本|凍りついた香り
こんにちは。七村ふみです。
「衝撃的なレベルでぐっさりと突き刺さる本」
というものに出会うのは、1年の間で1冊か、せいぜい2冊だと思っています。
たいていの本は読んでいる時には面白いのですが、読み終わると意識から抜けていってしまいます。(これは情報過多になりすぎた私の脳の問題でもありますが)
なので「衝撃的なレベルでぐっさりと突き刺さる本」に出会うと、「あぁ今年の1冊はこの本だったのか」と思うようになりました。
さて、今年はまだ半分を過ぎようとしているところですが、今年の1冊に、私はもうすでに出会ってしまいました。
それが、小川洋子さんの『凍りついた香り』です。
一切の前情報なく読んだのですが、ちょっとびっくりするくらい面白いかった。
緻密さ、狂おしさ、美しさ、ひやりとする感覚が、選び抜かれた文章で紡がれています。
小川さんの文章には、過不足がないと思っています。
たくさんの描写があるわけじゃないのに、どうしてか、その場所の風景や登場人物の表情が、ありありと目の前に浮かぶかんじがします。
私は描写や文章表現そのものが好きなタイプなので、小川さんの文章はそれだけでストライクなのですが、なんと、この本のすごいところは、ストーリーがめちゃくちゃ面白いこと!
恋愛あり、家族愛があり、ミステリーあり、ファンタジーあり。
こんなにもりもりと詰め込んでいただいていいのでしょうか!? という気持ちになるほど。
読み終えたあとの、行き場のない切なさと喪失感は強烈です。
『博士の愛した数式』がお好きな方はこちらも気に入るのではと思いますので、よければぜひ。
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