【感想】読書感想文「ZOO1」「ZOO2」_非実在女子大生、空清水紗織の感想Vol.0034
乙一さんの小説は「夏と花火と私の死体」「暗黒童話」しか読んだことがなかった。
(別名義だと「吉祥寺の朝日奈くん」は読んだ。)
もっと読みたいなと思っていた頃、好きなラジオで「ZOO」が紹介されており、手に取った次第。
理不尽で不条理、解決しないもどかしさ、そこはかとなく漂う不気味さ、そういったものが詰まった短編集で、初めて「夏と花火と私の死体」を読んだときの気持ちが思い起こされた。
個人的な好みでいえば「吉祥寺の朝日奈くん」テイストが好きだが、「ZOO」のようなダークで胸がざわざわする作品も癖になる。
次は「エッセイ」とジャンル分けされている「小生物語」を読んでみたい。
以下、各話ごとの短文感想。
カザリとヨーコ
なぜ双子の妹のカザリは母親に愛されて、なぜ姉のヨーコは愛されないのか、納得できる理由は提示されない。
ひらがなが多い文体なのが、余計に読んでいて不安を煽ってくる。
1話目からグイっと乙一さんワールドに引き込まれる。
SEVEN ROOMS
11編の中で一番グロい。
7つあるうちの一部屋に閉じ込められて、各部屋の人間が順々に殺されていくという理不尽極まりない設定。
脱出するため、不条理にも気丈に立ち向かう様が描かれているが、これも人間賛歌の一つなのだろうか。
SO-far そ・ふぁー
喧嘩をした両親が、互いに口を利きたくないからと、子供に「父親は死んだ」「母親は死んだ」と思い込ませて生活する家族の物語。
この後のClosetと同様、文字媒体であることが映える設定で面白い。
陽だまりの詩
ハートフルストーリー。
やがて訪れる死と悲しみ、それでも生きる意味と命を授かった喜び。
それがアンドロイドの視点で描かれている。
物語ラストの「感謝と恨みを同時に抱いているなんて、~」から始まる一節が素敵。
ZOO
彼女を殺めた男が「自分は犯人だ」「いや、犯人じゃない」と葛藤を繰り広げるお話。
葛藤状態の描写で、頭がおかしくなってしまいそうになる。
自首するか否かのスイッチが、彼女と共に行った動物園の看板というのが、もの悲しさを誘う。
血液を探せ!
痛覚を失ったお爺ちゃんが主人公。
設定は突飛だし、話も奇天烈で可笑しい。
してやられた感がある面白いお話。
冷たい森の白い家
SEVEN ROOMSほどではないけれど、グロに寄った作品。
最初から最後まで淡々と不条理。
Closet
文字媒体だからこそできる表現で、読み終わった直後に思わず「あ~~~」って声が漏れてしまった。
傑作。
神の言葉
冒頭、猫とサボテンの区別がつかない主人公の母親が出てくる。
コミカルなお話なのかと思いきや、エンディングは鬱々としている。
ちょっと予想外の展開だった。
落ちる飛行機の中で
登場人物が置かれた状況と会話の内容が、ちぐはぐで面白い。
この頃から教育ママっていたんだな……という、話の流れとは関係のない発見もあった。
むかし夕日の公園で
4ページのショートショート。
これだけ短い文章であっても、不気味さがありありと伝わってくる。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?