【感想】読書感想文「世界の終わりのためのミステリ」_非実在女子大生、空清水紗織の感想Vol.0033
あーーーー好き。
舞台設定も、キャラ造形も、お話も、全部好き。
終末世界で旅する話って、なんでこんなにワクワクするんだろう。
テイストは異なるけれど、美少女ゲームの「はるまで、くるる。」も世界が終わった後のお話で楽しかった。
こういう系が好きなんだな、私。
自身の失われた記憶を取り戻したいミチと、世界が終わった謎を知りたい阿見。
それぞれの目的を叶えるべく旅をしながら、その道中で生き残ったカティスと出会っていく。
構成としてはこんな感じ。
他人のことが怖く、知ろうとしなかったミチが、少しずつ他者を知ろうと踏み出し、それが自己理解に繋がっていく様が感動的だ。
私も内向的で、周りの目線を怖く感じてしまいがち。
そして、本書を読んだからと言って、明日から他人を知るための努力がすぐにできるかといえば、それは難しい。
けれど、ミチが一歩踏み出してくれたこと、他者を知ろうとすることで未来が拓ける可能性が提示されたことは、私には救いのように思える。
ミチのようになれる未来が、もしかしたらあるのかもしれない、そんな淡い期待を持たせてくれる。
世界の謎が知りたかったのに、身近にいたミチのことは知ろうしなかった阿見が、最終的にはミチとの距離を詰める判断をしたのも微笑ましい。
自分を知ること、世界を知ること、その一助になるのは他者を知ることなのではないか――
少し大仰に思える命題が、本書では軽やかに頭に入ってくる。
二人の旅の続きが読みたい。
続編、期待しています。
余談。
巻末の、星海社FICTIONSさんの広告で「天アンカット」について記載があった。
偶然、この広告とは別経由で、そのような製本手法があることを知ったタイミングだったので「あぁ、この本もそうなのか!」という感動があった。
確かに直近読んだ「幽霊列車とこんぺい糖 新装版」もそうだったし、数年前に読んだ「魔女の愛し仔」もそうだった。
手元にある星海社文庫さんのフェノメノシリーズも「天アンカット」だった。
私が気付いていないだけで、色々なものに作り手の思いが込められているんだなあ、それをもっと感じ取れるようになりたいなあ、ということを思った一冊にもなりました。