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終わりを決める

一度形作ったものに、手を加えていく。足して、引いて、足して、削って。

終わりは見えない。そもそもゴールテープはないのだ。

「ここまで」を決めて、手放す。そうして、「完成」を自分で決める。



大学でデザインを学んでいた妹は、「デザインを仕事にはできない」と言った。

「ほら、うちは凝り性やん? でも、仕事やと自分が納得いくまでやり続けることはできひんからさ。妥協しやなあかんくなるのは、向いてへん気がするんよな」

確かに妹は「突き詰める」タイプで、とことんこだわる子だ。大学の課題も、毎回ギリギリまで手をかけていたようだった。仕事にすると、妥協せざるを得なくなり、それがストレスになるだろうと思ったらしい。

そのときは、なるほどなあ、と思った。


ただ、手を加え続ければいい出来になるのかというと、それはまた別の話だ。「蛇足」という言葉があるように、最後の一歩を踏み出さない方がよかったのに、という結末になることだってある。

そしてそれは、デザインだけではなく、書くことも同じだ。



どこで「終わり」にするのかを決めることは、なかなか難しい。

キーボードを叩いて文字を足しては、消す。足しては消す。足しては消す。繰り返しているうちに、どれがベストなのかわからなくなっていく。

タイムリミットがあるものは、そこがゴールテープになる。けれども、期限がないものになると、終えどきを自分で設けなければならない。

何度目かわからない推敲をしながら、妹の発言を思い出す。ゴールテープがない創作のエンドマークを打つタイミングを、まだ決めかねている。


#エッセイ #コラム #雑記 #わたしのこと #書くこと

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卯岡若菜
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