ピースボートと私 その後
船を降りた後、結局何がしたいのか、何をしたらよいのか定まらなかった私は、とりあえずアルバイトを始めた。
一年間ちょっとの間、アルバイトをしながら父親に借りた船賃を返済する生活が続いたが、母の知り合いからの頼みで、生命保険の営業をすることになった。
全く興味がないどころか、むしろやりたくない仕事だと思っていたけど、保険の勉強は奥が深くて意外に楽しく、ためになった。
周りの人にも恵まれ、なんだかんだ3年ほど働いたが、役に立てる時が悲しい出来事の事が多くて、このまま一生続けていくのは難しいなと思っていた。
そんなところに、ジャパングレイス(ピースボートの船旅を企画実施している旅行会社)が社員を募集しており、応募した。
ちなみに、履歴書の得意科目の所に国語ではなく、国話と書いていたらしいが、受かった。心の広い会社だ。
どうせなら、楽しいものを売りたいという、軽い気持ちで入社したが、11年間在籍することになった。
ネットには賛否両論、色んな事が書かれているが、私は全部が嘘でも本当でもないと思っている。
1つ確かなことは、働いている人の大部分は、少しでも世界を良くしたいと思っているということ。
戦争をなくしたいとか、貧困をなくしたいとか、環境を良くしたいとか
理想と現実の狭間で矛盾や憤りを感じることもあったけど、自分1人では到底実現出来ない大きなプロジェクトをいくつも掲げて、船は地球をぐるぐる回っていた。
私が在籍している間に31回の世界一周クルーズがでて、数千人のお客様の乗船をお手伝いをし、時には同行した。
お客様対応をしていて「ピースボートに乗ったらどうなるんですか?乗る価値ありますか?」という質問を受けることがあった。
私は「自分次第で船旅の価値が100万にも1000万にもなる旅ですよ。」と返していた。
何かをしようと思った時にサポートしてくれるスタッフがいて、世界一ハードルの低い発表の場があって、どんなことでも頭から否定しない、ぬるい空気がある。
利用するもしないもその人次第。
だけど、世界に1つぐらいこんな場所があってもいいんじゃないかと思っている。
みんなちがってみんないい。
そんな場所が。