詩ことばの森(214)「野菜の思い出」
野菜の思い出
昨日 買ってきた小松菜が
今朝にはもう うなだれていた
俎板のうえに横たわり
気力のない野菜となっている
畑では太陽を浴びながら
生きる喜びに茎を伸ばし
広げた葉のうえに
小さなアオガエルなんかのせて
活気に満ちた夏野菜たち
やがて 街のスーパーに並べられて
きれいに値札をつけられると
なぜか すっかり元気がなくなっていた
畑が恋しくて
しなだれてしまったのだろう
だから 僕は食卓で
なつかしい田舎の景色を語ろう
曾祖母の担いでいた
しょいかごの話とかを
(森雪拾)