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岡田泰紀
2021年11月14日 22:01
「一時託児所で契約社員として働く」刹那の唐突な宣言に、サキは自分の娘の顔を思わず二度見した。「何で相談ぐらいしないの?」怒ってはいない。娘の真意がまるでわからないだけだ。「あんた、子供好きじゃないでしょ」「どうしてそう思うの?」「それは…」サキは、刹那と絆の親子の間に横たわる遺憾ともし難い空気を感じていたが、それを口に出す勇気は無かった。「刹那が絆以外の子供にやさしくして
2021年11月14日 22:03
オフィスは「ハニーぶれっど」が入居するビルの、同じフロアにあった。美緒さゆりが同行してくれたが、オフィスにいた代表の杉山が刹那に挨拶すると、「私は席を外すね」と言った。「その方が、お互い第三者に気を遣わず話ができるでしょ?」刹那はそれもそうだなと思いつつ、やはり美緒の言葉を額面通りに受け取れない、もやもやした感情が喉元に引っ掛かった。オフィスには杉山と事務員の女性が一人いただけだが、保
2021年11月30日 00:12
「福原さん、あなた、子どもは好きじゃないでしょ」杉山は何につけてもオブラートに包んだりしない。「どうしてそう思うんですか」「そんな顔してますよ」確かに子どもは好きな方ではなかったが、子どもが好きじゃない顔って一体どんな顔だと刹那は思った。「俺も好きじゃないからな」「じゃあ、どうして保育園をやっているんですか?」刹那は、自分と同類だと思われた気がしてなんだか嫌な気分になったが
2021年11月30日 00:13
純白のウェディングドレスは眩かった。それは20年前に買った、ローラー・アシュレイのものだとサキは言った。シンプルで清楚な佇まい、何より20年前に買ったものがそのまま着れるだけで、世の女性には羨望の対象だろう。「ちょっと苦しいけどね」サキは笑った。行きつけの名古屋の美容院「hope」から髪のセットにきてもらいはしたが、メイクは自分でした。刹那は、それをずっと見ていた。サキは刹那と