私がピラティスを止めた理由(2022年1月大幅な修正と加筆済み)

*「私がピラティスを止めた理由パート2」も書きました(リンク)

私がはじめてピラティスに出会ったのは、日系治療院で働いていた2004年頃。治療に来てくれた当時の患者さんがピラティスのインストラクターだったので、その彼女のレッスンを受けてみたことが始まり。最初のレッスンでは、主に呼吸と骨盤まわりのエクササイズ(いわゆるニュートラルスパイン・ペルビスというエクササイズ)をしたのを覚えているが、翌日の腹筋のいい感じの張り具合と、腰が軽くなったのには驚いた。

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それ以来、週に1回数カ月間ピラティスのレッスンに通っていたのだが、いつかはちゃんと習ってみたいと思い、独立して時間ができた2008年にイギリスで最も古い部類にはいるスクールに入って2年間勉強した。そこで習ったのはいわゆる「クラシカル」ピラティスというもので、詳細は控えるが、なんでもかんでもお腹(コア)を引き締めて運動する方法。ちなみに「モダン」とか「コンテンポラリー」ピラティスはあまりお腹を引き締めることは重要視しない。(その運動と共に自然とコアは使われるという発想なので、わざわざコアを引き締めてということは意識しない)

このクラシカルピラティスはレッスン後、クライアントのお腹の筋肉が引き締まった感じがするので、クライアント”うけ”は相当いい。そして自分でもこの「クラシカルピラティス」を2012年までは週に3〜4回は行っていた。またピラティスのティーチングともに、他のピラティススタジオでも、どのような教え方をしているのか興味があり、時間ができればせっせと通っていた。

その後、私のピラティスに対して考えが変わるきっかけとなった事があった。2012年の初頭、以前から気になっていたロンドンの「ポールスターピラティス」に行ってレッスンを受けてみた所、まったく別のメッソドで教えていることに気付き、まずはじめは大失望!なぜならレッスン後、全く腹筋が引き締まった感じがしないし運動した感覚(筋肉を使った感覚)がなかったからだ。その時はそれはそれでそういうものかと思い、しばしの間忘れていた。

また当時は本業の鍼灸マッサージ業に関して考えが変わっていった時期でもあり、筋肉の動きやファシアの繋がりなどを通して体のことを勉強するにつれて、そのポールスターが一体何の考えであんな教え方をしているのか興味が出てき、Liz Busseyという先生のプライベートレッスンを5回受けてみることにした。Lizとの出会いがなければ、今の自分の考えがない!と行っても過言ではない。(他にもポールスターの主要な先生2人のプライベートレッスンを計20時間以上はうけた。)

まずLizは、たとえば「ロールアップ」というエクササイズをする時(いわゆる仰向けに寝てから上体を持ち上げる腹筋運動のようなやつ)、「いかに自分の体を効率的に、楽に使ってその動きをするのか?」という事を運動学的観点から説明してくれた。これは今までやってきた(習ってきた)「わざわざ特定の筋肉に負担をかける」というやり方とは全くの正反対(こうすればこの筋肉にきく!というやり方の反対)。この理論は他のピラティスのエクササイズすべてに応用されていて、いかに自分の体を効率的に使って、そのエクササイズをするか、というメソッド。

これには運動学を勉強し直していた当時の私にとって衝撃だったのと共に、一つの大きな疑問が生まれた。

「ではなぜピラティスのエクササイズが必要なのだろうか?」

たとえば、ほとんどのピラティスのエクササイズは床やマシンの上に寝ながら行う。もちろん、足を前に伸ばして座った状態や、跪いた状態で行ったり、立った状態から行うのもあるが、それらすべてのポジションは日常生活の動きとは全く違う。もっというと他のスポーツの動きとも全く違う。なぜ普段の動きと全く別の運動が必要なのだろうか?

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結論から言うと、「Aの動きの練習は、Bの動きに役に立たない」(同種の原則 similarityの原則)。たとえば、極端な例に思えるかもしれないが、ピアノの練習をしても、早く走れるようにならないという事と同じ。もっと分かりやすい例をだすと、バスケの練習をしてもサッカーが上手くならないということと同じ。つまりピラティスをやる理由は、

ピラティスのエクササイズを

上手くできるようになる為


それ以上でもそれ以下でもない。

私がピラティスで一番いけないと思う所は、しばしば「腰痛解消、肩こりが治る!」をメインに宣伝している事。そしてほとんどのインストラクターが痛みに対する認識が甘いのと、解剖学と運動学が勉強不足であるということ。(今まで日本でもロンドンでも教わったピラティスの先生達は、ろくにどの筋肉がどこにあるのかを知らない人ばっかりだった。もちろん私レベルの知識を他人には求めていません。)そしてもちろん「痛み」についてまともに勉強している人がいないということ。

次に問題になるのが、「コア(体幹)」を誤解していること。お腹まわりはコアではない。それに「コア」を鍛えれば、腰痛が治るというエビデンスは存在しないし、そもそも理論としておかしい(詳しくは本家ブログ「体幹トレーニング神話」を参照)。特に「息を吐きながらお尻の穴(膣)を締めるように」のような骨盤底筋群の収縮(アクティベーション)は骨盤底筋群症候群を引き起こす可能性が近年指摘されており、絶対にやめるべき。残念ながら、日本ではまだこの事実は広く伝わっていないようだが。

ピラティスが腰痛解消や肩こり解消に効く!というのは明らかに言い過ぎだし、多くのリサーチでは腰痛解消や肩こり解消にはピラティスだけでなく他の多くのエクササイズとほとんど差がない(他の色々なエクササイズも同様に効果がある)、としっかりとしたデータもある。

以上のことを知った上で、クライアントがお金を払ってでもやりたいというのであれば、誰からも文句をつけられる事はないはず。日本だと1回(1時間程度で)5千円〜1万円? ロンドンだと50〜70ポンド?(ちなみにスポーツジムの会員費は月1万円前後、ロンドンだと70ポンドから100ポンドぐらい・・・。)

他の種類のエクササイズでも同様に効果があるということから、自分でyoutubeなどを見ながらピラティスやヨガや他のエアロビ系のエクササイズとかをやって(ネット接続費以外は無料!)、本来ピラティスに使うはずだったお金(5千円〜1万円?)で美味しいものを食べたり、「ピラティスのプライベートレッスンをあたかも受けた貯金」をして、洋服やアクセサリーを買ったほうがよくない?、と私は思っています。

と、そのような事を言うと必ず湧いてくるであろう疑問が

「自分でピラティスやヨガをやって、
悪い方法でやったら体を痛めるから・・・」

全くの嘘です。体に悪い方法なんてありません。皆が全く左右シンメトリーが同じで動けるはずはありません。多少左右の動きが違っても問題はありません。左右の動きの差が問題になるのは細かな動きがパフォーマンスに影響するであろう特定種目のアスリートか、コレオグラフィーを完璧に行う上で必要なダンサーだけです。そういう方々でも左右の動きは自分が”やるべき動き”の中で修正すべきです。(つまりそのスポーツやダンスの中での実際の動きやフォームを矯正すべきということ)ピラティスのスタジオに行くといろんなところで先生達が「右腕を肩の高さまで挙げて!」とか、「足を肩の幅まで正確に開いて!」などのアドバイスをしているのが聞こえてきますが、果たして人間そこまで「正確」な動きが必要なのでしょうか?みんなでシンクロしながらピラティスのパフォーマンスをするのなら別ですが(笑)

他にもピラティスを勧めてくる人たちが言いがちな事として

「ピラティスで姿勢を正して腰痛を治そう!」
「体が硬いからピラティスで筋肉に柔軟さを出して腰痛を治そう!」

は嘘です。姿勢の”悪さ”と痛みは関係ないし、体(筋肉)が硬いと痛みが出るというのも嘘です。(本家ブログを参照)
それに週に1−2回程度のピラティスをやっただけでは姿勢を変えるほどの刺激にはならないのはあきらか。もしあなたが1日3−5時間程度毎日ピラティスをやるのなら別ですが。

この業界(エクササイズ界、徒手療法界)は嘘だらけですので、皆さんお気をつけて。(もしこのブログを読んでいるあなたがピラティスのクライアントであれば、ぜひ本家ブログのこの記事を読んでみてください。またはあなたのピラティスの先生に見せて上げてください(笑)。もしかしたらあなたやあなたの先生は「このブログ書いたやつはアホや!姿勢が悪いと痛みが出るっていうのは決まっている!」と言うかもしれませんが、その記事内の話は全て論文、エビデンスベースです。だったらあなた(の先生)は反論するためには論文を書くべきです。


あえてピラティスを擁護するとしたら、プライベートレッスンなら自分の体に合わせた運動の指導をしてくれるであろうと言うこと。それでもピラティス、ヨガ、パーソナルトレーニング、他のメソッドのエクササイズとは対して違いはありません。それらの先生も同じく経験のある人なら丁寧に体を見てくれるはずです。

グループレッスンなら他の人と一緒にやることでの特別なシチュエーションを演出してくれる(モチベーションが高まる)ということぐらいでしょうか。

私自身はピラティスをやることも教えることも完全にやめてしまって、今は水泳を週に3回(1回3キロ)とウォーキングを12〜3キロを週に4回ぐらいやってます。ウォーキングのときに公園にある鉄棒を使って懸垂したり腹筋運動のようなことをやっています。それのほうが楽しいし。

ピラティスはただ単にピラティスのエクササイズを創設者のJoseph Pilates氏が言ったようにやる、もしくはJoseph Pilates氏のメソッドを”改良”したとする人の言う通りにやるだけのもの、という意味を理解した上でレッスンにお金を使ってもいいというのであれば、誰からも文句を言われる筋合いはありません。

ただ私がこのブログで言いたかったことは”ピラティスが痛みの解消に効く”とか”姿勢を良くするであろう”唯一の方法ではない!ということです。そしてピラティスインストラクターやスクールが撒き散らす嘘の宣伝文句に惹かれてお金を使ってしまっている一般の方々への啓蒙の一つとして書きました。

他にも言いたいことは山程ありますがこのへんで。


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