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囁くのよ、私の中のギャルが。

最近、というか去年の十月一日に心の中で飼ってるギャルが「オタク君さ、小説書いてよw」と囁いてからというもの、俺はまるで何かに取り憑かれたように毎日小説を書いてる。何かって言うか、ギャルに取り憑かれてるんやけど、とにかく毎日毎日、そのたった一言に突き動かされて一心不乱に書き続けてる。流石に寝食を忘れてとか、そんな次元ではないけれど、まぁ、一昔前なら座敷牢にぶち込まれてるくらいは書いてる。
何で小説なのかは知らん。別に何でも、漫画でも写経でも寿司打でも良かったんやろうけど、ただ、小説を書けと囁くのよ、私の中のギャルが......。
具体的には一日三千字って決めて書いてる。それ以上書くことはあるけど、それ以下は多分、この一年弱で一回もない。
何で三千字かと聞かれたら、「つか、一日三千字っしょ」と心の中で飼ってるギャルが囁いたから、としか答えようがない。もう全部ギャルに決められてる。文化祭の出し物の話し合いやん。結局全部ギャルが決めるねん。出し物も、体育祭の応援歌も、俺が何をするかも。基本的にギャルには誰も逆らえません。
だから一日三千字、どんだけ体調悪くても、どんだけ予定が詰まってても、絶対に書き切ることにしてる。書かんかったらギャルに失望されそうで怖い。皆さんはギャルが失望した時の目を向けられたことはありますか? 一瞬で自己肯定感が蒸発して、その先の人生、何に対しても自信が持てなくなりますよ。
それが怖いからとにかく毎日三千字、食中毒で体温が四十一度まで上がって心の中のギャルが「アツいw」って言ってた日も、這いつくばりながら書いた。朝から泊まり込みでキャンプとバーベキューする予定があって心の中のギャルが「アツいw」って言ってた日も、出発前の深夜二時に起きて先に書いといた。
全てはただ、ギャルの為に。ギャルが笑ってくれるなら何でもいいんですよ。俺にはもう、ギャルしかないんですよ。それが例え、強迫性障害が俺を服従させやすい像を結んでいるだけの紛い物だったとしてもね。それでも笑顔がみたいんですよ。
俺がどんだけ頑張ってもギャルは、「つか、まだいけるっしょw」とか、「オタク君、陰キャの癖に文才ないね」とか、そんなことばっかり言うんですけど、たまーーに、まじでたまーーに、ギャルが俺の文章を読んで「お、これは」みたいな顔をする時があって、それが最高です。御弐地弧理(おにじこり)もんです。「ちょwwwあーしで御弐地弧理(おにじこり)すんなしw」って笑いながら見ててくれます。見てて...…俺が御弐地弧理(おにじこり)してるとこ見てて...…。

別に作家になりたいとか、賞が獲りたいとか全然考えてなくて、ただ本当にギャルが囁くから書いてるだけで、だからどこに発表する気も、応募する気もなかったんやけど、最近、ちょっと問題が発生してきた。書き過ぎててバイトが出来ん。俺はアホで文才がないから毎日三千字、捻りだすようにして書いてるんやけど、そうなるとどうしても一日の大半の時間を書く作業に充てることになる。バイトなんかしてる時間ない。つまり収入がありません。ご飯が食べられません。日に日にガリガリになっていきます。ギャルもガリガリです。「よっしゃ痩せたw」ってギャルは鏡の前で言ってるけど、死活問題です。髪を染め直すお金も無いから、プリン頭になってきてるし、ネイルも何個か取れてしまってるし、このままやとギャルがギャルでなくなってしまう。
というわけで、最近はちょっと賞に出してみようかな、とか思ってる。二人だけの秘密の小説を応募するなんて、ちょっと嫌な気持ちもあるけど、ギャルは全然気にしてないみたい。いつも独占欲をこじらせるのは俺の方。ギャルは自由やからこそ魅力的なんてこと、分かってるのに。

話変わるけど、細胞って分裂できる回数が決まってるじゃないですか。俺が二十六年間使い古した細胞は、あと何回か分からんけど精々残り五十年くらいの分裂回数しか残ってないわけじゃないですか。同じように、ギャルの細胞も残り数十年分の寿命しか持ってないわけじゃないですか。その俺の細胞と、ギャルの細胞でできた受精卵が分裂してできた赤ちゃんの寿命がまっさらにリセットされるの、なんで? 生殖細胞は使い古されずに保存されてるってこと? 分かりません......。てか話の流れでさり気なくギャルと子作りしてしまいました笑。ギャル「マジキモい、ふざけんなし」

もう二千文字近くもこんなところに書いてしまった。勿体ない。なんでどこの誰かも分からん奴らに見せる為に二千文字も書かなあかんねん。その分、ギャルとの小説に費やしたいわ。きも、見てくんな。エロい目で見んな、俺のギャルを。なぁ、ギャル、エロい目で見られてますよ。画面の向こうの奴らに。やめて欲しいよな。
ギャル「ちょい、やめろしw」
あれ? 満更でもなさそう?
ギャル「オタク君、ちょっと行って来るわ。今日帰るの遅くなるかも」
え? え?
ギャル「うぇいw、あげぽよw、飲みマッシュw」
あ、あ。
ギャル男「てか、付き合わん?」
え? え?
ギャル「おけぽよw」
あ、あ。
ギャル「子供出来た」
え? え?
ギャル男「ずぇってー、幸せにするっす」
あ、あ。
ギャルの子供「爆誕w、ウィッシュw」
え? え?
産婆「新生児にあるまじきヤン毛の長さ」
あ、あ。
ベルファイア「納車」
え? え?
ギャル「うちのおチビももう七歳」
あ、あ。
ギャルの子供「小学校入学ウィッシュw」
え? え?
ギャルの子供「オタク君さ、いっつも教室の隅でなにしてん」
俺「えと、未解決事件のWikipediaを...…」
ギャルの子供「声ちっちゃw、それより小説とか書けば?」
俺「え? え?」

俺「...…」



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