けて通れないテーマです。改めて、本気で地方分権・行政改革を検討し、さらに選挙制度も含めて整理・提案することが必要です。
新たな自治制度の方向
例えば、すでに20市ある政令指定都市を現行の県と同様の権限を与えて、その他の市町村を広域連合等としこれ自体に県と同等とするか県の下に置くなどもあり得るでしょう。また、市長村はこれ以上合併は難しいでしょうが財政状況はさらに厳しくなる中で政府の直轄自治体を置くこともあり得るでしょう。江戸時代は親藩と譜代をうまく使い分けていましたが自立できる自治体はさらに自立力をたかめ、それが出来ない自治体の中で深刻な自治体を直接マネジメントするものです。現行のように破綻してから国の管理団体にするのは遅すぎるように思います。
いずれにしても自治制度は政治面、資金面そして国民意識などが複雑に絡んでいる難しい問題ですがこれまでの多くの議論を踏まえて改めて「国のカタチ」の根幹として議論・提案・実施する段階だと思います。
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