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薔薇の庭 古い石の椅子に やわらかな午後の光が 落ちている森 長い沈黙に耐えてきた 苔むした…
森を歩く こもれびの道を 僕は歩いていた 森を抜けると 湖へと着くはずだった 四月だという…
残照 川辺りに広がる夕空を 渡ってゆく鳥の飛翔よ 無言のうちに 秘められた残照が わたしの心…
眠れぬ森 眠れぬ森に 夜が訪れる 花は白く 物思いにふける 森をさまよう影は あたかも 体の…
天駆ける星 暗闇の窓を光がかすめる かつての栄光の者は消え去り 眩い堕天使たちが 綺羅びや…
青い服 僕の声は 届くことのない闇を 魂が苦い顔で 森の縁を彷徨う 青い服のきみは…
孤独な者たち 天使と悪魔の棲んでいる森に 剥き出しになった土の乾き 古えの館の地を 今もさまよう人びとの影 真昼の黒い沈黙のうちで 風ばかりが静かにあふれる 深い森の縁に立ち尽くす 孤独な者たち 畏怖に似た時が 広がっていく あの日 空はあまりにも青く 鳥影は まぶしい光に吸い込まれていった 滅びののちに 生れるもののあることを 最後の希望と信じていた 君の瞼に燈される 夕日 (森雪拾)
(古い日記帳を繰るように) 古い日記帳を繰るように 小さな花びらの一枚一枚を 指先に触れてみ…
渇いた街 灰色の墓標が 少年の眼に映じた日 頭上には青空のカケラも 残ってはいなかった 栄…
終わりの日に 終わりの日に 森影は枝葉をのばして 何もつかめずにいる 虚空以外には 公園に…
不在の過日 町は沈んだまま 街路樹の通りを 僕はどうしようもない 影とともにある 点滅する…
初めての友 はなやかではないけど 美しいと感じるもの 目立たず人の目にふれぬもの それでい…
春の光 春の嵐が 木々をゆらし 花びら散りつつ 君の肩に 軽やかな音を 微かに立てながら ま…
春爛漫 すべてが淡く透きとおる水 こんこんと あふれだす脳のしわから 春の匂いがする 笛や太鼓を鳴らしながら踊る 子どもになった母の歌声 すべては真昼のできごと 闇はない 老人たちを乗せた バスが坂をのぼっていく (森雪拾)