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【AOE2DE】全45文明寸評①by Ornlu

海外動画抄訳シリーズ。AOE2DEの全45文明について、2025年1月現在の評価を簡潔に述べていく全3回の動画。第1弾はアルファベット順でA~Eまでの15文明を取り上げています。長いです(6千字超)。本記事では筆者の主観は排して、動画主Ornluのコメントに忠実に紹介。Ornluは毎年この類の動画を出しており、昨年までとの比較にも注目。

評価ポイント: ゲーム内での単純な強弱ではなく、ゲームバランスの観点から「強すぎる」「特定のマップでしか活躍できない」などは欠点。AOE2のゲーム性に対して不可欠な存在かどうか。輝ける場面や、逆に困難を感じる局面はあるか。文明ボーナスがギミックとして上手く働いているか。数多のバランス調整を経てどう変化してきたか。そういった多角的な評価です。

元動画内の紹介順序とは入れ替えているので注意。各文明の後の20:56(例)等の数字は動画内での再生時間です。


Complete 完璧

AOE2の象徴的な文明で、バランスが取れておりかつユニークさがある。強味と弱味がはっきりしており、バランス調整が明らかに必要な部分はない。そして、「その国らしさ」を上手く切り取った一面をも見せてくれる。そういう文明を「完璧」と評します。

ビザンティン 20:56

初期からある13文明の一つ。「防御的な文明」。テックツリーの幅が広く、アンチユニット(槍・散兵・ラクダ等)が安価なため相手がどんなユニットを出してきてもカウンターが可能。UUのカタフラクト(歩兵に強い騎乗兵)は多くの場合に主力として運用可能。火炎ガレー船の攻撃速度UPも陸海ハイブリッドマップでのピックに適している。
バランス: どんな設定・レート帯でもピックでき、かといって強すぎず、近年のドロモンの追加くらいでほとんど変更のない文明。ずっとこのままで良い。

中国 24:29

同じく初期文明。「射手の文明」とはいうものの最初の農民+3人というボーナスからも内政ボーナス特化文明とみなされる。また、テックツリーも幅広く柔軟な戦術がとれる。過去(Voobly時代!)にはプロでも序盤内政を安定させるのには苦労したが、通信環境整備やTCの視界拡張、鹿押しの普及等もあって改善された。また序盤の民兵/軍兵Rが流行戦術でなくなったこともプラス。
バランス: 長年にわたってAOE2の「顔」のひとつであり、農民+3人という特徴的なボーナス、柔軟なプレイング選択肢、終盤のUU連弩兵や塔を絡めた進軍、多様なマップへの適応力等々、文句なし。また、2023年に研究コスト削減ボーナスが弱体化したのも好意的に受け止められている。

Almost There ほぼ完璧

ほとんど完璧だが、1~2個の気になる点がある。そんな文明。

ドラヴィダ 28:43

2022年のDLCでインド系文明が4分割されたうちの一つ。「歩兵と海軍」。マレーや日本、ヴァイキングといった類例文明に対し、戦士小屋のテクコストや散兵・象弓騎兵の攻撃速度、兵器の木コスト削減ボーナス等でより攻撃に特化した文明。陸上では騎兵と聖職者以外は何でも一通りこなす……が、その2つが大事なんだよ、という話。騎乗ユニットの脅威がなければ相手は散兵や投石機等でしのぎつつ内政を伸ばすのが容易。いっぽう海マップでは進化時木+200のボーナスも強力で、優先ピックの一つ。
バランス: ユニークなパワースパイクでゲームを動かす事ができ、機動力には劣るが効果的なユニットで攻勢に出られる。不満を上げるとすれば唯一、UUのウルミ剣士(チャージ攻撃を持つ歩兵)が戦局に投入するにはやや遅すぎる、という点(移動速度と準備時間のダブルミーニング)。ユニテク込みでフルアップすれば確かに強力だが、相変わらず射程ユニットには弱い。海の帝王UU、ティリサダイの射程が+1されたことは好感。マレーやビザンティンのように、陸海のバランスが取れれば完璧に近づくだろう。

Power Crept インフレ不遇

よくできているのだが、近年のメタ(流行戦術)で加速しているゲーム展開に乗るためには何らかの不足があって不満を感じる文明。弓騎兵メタについてはこちらの記事も参照。

アステカ 04:58

AOC以来の伝統ある文明。「歩兵と聖職者」。追加の金と農民の運搬量ボーナスで最序盤のラッシュ適正あり。イーグル含め歩兵と聖職者、攻囲兵器の組み合わせで多様な戦い方が可能。しかし他の南米文明にあるような、ユニット作成コストの削減ボーナスがない。UUのジャガーウォーリア(歩兵に強い歩兵)は使い所が難しく、終盤のトラッシュユニットの不利もあって南米3文明の中では不人気。あくまで高価で脆い金ユニットで大きな打撃を与えに行く、というコンセプト。マップコントロールや聖遺物(聖なる箱)の確保が必須。
バランスの懸念: 2024年にユニット作成速度ボーナスが11%から15%に復帰したが、これはやり過ぎではないか。

ブリトン 12:58

最初期文明の1つ。「徒歩射手」。射手系統の射程ボーナスだけでなく、羊肉の回収速度やTCコスト等のボーナスで内政拡大も容易。弓小屋の作業速度が速く、城主の時代以降で進化を発揮する。UUのロングボウ(長射程の射手)はもちろん普通の(重)石弓も時代進化ごとに射程がプラスされていく。他の弓文明(マヤ、エチオピア、モンゴル、フン等)に比べ防御的なスタイルで隘路に陣取ると無敵。
バランス調整: 2024年には無し。しかしながら昨今のメタ(流行戦術)では不遇。選択肢に柔軟性がなく、斥候&散兵戦術に対し一方的に不利。城主でも騎兵&弓騎兵の流行に対し適しているとは言えない(血統、弓懸、パルティア戦術等を欠く)。

ブルガリア 15:02

2019年のラストハーン拡張パックで登場。「歩兵と騎兵」。自動アップグレードの軍兵Rや鍛冶場の研究コスト削減、城主の時代のTC建造に必要な石の削減など強力なボーナスはある。中~終盤にも攻囲兵器のアップグレードコスト削減ボーナスやユニテクによる騎乗ユニットの攻撃力UP、剣士の防御力UP等があり決して弱くはない。小型の城・クレポストからも出せるUUのコニクは(長)槍で倒されても歩兵として復活するため槍対策としても強力。
一方で明確な弱点として、内政ボーナスがほぼ皆無なため序盤に先手を取らねばならない。石弓へのアップグレード不可。聖職者が弱い。砲撃手や大砲も使えないため相手の矛には常に苦戦する……等が挙げられる。
バランス調整等: 歩兵と騎兵の両様に向かえる独特なデザインの文明のはずが、序盤の速攻と終盤以外は低調になってしまっている。コニクの作成時間短縮は良い調整だがそれでは不十分で、使い所が難しくAOE2最弱文明の一つとされるのも仕方ない。

ビルマ 19:04

「聖職者と象」。HD時代、2016年のライズオブラージャ拡張パックで登場。まずは聖職者とUUのアランバイ(射程や命中率は低いが範囲攻撃のできる、弓騎兵の一種)を活用し、歩兵と象でサポートする文明。木こりテクの無償アップグレードと修道所のテクコスト半減は強力。一方で弓鎧が1段階しかないことがアランバイの運用に足枷となる。依然として多くのマップタイプに適応可能な文明ではある。アランバイは多数の射手に対して特に有効で、戦術シフトのための時間を稼ぐ存在と考える。
バランス調整: 2024年は初めて、ビルマ単体のバランス調整がなかった。内政拡大では若干後れを取りがち。最近のバトルエレファントの強化はプラスで、流行戦術とまではいかないものの以前よりはバトエレを使いやすくなった。それでも「比較的得意」とされる閉鎖マップや遊牧ですらトップ10に入るほどではないし、オープンマップでは下位の存在。

ケルト 22:25

初期13文明の一つでチュートリアルでもおなじみ。「歩兵と攻囲兵器の文明」の原型とでも言うべきもの(他に前掲のアステカ、ドラヴィダやスラヴ等もこのカテゴリーか)。伐採速度ボーナスは強力だが、その活かす先がUUのウォードレイダー(足の速い歩兵)やその他の剣士・槍系ユニットと攻囲兵器しかないのが問題。騎士(騎兵)は血統がなく、射手は弓懸がない。
バランス: トップ層では「よほどケルトが好きでないとピックされない」という位置づけ。スコーピオンに弾道学が適用されるようになったのは間接的強化。ほぼ「完璧」に近いと思われるが、斥候/射手or散兵→弓騎兵/騎兵といった流行戦術(いわゆる弓騎兵メタ)に若干不適合なのは否めないためこの位置。

エチオピア 30:54

AOC時代、2015年のアフリカンキングダム拡張パック。「射手の文明」。射手の攻撃速度ボーナスだけでなく、帝王ユニテクのお陰で破城投石機や大砲の範囲効果が強力。時代進化ごとに資源が肉+100金+100あるのと合わせ、序盤から攻撃的に立ち回れる。しかし他に内政ボーナスがあるわけではない点には留意。基本編成は重石弓+矛+兵器だがUUのショーテルウォーリア(足が速い歩兵)やラクダも場面により有効。
バランス: 構成としては強力だが内政ボーナスやユニットのコスト削減がない。攻勢が要求されるオープンマップの前衛でよくピックされる所以。決して弱くはないのだが、トップクラス文明と渡り合うには内政面が心もとない印象。血統とパルティア戦術がないため(重)弓騎兵を主力にもしづらい。

Something is Off 何かが欠けている

何がやりたいかはわかる、AOE2らしさもあるのだが技術ツリー、ユニットや文明ボーナス等で複数の問題点を抱えており、バランス調整一つでは解消できない文明。

アルメニア 02:55

2023年の山中の王族DLCで導入。文明特性は「歩兵と海軍」。ラバ車関連の文明ボーナスで柔軟な序盤展開が可能。要塞教会で聖なる箱1個プラスのほか戦闘神官がユニークな存在。海軍も序盤から終盤まで強力。
しかし陸軍にいくつかの欠陥を抱えている。終盤にかけて兵器や騎乗ユニットが弱く、射手系統も中程度(注: 弓懸がなく弓騎兵系統のUGも欠落)のためUUの戦闘弓射手や剣士系統に頼らざるを得ない。造船技術が無くなったのも痛手。
バランス面の懸念: ガレー船系統が追加の矢を放つ、爆破工作船系統の効果範囲等のボーナスが強力すぎる。戦闘神官やUUは終盤には力不足。

ベルベル 09:12

AOC時代、2015年の拡張パックから。「騎兵と海軍」の文明だがラクダやUUのラクダ弓を含め柔軟な戦術が取れるので多くのマップに適応。しかし純粋な意味での内政ボーナスがない。足が速い農民と艦船、安価な騎乗ユニット等を活かした速攻が求められる。序盤は弱く、中盤で爆発し帝王では失速するものの金が尽きてからも強い。ラクダ弓は攻撃力・攻撃速度等が強力で異色の存在。プロのトーナメントで上位ピックになることは稀だが一定の活躍が見られる。
バランス面: 造船技術が加わったことで「ベルベルらしさ」は増した。チームボーナスで使えるようになるユニットのジェニトゥールは微妙な存在で、同様のコンドッティエーレ(イタリア)や近衛散兵(ベトナム)と比べるとチーム戦で使われる機会は少ない。しかし、多様な勝ち筋があるという面は高評価。

Somewhat Problematic かなり問題

デザインやバランスにはっきりした問題があり、AOE2のゲーム性を阻害しかねない文明。

ベンガル 06:46

2022年のDLCから登場。「象と聖職者と海軍」。時代進化毎に農民+2人という文明ボーナスゆえに、どんなマップでも前半は内政に専念して後半に高価なユニットで攻勢に転じる、という似た展開になりがち。騎士もラクダも出ず、射手も別に強力ではない(弓懸がない)ので中盤の迫力を欠く。一方、爺投石から帝王ユニテクで内政の余地を伸ばし、象弓騎兵やUUのラタ戦車等を使った終盤戦は強力すぎるほどだし、海戦でも船のHP回復ボーナスがある。
バランス調整でパルティア戦術を削除しラタ戦車の防御力だけアップ(≒象弓だけ弱体化)したが、却って序盤の即城UU(Red Phosphoru戦術)のようなピーキーな戦術流行を呼び込んだ。ラタ戦車は機動力と近接/射撃の切り替えであらゆるユニット・マップへのカウンターが可能なのが大きい。何らかの検討が必要。

ボヘミア 11:03

「火薬と聖職者」。2021年8月のDLCで登場。近隣のチュートンが強力な畑内政からの緩攻を得意とするのと対照的に、万能なホーフニツェ(強化型の大砲)をトラッシュユニット等で支えるのが王道。採掘所のボーナスは1TCから爺投石や城寄せにつなげるのはありだが、通常の内政拡大にはそこまで有利ではない。UUの戦闘馬車は城主序盤に少数で運用すると強力だが終盤まで主力にできるわけではない。防御的な構えから終盤にホーフニツェ、矛、砲撃手で圧倒する展開になりがち。閉鎖的なマップで有利。オープンマップで序盤をしのいだとしても機動力を欠く(血統や弓騎兵がない)。
バランス調整: 戦闘馬車の作成時間が長くなった(マングダイよりも長い)。それでも即城UU(Red Phosphoru戦術)は非常に強力で、プロでも受けきるのは難しい。対戦相手にとって不愉快、というのはゲーム性から見てマイナス。

ブルゴーニュ 17:08

こちらは2021年1月のDLCで登場。「騎兵の文明」。AOE2の敵役文明筆頭。内政テクの前倒しや火薬ユニットの強力さから閉鎖的マップでは最強格。またUUのクースティリエも、安価さとチャージ攻撃ゆえに(マイクロ操作込みで)強力。弱点は立ち上がりの遅さだが、しっかり囲って内政を伸ばし、城主のあるタイミングで重騎士アップグレードから攻勢に転じるのが王道。
バランス: フランドル革命は農民数によるコスト変動制になったとはいえゲームバランスを破壊しかねない強力さは健在。「ユニテク枠の無駄遣い」とも。かと言って、これが無ければブルゴーニュ自体そこまで強力とはいえず何らかのテコ入れを要する。

Major Changes Needed 要・大幅改変

根本的なデザインに問題がある。バランス、アイデンティティの面からは理解できるが、ゲーム性の観点からかなりの変革が必要。

クマン 26:37

2019年のラストハーン拡張パックで登場。「騎兵の文明」領主2TCが特徴で、活用できれば勝ちだが、逆にこれを目指すことが陥穽にもなりうる。かといって2TCに向かわなければ、まともな内政ボーナスがなくテックツリーも限られるため並の文明以下の存在に。閉鎖的マップ等で確実に2TCに向かえる場合にピックされがち。TR(タワーラッシュ)で領主時代を長引かせることはクマンに有利に働く。城主進化後に馬小屋を追加して騎乗ユニットを多く出すか、さらに帝王進化してUUのキプチャク(複数の矢を放つ弓騎兵)や遠投でプレッシャーをかける等の選択肢がある。
バランス評価: 上記のように勝ち筋が限られてしまうこと自体、ゲーム性から見てバランスが良くない。馬小屋・弓小屋のコスト減や領主時代に破城槌(ラム)を出せること等は他の文明に比べ優れているとも言えない。一方、キプチャクそれ自体が止められない強さがある上、帝王ユニテクでチームメンバーの城からも出せるようになるのも良くない、と動画主は考える。
案: 領主2TCのかわりに、特別なユルトのような、農民を(TCより低速度で)生産できるような固有建物を追加してはどうか(WDC2大会のあるマップで登場したものに近い)。
いずれにしてもクマンの絡む試合は、プレイするのも実況するのもあまり好きではない……とのこと。

動画配信者のOrnluについて

DE以前からのプレイヤー・YouTubeでは2018年からの配信者で、各種キャンペーンシナリオの攻略に定評がある。AOE2のあらゆる文明について強弱を知り尽くしている。

事後的ですがいちおう動画作成者の黙認をいただきました。

以上です。ご意見・ご感想はツイッターまで

その②はこちら
【AOE2DE】全45文明寸評②by Ornlu

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