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物理のエッセンスについてプロ講師が綴る──向いている人,使い方,注意点

こんにちは、Uraと申します。
予備校講師やプロ家庭教師として、小中高生を第一志望合格に導くべく活動している者です。

本記事では、高校物理の参考書・問題集として有名な「物理のエッセンス」(以下,「エッセンス」とします)について綴っていきます。

現場での指導経験を通して感じた最重要事項を初めにお伝えした上で,

・どういう方に向いているか
・使い方
・注意点

などをまとめていきます。エッセンスに取り組むべきか迷っている方,ぜひ最後までお読みください。物理の勉強方針が定まり,モチベーションが高まると思います。

では,まいりましょう。



■最重要事項

エッセンスは良書だが,一冊目に選ぶ参考書ではない

私はnoteなどを通して,「物理が全然わからないので助けて欲しい」というお問い合わせを頂戴しております。
そのような高校生の方に物理の学習状況を訊ねると,「初学にちょうどいいって聞いたのでエッセンスをやっている」と返ってくることがあります。

これは断言しますが,エッセンスは物理が苦手な状況で取り組み始める参考書では断じてありません。「学校の授業などで理解がスムーズに進んでいる方」あるいは「基礎的な参考書をすでに終えている方」が取り組み始めるべきものです。

主な理由は次の2点。

(1)基礎的な問題のみが掲載されているわけではない
(2)解説が簡素である

エッセンスはシリーズになっていて,次に「良問の風」へと繋がっていきます。「良問の風」は,レベル感としてはMARCHや関関同立に合格するための問題集と言われることが多いです。

エッセンスに掲載されている問題の中には,その「良問の風」の問題と同等かそれ以上と感じられるものがあります。解説も簡素ですから,初学者や物理が苦手な方が取り組んだら上手く進まないに決まっています。

エッセンスの前書きにも「私が最も書きたかったこと,それは教科書には書かれていないけど大切なことです(P1)」とあります。教科書に書いてある基本的ことはある程度わかっていることが前提で話が進んでいきます。

実は私も自身が受験生の頃,最初の1冊にエッセンスを選んでしまい,学習が全く進まなかった苦い経験があります。

初学,あるいは物理が超苦手という方は,エッセンスではなく次の2冊のうち好きな方に先に取り組んでからエッセンスに移行してください。見える景色が全然違うはずです。

高校で配られることもある「セミナー」や「リードα」よりもとっつき易い2冊だと思います。物理は基礎を理解し切ることで飛躍的に伸びる科目ですので,無理に難しいのに手を出さず,ぜひ「わかりやすい」一冊を手にしてください。


■どういう方に向いているか

・参考書を1冊終えているなど,基礎的な理解がすでに進んでいる
・家庭教師など,質問できる人が周りにいる

この2点を満たした状態で取り組むのであれば,エッセンスは非常に高い効果を上げてくれます。

「初学者や物理が苦手な方にはエッセンスは向かない」と上でお伝えしましたが,文字通り"エッセンス"がコンパクトにまとまっていて,しっかり吸収できると物理の成績を飛躍的に伸ばすことが可能な一冊です。

物理的にもコンパクトで持ち運びがしやすいのも,大荷物になりがちな受験生にとって地味に大きなメリットです。

物理に限った話ではありませんが,わからない部分が解決できないとモヤモヤして先に進みにくくなりますので,質問できる相手はいた方がよいです。学習効率が大幅に上がります。

エッセンスは解説が簡素なこともあり,私の講師経験として,結構な頻度でエッセンスに関する質問を受けています。「(かつての私のように)エッセンスで挫折した」という声はよく聞きますが,質問に来る生徒の中でそのような子はあまり見かけず,彼らはエッセンスを吸収して物理の成績を順調に伸ばしていく印象です。質問できる相手がいる場合は,エッセンスはとてもおすすめの一冊です。

私は独学で大学受験を戦った人間で,第一志望の東大には落ちています。

今振り返ると,「質問できる相手」がいなかったのは間違いなく敗因の一つでした。参考書を読んでもわからない部分を解決するのに時間とストレスがかかっていたのですよね。

当時の私と同じように「授業は受けたくない」と思われている受験生の方も,「質問できる相手」は探して欲しいと思います。私は家庭教師として「質問が出たときだけ」というご対応もしておりますので,下の記事からぜひご連絡ください。


■使い方

エッセンスは主に次の3つの要素で構成されています。

・導入文
・EX問題
・数字付き問題

例えば「速度と加速度」の単元では最初に速度の説明から始まります。高度なことも書いてあるので最初からすべてを完璧に理解しようと思う必要はありませんが,一通りは読んでおくとよいです。入試でそのまま直接的に問われるようなことも書いてあります。

掲載されている問題には「Ex問題」と「数字付き問題」の2種類があります。結論としては両方ともやりましょう。

たまに「Ex問題」を飛ばす生徒を見かける(※)のですが,「Ex問題」と「数字付き問題」は対応しているわけではなく独立しているので,「数字付き問題」だけをやっていると「Ex問題」がカバーしている内容が丸々抜けてしまいます。

(※)数学のチャート式などは例題と練習問題が対応していて,どちらかだけを解く進め方も有効なので,そういう影響かなと個人的に思っています。

なお,数字付き問題の中には一部✳︎マークが付いているものがあり,難易度が高いです。チャレンジしてみたい方はもちろん挑戦してみて欲しいですが,1周目に必ずしもやる必要はありません。下の記事でもお伝えしていますが,勉強はまずは全体を見にいくことが大事です。


■注意点

エッセンスだけでは入試問題を解けるようにならないことがある

MARCHや関関同立以上を目指す場合,エッセンスを終えた後,「良問の風」など別の問題集にも進むとよい

エッセンスは内容が優れた参考書だと個人的には思っていますが,これだけで入試──具体的にはMARCHや関関同立以上──で点数が取れるようになるかは微妙なところです。

と言いますのも,実際の入試問題は

・問題文が長い(設定を読み取る訓練が必要)
・大問内で小問が5〜10題程度つながっていく

という構成であるのに対し,エッセンスは

・問題文が短い
・大問内の小問は多くても2題程度

となっているからです。

また,「解答に重力加速度$${g}$$を使うのに問題文では明記されていない」などという問題も存在して,これも実際の入試問題とは異なる点です(入試問題では必ず記載があります)。

力学の一番最初のページに「問題文に書いていないこともあるが,重力加速度$${g}$$が必要であれば使うこと」と注釈がしてあるので,エッセンスの不備を指摘しているわけではありません。

単純な知識や思考力といった観点では,前述した通りエッセンスはなかなか高度な話もしているので,「エッセンスが仕上がればMARCHや関関同立は十分に戦えるようになる」と言えます。

ただ,指導経験上,そう上手くは事が運ばないと感じています。もちろん生徒によりけりなのですが,理系の生徒は文章を読むことを苦手とする子が少なくないので,入試問題物理の"長文"を読めるようになるためにはそれなりの訓練が必要です。短文問題を並べるエッセンスではその訓練になり得ません。

したがって,MARCHや関関同立以上を目指す場合,エッセンスを終えた後,「良問の風」など,実際の入試問題に近い形式の問題を揃える問題集に進むのをおすすめします。


■まとめ

エッセンスは物理が苦手な状況で取り組み始める参考書ではない

基礎的な理解がすでに進んでいる方,質問できる人が周りにいる方には超良書になりうる

●使い方
・流し読みでも構わないので導入文を読む
・Ex問題も飛ばさずに解く(✳︎付き問題は一旦飛ばしてもOK)

MARCHや関関同立以上を目指す場合,エッセンスを終えた後,「良問の風」など別の問題集にも進むとよい

物理のエッセンスについてお伝えしてきました。いかがでしたでしょうか。

物理は苦手とする受験生の方が少なくないですが,その理由の一つに独学の難しさが挙げられます。

「物理が死ぬほど苦手」という地点から私と一緒にスタートし,入試本番では得点源にしていた沢山の教え子を見てきて,物理は自分に合う教えを受けるか否かで伸び具合が大きく変わってくると確信しています

私は現在家庭教師のご依頼を受け付けております。体験授業を受けていただくこともできるので,物理を得点源にしたい方,下の記事からぜひご連絡ください。ご相談だけでも大歓迎です。

あなたの受験がより良いものになることを心から祈っております。
それでは!

Ura

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