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詩ことばの森(165)「砂の記憶」

砂の記憶

古びた机のうえに
置かれたままの
夏が残っていた

だれかの語りつづける
言葉が漂う夜ふけ
あの日 訪れた岬の岩は
少しずつ崩れていくだろう

静けさの海の闇には
小さな灯りが燈されていて
緑青色に指先を染めている

すべてが眠りについたというのに
乾いた砂の記憶が
部屋の窓辺に現われては消えて

繰り返す日々の中に
変らぬもののあることを
祈りにもならない言葉で
わずかでも記していくだろう

(森雪拾)




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