夫の作るご飯は美味しい
私たちは共働きだ。
夫も働いているし、私も稼ぎの少ないフルタイム労働者だ。
残業をする事もあって、そういう日は同じく残業をして帰った夫の方が早い帰宅の時がある。
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最近は残業が終わっても少し空が明るい。そして、そんな空が私は少し嬉しい。
職場から帰る道すがらだんだんと空の色は暗くなっていく。電車に乗る時は明るかったのに最寄りの駅に着いた時にはもう暗い。夜だ。
暗くなった家までの坂道を登りだす。
耳につけたイヤホンから流れる好きな音楽に励まされ息を切らしながら坂を登る。
ようやく家の前に着くと、家の中は煌々と光っていた。夫が帰っていることに安堵する。
もちろん夫は毎日ちゃんと帰ってるのだけれど、夫がいてくれる事にか私がやっと家に辿り着けたからかその両方からか、私はとても安堵する。
玄関を開けると、飼っているワンコの下の子が尻尾を振りながら出迎えてくれる。
甘えん坊のこの子は手はかかるけど甘え方を知っているのか、ついつい親バカになってしまう。
上の子のワンコの名を呼ぶがやっては来ない。
彼女はマイペースでいつもその時間は夢中でご飯を食べているようだ。
こんなにも性格が違うものかと面白いし愛おしいなんて思って癒される。
リビングまで行くと夫はキッチンに立ちご飯を作ってくれていた。
夫は家事をよくしてくれる。割合で言うと6:4、いや半々かもしれない。
私が物心ついた頃から一人暮らしを始めていた夫なので私より家事のなんたるかを知っている。効率のいい家事の仕方も、なにより家事の大変さを知っているからかもしれない。
友人から「夫が全く家事も育児もしてくれなくて困ってる」という話をされた時に、なんて答えればいいか分からなかったほどだ。
そんな夫がせっせと動いてくれて、ダイニングにはランチョンマットと出来たご飯が並べられていた。
「おかえり」と声をかけられて私は何故かついつい「ごめんね」と答える。よくよく考えるとおかしい。
「おかえり」には「ただいま」だ。
夫も「まだできてなくてごめんね」と謝ってくれる。しかし、謝る必要など一切ないのだ。
私もカバンを下ろし上着を脱いで手を洗い、洗い物にでも加わる。
お互い仕事から帰って疲れているけど、私はこの思いやる時間が好きだったりする。
「ご飯まだ出来てなくてごめんね」という夫
「しんどいのに作ってもらってごめんね」という私
「帰ってきて早々洗い物してくれてありがとう」という夫
「お弁当の準備までしてくれてありがとう」という私
お互い「ごめんね」「ありがとう」が飛び交う時間。
「ごめんね」じゃなくて「ありがとう」を言おうとよく言うけれど、やっぱり「ごめんね、ありがとう」って両方言いたくなってしまう。
疲れているし、しんどいし余裕があれば買ったお弁当とかお店のテイクアウトとかお惣菜とかが良いけれど、作った方が安いからという私のポリシーに夫は付き合ってくれている。
そんな夫が作ってくれたご飯は美味しい。
私が作ったものより間違いなく美味しい。