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20年の援助業界経験からUSAIDプログラム停止についておもうこと

20年の援助業界経験から、今回のUSAIDプログラム停止は、トランプ大統領の奇行ではなく、起こるべきして起こった問題だったと感じる。

特にこの10年、欧米や日本では難民問題を含む国内課題が山積し、対外援助への国民の支持が低下。グローバル民主主義や平和等の理念は敬遠され、自国第一主義が蔓延する中、理念を失った政府海外援助はポピュリズムの標的になっていった。「自分たちが苦しいのに、なぜ税金を外国に」という近視眼的で非現実的なストーリーを信じる人が増え、真偽不明の情報がそれを増幅させた。

根本的な問題は、南北のパワーバランスが変化し、「先進国」と呼ばれていた国々において、社会問題が深刻化する中、国際協力への世界的な支持が低下していることだ。日本でも、ODA広報で国益を強調しなければ予算確保が難しい状況に置かれている。改めて言うまでもなく、ODA予算を減少させる影響は、必ず世界の不安定化と(削減分よりもはるかに大きい)軍事支出の拡大を招き、ひいては納税者一人ひとりの生活レベルの低下を招く。

国境を越えた課題を語り、行動することがはばかられる時代。今後、世界のODAは一層「狭義の国益」を意識したものになるだろう。援助関係者は予算獲得を目的に、人道主義を隠し、「狭義の国益」に沿ったナラティブを展開せざるを得ないかもしれない。しかし、そのような予算がいくら積み上がっても、その先にある世界は、人道主義とは程遠い、冷酷で利己的な世界でしかない。

今、世界はNGOを求めている。政治に左右されず、人道主義を掲げ、純粋なその目的から国を超える運動体は、NGOの専売特許である。ODAがこのような状況に置かれている今、改めてNGOは、力を合わせて人道主義を求める人々の心を集めていくべきだ。NGOの存在は、人道主義のバロメーターなのだ。

PS、わたしを含め、日本のNGOは、日本政府がODAのうち、たった0.2%しか市民社会(CSO)経由の予算がないこと(DAC諸国世界ワースト2位)を改善するように長年求めてきた。米国政府は、CSO経由のODAが20%を超えていることを見習うべきだと主張してきた。今の米国の状況をみると、日本のCSOとして、何を見習うべきかもはや分からなくなった気がする。

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