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空に眠るひと


美しく青い空の真ん中にポッカリと直径1mくらいの穴が空いており、中はまったく見通せない暗い暗い闇が落ちていた。穴の中はひたすらに真っ暗である。


私は下に立って「あれはなんだろう」と眺める。


ただの黒にしか見えない切り取ったような穴は、同じ空のはずなのに星も月もなく深い闇だけがあった。


眺めていると頭がおかしくなりそうな気がしてくる。実際に空に空いた穴など『これは夢であろう」と思う。かといって、どうにもならないので、どうせ夢ならなんとかあの位置の近くまで行って覗けないか近くにある大きな樹を見てみる。

ガシガシと樹によじ登り、枝に手をかけ体を引っ張り上げて、今度は足をかける。そうやって枝の折れそうな高い位置まで上がっていく。

そこから空に開いた穴を見るとさらに深い闇が見えるだけである。そこに入ったら生きて帰れないのかもしれないが、とにかく気になって仕方ない。


すると暗い穴から縄がするすると木のところに降りてくる。怖いとは思うが命にあまり執着もない。とりあえず見たければ見てこようと思い縄に掴まってよじ登って行く。


穴の端に辿り着くとまるで切れそうなほど薄い切り口で表面の青空があり、奥はただただ暗い。私は身を乗りだして、中に入るが、暗い中にゆっくりと音もなく落ちて行き、途中で止まる。


地面や壁があって止まったわけではなく、身体が宙に浮いている。

わざわざ危険を犯したのに何もなく、まわりにただただ深い闇があるだけである。


私は眠くなって眼を閉じる。とても落ち着いて多幸感があった。


闇の中はとても安らかで、心地良く睡魔に包まれていった。

《了》

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