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【感想】読書感想文「ZOO1」「ZOO2」_非実在女子大生、空清水紗織の感想Vol.0034

ジャンル分け不能、天才・乙一の傑作短編集。
双子の姉妹なのになぜか姉のヨーコだけが母から虐待され…「カザリとヨーコ」など。話題の短編集を2冊にわけて文庫化。「1」には映画化された5編をセレクト。漫画家・古屋兎丸氏との対談も収録。

ZOO 1/乙一 | 集英社 ― SHUEISHA ―
https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=4-08-746037-1

単行本未収録「むかし夕日の公園で」特別収録。
目がさめたら、何者かに刺されて血まみれだった資産家の悲喜劇…「血液を探せ!」。ハイジャックされた機内で安楽死の薬を買うべきか否か…「落ちる飛行機の中で」など。驚天動地、粒ぞろいの6編。(解説/島本理生)

ZOO 2/乙一 | 集英社 ― SHUEISHA ―
https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=4-08-746038-X

乙一さんの小説は「夏と花火と私の死体」「暗黒童話」しか読んだことがなかった。
(別名義だと「吉祥寺の朝日奈くん」は読んだ。)
もっと読みたいなと思っていた頃、好きなラジオで「ZOO」が紹介されており、手に取った次第。

理不尽で不条理、解決しないもどかしさ、そこはかとなく漂う不気味さ、そういったものが詰まった短編集で、初めて「夏と花火と私の死体」を読んだときの気持ちが思い起こされた。

個人的な好みでいえば「吉祥寺の朝日奈くん」テイストが好きだが、「ZOO」のようなダークで胸がざわざわする作品も癖になる。
次は「エッセイ」とジャンル分けされている「小生物語」を読んでみたい。

以下、各話ごとの短文感想。

カザリとヨーコ
なぜ双子の妹のカザリは母親に愛されて、なぜ姉のヨーコは愛されないのか、納得できる理由は提示されない。
ひらがなが多い文体なのが、余計に読んでいて不安を煽ってくる。
1話目からグイっと乙一さんワールドに引き込まれる。

SEVEN ROOMS
11編の中で一番グロい。
7つあるうちの一部屋に閉じ込められて、各部屋の人間が順々に殺されていくという理不尽極まりない設定。
脱出するため、不条理にも気丈に立ち向かう様が描かれているが、これも人間賛歌の一つなのだろうか。

SO-far そ・ふぁー
喧嘩をした両親が、互いに口を利きたくないからと、子供に「父親は死んだ」「母親は死んだ」と思い込ませて生活する家族の物語。
この後のClosetと同様、文字媒体であることが映える設定で面白い。

陽だまりの詩
ハートフルストーリー。
やがて訪れる死と悲しみ、それでも生きる意味と命を授かった喜び。
それがアンドロイドの視点で描かれている。
物語ラストの「感謝と恨みを同時に抱いているなんて、~」から始まる一節が素敵。

ZOO
彼女を殺めた男が「自分は犯人だ」「いや、犯人じゃない」と葛藤を繰り広げるお話。
葛藤状態の描写で、頭がおかしくなってしまいそうになる。
自首するか否かのスイッチが、彼女と共に行った動物園の看板というのが、もの悲しさを誘う。

血液を探せ!
痛覚を失ったお爺ちゃんが主人公。
設定は突飛だし、話も奇天烈で可笑しい。
してやられた感がある面白いお話。

冷たい森の白い家
SEVEN ROOMSほどではないけれど、グロに寄った作品。
最初から最後まで淡々と不条理。

Closet
文字媒体だからこそできる表現で、読み終わった直後に思わず「あ~~~」って声が漏れてしまった。
傑作。

神の言葉
冒頭、猫とサボテンの区別がつかない主人公の母親が出てくる。
コミカルなお話なのかと思いきや、エンディングは鬱々としている。
ちょっと予想外の展開だった。

落ちる飛行機の中で
登場人物が置かれた状況と会話の内容が、ちぐはぐで面白い。
この頃から教育ママっていたんだな……という、話の流れとは関係のない発見もあった。

むかし夕日の公園で
4ページのショートショート。
これだけ短い文章であっても、不気味さがありありと伝わってくる。

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