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【読書メモ】悪いことはなぜ楽しいのか

悪いことはなぜ楽しいのか (ちくまプリマー新書)
著者:戸谷洋志
出版社 ‏ : ‎ 筑摩書房
発売日 ‏ : ‎ 2024/6/7

・この本のタイトルにあるなぜ楽しいのかはいまいちわからなかったが、面白かったとこだけを抜粋してメモしている。

◆自己チュー
・倫理学の世界では、自己中心的な考え方をエゴイズムという。エゴイズムとは他者よりも自分を優先する考え方のこと。

・人が自己中的になるのは、生物の本能であるため。これは、あらゆる生物に共通する性格であり、生存を目的としたものである。

・エゴイズムが、生物の本能であるのに、私たちはなぜ悪いことだと感じるのか。

・それは、生存のためのエゴイズムが、生存に合理的ではないため。

・例えば、100人が乗船する船が難波し、無人島に漂流したとする。その島の中央には小さな池があり、それが唯一の飲み水。
全ての人が自己中だと、人々は争い、殺し合いを始め、その結果として、自分にも危害が及んでしまう。
生存のためのエゴイズムによって生存が危ぶまれることになるのはおかしな話しだ。

・その対処法として、全ての人が従う絶対的な権力を打ち立て、その権力に服従し、その代わり自分の身を守ってもらうことにした。

・人類の歴史において出現してきた権力は、こうしたプロセスによって生まれてきた。

・近世イギリスの哲学者ホッブスによると、権力は、人々が合理的に生き残ろうとした結果、必然的にできたものであるという。

・そうして生まれた権力を「リヴァイアサン」と表現した。

・ホッブスのこの議論は、「社会契約論」と呼ばれ、人々がいかに社会を形成してきたかを説明する理論として、歴史的に大きな影響を与えた。

・私たちは、自己中だからこそ、他者に協力することができるのであって、自己中そのものは善でも悪でもない。

・ルールを守る自己中な人は、ルールを守らない自己中な人よりも、合理的であるといえる。

◆嫉妬
・嫉妬は、自分にないもの、自分より優れたものを持っている人を、羨む気持ちのことを指す。

・嫉妬が人間にとって有害なのは、自分にとって価値があるものを憎む、という矛盾に陥ってしまう点である。

・人から人気があることを良いことだと思っているのに、人気者を憎んでいるわけです。しかし、本当に人気があることに価値を認めているなら、人気者を称賛することができなければならないはずである。

・嫉妬は、人間に自分自身を見失わせる。

◆性格
・近代ドイツの哲学者ショーペンハウアーは、人間がもつ根本的な衝動として、エゴイズム、悪意、同情の3つをあげている。
人間が何らかの衝動に駆られて行為するとき、それは必ずこの3つのうちのどれかに当てはまる。

・また、これらの衝動は生まれつき決まっている。

・ショーペンハウアーは、人間の性格は変えられないが、性格と行動は必ずしも一致せず、性格が行動となって、どう現れるかは変えることができるという。

◆空気を読む
・世の中にあるほとんどのルールは、すべ
ての人が従うことが前提に設計されている。

・例えば、交通ルール。信号に従って行動するのは、自分以外の人も同じように信号にしたがっている。ということを信じているから。

・ルールによって作り出される同調圧力は、そのルールそのものの正しさとは関係ない。
多くの場合、ルールが正しいから従うのではなく、みんなが従うから従うのだ。

・空気を読まないことが悪なのは、誰かが空気を読まない(ルールを守らない)ことで、それまであった不文律が、少なからず効力を失うからといえる。

・20世紀ドイツの哲学者、マルティン・ハイデガーは、人間の存在のあり方を「本来性」と「非本来性」の2つの種類区別した。

・「本来性」とは、自分らしく生きている状態のことを指し、「非本来性」とは、そうではない状態のことを指す。

・ハイデガーによれば、日常生活において人間は常に非本来性の状態にある。集団の中の一員として存在している。

◆反逆
・私たちの社会生活はルールに従って営まれている。そのルールは時に同調圧力を作り出し、空気を読んで生きている。

・ルールによって行為の正しさは変わる。

・たとえば、空手のルールの中では、相手に敬語を使うことは、正しい行為とされる。しかし、ブレイクダンスのルールの中では、それは間違った行為だと見なされる。同じ行為であっても、ルールが変わればその正しさが変化してしまう。

・ルール違反をすることは、そのルールの正しさを脅かすことにはならない。
ルールが変わる時は、正しさそのものが変わることを意味する。

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