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【エッセイ】万事休すで急須を買いマシタ

万事休す
もうどうしようもねぇ
ということで急須を買いました!

東京生活、平日は働き詰めで人権無い。
どうしようもなく追い込まれて、辛くなって、弾丸で帰省したのでした。。。

その急須と初めて出会ったのは半年前。
お茶が大好きな親友の住まいでその急須でお茶を淹れてもらったのが、
それはそれは美味しくて、ほっこりして、
急須で淹れたお茶とペットボトルのお茶って全然違うんです。
風味も香りも、何より温かいお茶のほっこりすること。

私は何にしても、自分の心から気に入ったものしか買いたくないタイプ。
長年、急須を探し回っていたけれど、その急須には惚れ惚れしました。

一煎一煎丁寧に淹れられるように、手のひらにすっぽり収まるカワイイサイズの薩摩焼き。
本体は薩摩焼き土の色をむき出しに、
蓋と持ち手、注ぎ口には釉薬が塗り分けられていて、艶やか。
「つきの虫」さんという薩摩焼き工房の作品。

「何かのご褒美に買おう」とこの急須を餌にして、自分を鼓舞して半年。
馬車馬のように働き、その「何かのご褒美」が「何なのか」は分からないまま、心がポッキリ折れたその時にこの急須のほうから私の元にやってきてました。

東京へ泣く泣く帰る鹿児島空港のショウウィンドウでこの急須が、私を呼びました。なんとたまたまその急須が空港のアートギャラリーで展示されていたのです!!!!!
「はぁ、この急須やっぱり素敵」

見つめ続けること20分。
「ウィンドウ開けて、手に持ってみて。」と、
なんと、この急須を焼かれたつきの虫さん、ご本人さまがちょうど空港に到着したところで、声をかけてくださいました。

「ちょうど焼きたてよ、焼きたてっておかしいか。」と笑いながら、その方が1個だけ連れてきた急須がカバンから出されると、私、一目惚れしちゃいました。
親友の急須ともまた違い、本体に塗られた黒く光る釉薬が憧れのオーロラみたいな柄です。
親友の急須よりも一回り大きいサイズだけど、欲張りな私にピッタリのサイズです。

運命だ。
へとへと疲れ果てた私に、もういいんだよ、とご褒美でこの急須が私の元に来たんだ。

「こんなに若い人が急須でお茶を淹れてくれるなんて、本当に嬉しい」とその方は言いました。
私もこんな素敵な急須と出会えて本当嬉しいです。

欲しいものってもしかして、「何かのご褒美」なんて言わずに「日々のご褒美」として買っていいのだと思います。
それでも買えなかったら、自分でご褒美と思えない苦しいタイミングでもこうやってふとした時に巡ってくるものなのですね。

ほくほくと、その急須と知覧の摘みたて新茶をお供に東京に帰る飛行機に乗りこみました。
こんなに東京に帰るのが楽しみなのは初めてかも。早く家に帰ってこの急須で、お茶を淹れたいよー。
羽田空港からの家路、早く着かないかしらと気が急く京急線。

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