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詩ことばの森㊴「夢の舟」
ある喫茶店で、棚におかれた絵本を読みながら、浮かんできた詩です。絵本の世界とはまったく異なる内容ですが、すてきな絵本との出会いは、大人になっても心に影響をあたえるようです。子どものときのような感動を忘れないようにしたいものです。
夢の舟
舟に乗っている夢をみた
明るい海はどこまでも広く
光の道が沖までのびていた
舟にはもうひとり
だれかが乗っていた
わたしはなにも語らず
そのひとも黙っていた
どこにいくのかも知らず
わたしたちの舟はすすむ
波にまかせながらすすむ
光の道の先へとしずかに
夢がさめてしまうまで
それがいつか いつなのか
そのひとは知っているのだろう
だから言葉にできないのだろう
夢は言葉にした瞬間
ふっつり消えてしまうから
海も舟もそのひとも
そして 光の道も
わたしたちの舟はしずかに
明るい海はどこまでも遠く
光の道が空までのびていた
森 雪拾